群馬戦後に足の状態が悪化。中村は今季の開幕戦はもとより序盤戦の何試合かを欠場する見込みとなった。(C) SOCCER DIGEST

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 横浜に激震が走った。宮崎キャンプ中に左足首を痛めた中村俊輔が2月16日に「左足関節三角骨摘出術及び関節内遊離体摘出術」を受け、全治2〜3か月の見込みと発表された。これによって3月7日のリーグ開幕は絶望的となり、回復が長引いた場合は1stステージすべてを棒に振る可能性すらある。
 
 兆候は昨年からあった。胆嚢炎による離脱以外に、中村はシーズンを通して両足首痛を訴えていたのである。断続的な痛みは、大きければ試合出場にも影響を及ぼすこともあった。今年に入ってからは、始動2日目の1月20日に左足首に痛みを覚えて一時的に別メニュー調整に。その後、沖縄キャンプの途中から合流し、練習試合に出場するなど痛みは治まっていた。
 
 しかし宮崎キャンプで群馬と練習試合を行なった翌日、ウォーミングアップのボール回しからひとりだけ抜ける中村の姿があった。満足に歩くことすらできず、痛々しい姿で宿舎へ引き上げた中村は「今日はねずみの居どころが悪いね」とポツリ。
 
 関節内遊離体、通称“ねずみ”が原因なのはすでに本人も自覚しており、その後に宮崎県内でMRI検査を行なった結果、キャンプ終了後に手術することが決定した。
 
 この時点で長期離脱は避けようがなく、今季から新たに就任したエリク・モンバエルツ監督は「しばらくは彼抜きでチームを作っていくことになる」と明かしている。宮崎キャンプ終盤はプロ3年目の喜田拓也をトップ下に抜てきするなど、すでに新たな試みはスタートしている。
 
 中村の離脱によって考えられるのが4-4-2などへのシステム変更だが、そういった可能性についての質問を指揮官は「ノン」と一蹴。あくまで始動から一貫して採用している4-2-3-1に選手を当てはめていく方針だ。
 
 トップ下の候補は前出の喜田以外に、実績を持つ藤本淳吾の名前が真っ先に上がる。ここまでサイドMFや1トップでも試されているレフティーは、当面はトップ下に入る可能性が高い。
 
 そして中村不在の影響はポジションの問題だけにあらず。空白になったトップ下に代役を立てることは可能でも、誰かがチームの牽引車にならなければ勝利とタイトルは遠ざかってしまう。
 
 そこで期待されるのが今オフの欧州移籍を封印し、横浜残留の道を選んだ齋藤学だ。ポジションは主に左MFで、求められる仕事や役割も中村とはまったく違う。それでも彼のなかには、チームを引っ張るという意思が芽生えつつある。
 
「勝つために、このチームを変えたい。新しく外国人監督になったわけで、自分たちが変わるチャンスでもある」
 これは中村離脱以前に齋藤が発していた言葉だ。
 
 昨季途中までは若手選手のひとりでしかなく、チーム全体や周囲のことを考える余裕はなかった。だが、ブラジル・ワールドカップの日本代表に選出された24歳のアタッカーも次のステップへ進もうとしている。
 
 大黒柱の負傷離脱はチームに大打撃を与える。その一方で、一皮むけようとしている選手にとっては、必ずしもマイナスとは限らない。齋藤が新たな一歩を踏み出すトリコロールの旗頭となり、シーズン開幕に歩を進めていく。
 
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)