鈴木拓さん

>>【前編はこちら】「今は炎上しなくてもYahoo!ニュースに載れる」 ドランクドラゴン鈴木拓が語る、競争社会を生き抜く処世術

人気お笑い芸人・ドランクドラゴンの鈴木拓さんが、競争の激しい芸能界をしたたかに生き抜く処世術をまとめた『クズころがし』(主婦と生活社)。

前編では、上手な炎上の仕方、嫌われても最後に好かれる技術について語っていただきました。後編では、相方の塚地さんに選ばれた理由、朝ドラ出演での好感度について伺います。

自然体にしていたら「人とは違う」と思ってもらえた

――なぜ塚地さんが鈴木さんを相方に選んだのか、その理由はなんだと思いますか?

鈴木拓さん(以下、鈴木)
:相方は養成所時代、すごく才能もあってつっこみもうまかったんですね。だから、相方から見るとほかの養成所の人は物足りない。それなら一番面白くない奴とコンビを組もうと思って目が留まったのが僕だったみたいです。僕から見ると周りは面白い奴ばかりだったんですけどね。でも、僕はお笑いをあんまり見てなかったし、誰かのマネをすることもなかったんで、発想が違うと思ったのかもしれないですね。

――塚地さんは今回のように鈴木さんが本を出すことに対しては、どんな風に思ってるんですかね。

鈴木:僕はずっと相方とギャラを折半してたんですね。でも4年前かな、自分からギャラの折半を辞めようって申し出たんです。マネージャーからは、「お前のギャラは今の5分の1になるぞ」って言われて、一度は取りやめにしようとも思ったんですけど、奥さんも周囲から「あなたの旦那さん、働かないで相方の働いたギャラもらってるんですって」とか言われてたりして迷惑をかけていたので。そしたら、塚っちゃんが「鈴木は通用すると思う。一人でもお金が稼げるようになると思う」って言ってくれて、そんな風に思ってくれるんだなって。でも実際には才能じゃなくて、人付き合いでお金が稼げてるだけなんですけどね。

追い込まれて、人付き合いの方法を変えた

――人付き合いは昔とはそんなに違うんですか?

鈴木:昔は人見知りだし、3か月くらい誰とも話さないこともありましたね。27、8歳のときまではそうだったんじゃないかな。

――もうテレビに出てる頃ですよね。なんでそれが変わったんですか?

鈴木
:やっぱりA型だった血液型がO型だったってことがデカいですね。

――え? そんなことがあるんですか?

鈴木:それがあるらしいんですよ。ロシアにチカチーロっていう連続殺人鬼がいて、その人も血液型が変わったせいで逮捕されなかったっていうことがあって。「あんた殺人鬼と同じだよ」って奥さんに言われて……。

――そんな人がいたんですね。

鈴木:いや、まさかそこまで真に受けるとは……。

(※)実際には人の血液型が変わることはなく、チカチーロは血液型と精液が一致しなかったために逮捕されなかったが、100万人に1人の割合で一致しない人間がいるとのこと。

鈴木:本当のところは、やっぱりレギュラー番組が終わるころに、ロバート山本くんとふたりで、「やばいぞ」ってなったのがきっかけですね。

――最近いろんな方にインタビューしてて思うんですけど、人って本当に「やばい」って気づいたら変われるものなんですね。

鈴木:僕の場合は本当にレギュラー番組はあるのにそれに出られないっていうことで追い込まれてましたね。これは消えるなと。そうならないように、僕は人付き合いの仕方を変えていって、結局はこの本が集大成になったなと。

自尊心を排除して甘えてしまう

――本の中には、甘えるなら「2歳年上の設楽さん」って項目もあって。なかなか設楽さんのような甘えられる人を見つけるのは大変そうだなと思ったんですけど。

鈴木:たぶん、何段階かあると思うんですよ。そのときの敵は自分自身なんです。「こんなことをしたら、こう思われるんじゃないか」って思うことを排除したら前に進めると思うんです。自分を好いてくれる人って、馴れ馴れしいなと思っても嬉しかったりしますよね。で、「お酒飲みにいきましょうよ」なんて言われてもその日は行かなかったりする。でも、その人のことは頭に残りますよね。自分が突破口を作ることは大切なんです。

――それが難しい人に、もっと簡単な方法ってありますか?

鈴木:さっきの方法ってなかなか大胆かもしれないので、それができないんだったら、笑うだけでも違うと思うんですよ。本にも書いてありますけど、塚っちゃんの周りにはいつも人が集まってた。よーく見てみると、塚っちゃんはいつも人の話を聞いて笑ってたんですね。人間、やっぱり楽しい人といるのが好きなんですよ。「飲みにいきましょうよ」とは言えなくても、笑うことは比較的簡単な方法ではないかと。

朝ドラ出演で勝手に好感度が上昇

――現在、朝ドラ『まれ』に出演してますよね。これは何か転機になってますか?

鈴木:好感度はうなぎのぼりですよね。視聴者の方が、僕のことを勘違いしてというかですね……。

――勝手に好感度を持ってくれると……。

鈴木:俺もいろんな言葉を考えてたんですけど、「頼んでもないのに」好感度を持ってくれるとか(笑)。僕なんかのことでも「鈴木、なんか良くね?」って思ってくれてるみたいで。台本に書かれたキャラクターがいいだけなのに。だから、脚本家の篠崎絵里子先生には一生ついていきます。

――ついていきたい人はいっぱいいそうですね。

鈴木:キャスティングしてくれる人、権力、お金のある人にはついていきたいと思います(笑)。

(※)とはいえ、鈴木さんは本の中では『偉い人はもちろんですけど、出演者、ADさん、それから後輩だったり事務所のマネージャーさんだったり、それからまぁ奥さんだったり息子たちだったり―。立場や役職に一切関係なく、目の前にいる人たちに分け隔てなく接するって大事です』とも書いています。)

努力より、プライドを捨てること

――やっぱり奥さんにも一生ついていきたいと思ってますか?

鈴木
:そうですね。この本は努力しろとかそういうんじゃなくて、プライドを捨てろってことが書いてるんです。で、僕はそんな考え方なんで、靴下をぬぎっぱなしにして奥さんに怒られると、瞬時に謝るわけです。脊髄反射で。でも、奥さんは僕の性格を知ってるから、「なんで謝ってるのか理由を説明しろ」というわけです。それで理由を言って謝るけど、それでも「ダメだよ」って言われる。もう通用しないんです。長年一緒にいるからクズだって見透かされてる。でもまあ、奥さんが言ってるってことは、僕はやっぱり「クズをころがしてる」んじゃなくって本当にクズなんですかね……。

(西森路代)