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衣・食ともに「我慢しない」DINKS。世帯の手取り月収70万が全部なくなっても支出削減しようとしない妻の「あんまりな言い分」とは?

■月70万が全部吹っ飛ぶ「妻の洋服代は月10万です」

●家族構成(2人家族)
夫30歳(会社員)/妻30歳(会社員)/子供なし
●世帯月収 手取り71万円

「絶対に妻のお金の使い方が悪いんですよ!」と大きめな声で話す、会社員のMさん(30)。会社員の奥さん(30)を引っ張るように家計相談に連れてきました。

このおふたりは学生時代からの同級生。何でも話し合える分、ぶつかり合うと話し合いができないほど言い合いになってしまうから、と第三者を挟んで家計改善について話し合いたいと、私のところに来ました。

しかし、奥さんはお金の話し合いにはまるで気が乗らないようです。ご夫婦は現在DINKSで、2人合わせて手取り収入が71万円あります。

「収入がこんなにあるのに毎月お金が残らないなんて、変だと思いません? 1カ月で70万円も使う生活なんて異常ですよ!」

ご主人の勢いは止まりません。文句はいくらでも聞けますが、前に進めないので、まずは家計表を作ることを始めました。

「僕は、妻の洋服代が悪いと思うんですよ」とご主人は語気を強めて言います。毎月の洋服代は、毎月10万円ほど計上されています。ところが奥さんは「好きなものだし、気分転換になるし、仕方がないの」と言い、現状を譲れなさそうな雰囲気を出しています。

■食費は「一般家庭の2倍」これも譲らない

被服費はさておき、他の支出を見ると、食費も生命保険料も10万円を超えています。単純に奥さんの洋服代だけが悪いようには思えません。他の費目はあまり目立たないように思えますが、実は一般的な収入のご家庭の支出から見ると全体的に高めなメタボ家計です。

支払いはほとんどがクレジットカード払い。アプリで家計簿をつけているし、クレジットカード利用分は自動的に家計簿アプリに記載されているので、漏れがないと言います。でも実際は記入をお願いした家計表を埋めるにも時間がかかり、金額がはっきりしないなど、支出の内容が分かっていません。クレジットカードで支出状況が分からなくなっていますし、家計簿はつけているだけになっていて、集計結果の確認や振り返りをしていないので、意味を成していません。

ご主人に「一般的に、食費にはいくらかかるものですか?」と聞かれました。「うまくやりくりできている家庭の食費は、一般的にMさんのご家庭(毎月11万4000円)の半分くらいの金額です」と私が伝えると、「どうやって食べると、半分にできるんですか?」と驚きます。

■年250万も家計費削減! 何をいくら削ったか?

食事にもこだわりが強いようです。共働きで外食が多い家庭は珍しくありませんが、少し良いレストランでの外食が多く、食費の半分以上を占めます。クレジットカード払いが多いので、こういうところに気が付いていないのです。自炊するための食材についても、オーガニック系にこだわりを持っていました。

生命保険も10万円を越えていました。その内容は、3分の2が貯蓄型の商品。医療保障や死亡保障も過分にかけており、金額が高くなっています。保障の見直しは必須なようです。

ここまでお話を伺って、ご夫婦のいいもの志向や、こだわりといった、高収入ならではの特徴が強い家計であることがよくわかりました。そして、生活に我慢がない。欲しいものは手に入れ、飽きれば放置。そんな様子がうかがい知れました。

支出を削減するには、おふたりの考え方も多少変化してもらわなくては実現できません。よく話し合いながら、一緒に考えていきました。考え方の基本は、私が推奨している、支出を「消費」「浪費」「投資」の3つに分ける家計の3分法。それを理解し、実行できればずいぶん変われるのではないかと思いました。

食費は、まずは外食の仕方や利用するお店について考えてもらいました。また、自炊は大変かもしれませんが、2人で作れば楽しいものです。高級な食材を使っておいしくできるのは当たり前ですが、安い食材でおいしく作れた時の喜びも知ってほしい。そこで、ちょっと素敵なお皿をそろえ、楽しんでみるといいかもという奥さんの提案で、取り組んでみることにしました。これは「投資」なのだそう。こういうことをしながら、外食や食材について「消費」「浪費」「投資」を意識して、食費は簡単に7万円ほどに落ちました。

【家計費コストカット額ランキング】

1位:生命保険料 −7万7000円
貯蓄型の保険に多数入っていたが、年齢からみてもインフレリスクがあるので見直した。
2位:被服費 −5万円
ほぼ妻の服・装飾品代。夫の費用と均等化する名目でしぶしぶ減らす。
3位:食費 −4万4000円
外食を減らし、自炊を増やす。こだわりのオーガニック食品などを減らす。
4位:通信費 −1万4000円
妻はかなり面倒くさがったが、格安スマホに変える。
5位:嗜好品 −7000円
できるだけ、食費や小遣いから出すことに変えた。
5位:その他 −7000円
見ていない有料テレビの解約。
7位:生活日用品 −6000円
ティッシュなどは単価を気にするが、他は無頓着に好きなものを買う。ひとつずつの単価を考え購入を控えてみた。
7位:医療費 −6000円
買っても飲まないサプリをやめた。

■妻が洋服代削減の代わりに要求したモノ

生命保険料は保障を見直して、3万円台になるまで減らせました。年齢的にも長期間にわたり払い続ける貯蓄型の商品にはインフレリスクがあります。

通信費も下げたいと希望されたので、家電量販店で格安スマホに変えられることを教え、変えていただきました。使用感は変わらないのに、すごく安くなったと奥さんは嬉しそうで、「スマホ代って消費だと思っていたけれど、浪費だったのかな」と笑っています。

奥さんの洋服代は「消費でもあり、浪費でもあり、投資でもある」といい、なかなか減らせません。逆にご主人の健康維持目的のサプリメント代やスポーツジム代も浪費なのではないかと言い始めます。

なかなか妥協点が見つけられずにいましたが、最終的にはご主人にかかっている「小遣い+サプリメント+スポーツジム代」の合計と、奥さんの「小遣い+洋服代」の合計をできるだけ近い額にし、公平を図ることで落ち着きました。試行錯誤の結果、それぞれ8万円程度の予算としました。金額を下げるには我慢が必要になりますが、それでもお金は過分にかかっています。まずはこの調子でいき、今後さらに見直す予定です。

3分法の考え方に慣れてくると、そのほかの日用品や嗜好品、理美容費なども自然に下がりました。

このようにして、毎月21万円ほどの余剰が出せるようになりました。

本当なら、もっと生活費を縮小することができるはずなのですが、現段階ではひとまずこの生活に慣れ、そこから改善できることを探していく予定です。

「学生時代は、少ない仕送りやバイト代で節約して暮らすことができていたのに、今は面倒だと思ってしまう、それもいけなかったね」

と話すことができるようになったのは、よかったのかもしれません。

このおふたりを見てきて、改めて支出を把握すること、支出の意味を考えてお金を使うことの大切さを実感しました。お金の使い過ぎに気が付いた時には皆さんもぜひ、支出の仕方などについて振り返ってみてください。

(家計再生コンサルタント、マイエフピー代表取締役、ファイナンシャルプランナー 横山 光昭)