仕事の用事で、東京都文京区音羽の講談社を訪ねた。編集者と連れ立って道を歩いていると、見慣れた建物が無くなっている。「あ、大塚警察署ですね。今建て替え中なんですよ」いつもその前を通っていた建物がなくなると、なんだか落ち着かないものだ。すっぽり空いたその空間を見ながら、年配のその編集者はぽつりとこう言った。「ね、うちから近いでしょ。だからあの日も、講談社から大塚警察署まで、行列みたいになってぞろぞろ歩