なぜiPhone 6にはサファイアガラスが採用されなかったのか?
By Kārlis Dambrāns
iPhone 6発表までの期間、多くのメディアがAppleはiPhone 6でサファイアガラスを採用すると報道しましたが、結局iPhone 6のカバーガラスにサファイアガラスが採用されることはありませんでした。サファイアガラスはこれまでiPhoneのカバーガラスに使用されてきたものよりも割れや傷に強いという特徴をもつガラスで、AppleはiPhone 6発表の1年以上前からサファイアガラス製造メーカーのGT Advanced Technologies(GT)とサプライヤー契約を結び、iPhoneにサファイアガラスを溶接する特許まで取得していたわけですが、一体なぜサファイアガラスは採用されないままだったのでしょうか。
http://online.wsj.com/articles/inside-apples-broken-sapphire-factory-1416436043
This is why the iPhone 6 doesn't have a sapphire screen | The Verge
http://www.theverge.com/2014/11/19/7250941/the-inside-story-of-why-the-iphone-6-doesnt-have-a-sapphire-screen
元々Appleは自社でサファイアガラスを製造するための溶鉱炉を購入しようとしていたわけですが、購入する前に急遽サプライヤーが製造したものを購入する、という方針に転換します。そして、Appleとサファイアガラスのサプライヤー契約を結ぶことになったのがGTでした。その後、2013年11月にはAppleとGTが共同でアメリカ・アリゾナ州にサファイアガラスの工場を建設しており、この時点では2社は協力し合っています。
しかしWall Street Journalによれば、GTはサファイアガラスの原料であるサファイアを578ポンド(約262kg)分生産したにも関わらず、これらはAppleの要求する品質を満たしておらず、一切使用されることなく倉庫に積んだままの状態になってしまった、とのこと。なお、一切使用されずに残っている原料のサファイアは、数十万ドル(数千万円)の価値があるとのことです。この出来事についてThe Vergeは、「Appleと働く際の危険性を示すストーリーだ」とコメントし、Appleのティム・クックCEOが求める高品質・低価格のサファイアガラスでは、パートナー企業が利益を出すのは非常に難しい、と指摘しています。
By Andy Ihnatko
「世界で最もブランド価値のある企業に大量のサファイアガラスを提供する」という厳しいミッションをGTはクリアできなかったわけですが、GTはサファイアガラスの大量生産に向けて、工場の建設や材料調達などに10億ドル(約1200億円)以上の投資を行ってきました。
GTは結局iPhone 6にサファイアガラスを採用するだけのサファイアガラスを提供することができず、iPhone 6リリース後2週間で破産申請することとなっています。
「Appleの新製品情報流出の罰金53億円」などがサファイアガラスメーカーの破産申請で明らかに - GIGAZINE
Mac RumorsによればFoxconnでは次期iPhoneのためのサファイアガラスの製造がスタートしたとのことですが、「世界で初めてカバーガラスにサファイアガラスを採用したスマートフォン」として一般消費者の手に届くことになるのは、京セラの「Brigadier」になるようです。
Kyocera Brigadier | Verizon Wireless