体の一部が不自由であっても、「感じる」能力は万人に備わった力のはず。オーストラリア在住のカメラマン、ブレンダン・ボレリーニさんは目と耳が不自由ですが、人びとの協力を得てカメラマンとして表現活動を行っています。

The blind photographer on Vimeo

差し出された右手の平に、人さし指で文字を書いています。



これは聴覚に障害がある人のために筆談を行っているところ。



オーストラリアのカメラマン、ブレンダン・ボレリーニさんは生まれつき耳が全く聞こえず、両目も生まれた時にはかろうじて見えていたのですが、後に失明。



そんなボレリーニさんに目の前の風景を筆談で伝えているのが、スティーブ・メイヤー=ミラーさん。障害のある人に芸術のすばらしさを伝える活動を行っている人物です。



文字で風景を伝えたあとは、実際に自分の足で風景を感じ取ります。



そして一台のカメラを取り出したボレリーニさん。



自分の前の風景をカメラに収めていきます。



「私にとって『風景』とは平安であり……」



「安らぎを与えてくれるものです」と語るボレリーニさん。



「耳と目が不自由なことで、これまでに多くの苦悩に直面してきました」と語るボレリーニさん。コミュニケーションにはキーボードで文字を入力し……



点字ディスプレイを使って文字を「読む」ことで、意思疎通を行います。数々の努力と周囲の協力の結果、ボレリーニさんは当時通っていた高校で初めて大学への進学を遂げた生徒となりました。



「ブレンダンほど探究心の強い人物は出会ったことがありません」と語るメイヤー=ミラーさん。最初は遊びのつもりでカメラを手に取ったボレリーニさんでしたが、のちにメイヤー=ミラーさんは「真剣にやってみよう」と持ちかけたと言います。



あらゆる感覚を通じてカメラを感じ取るボレリーニさん。彼にとってカメラとは「目の前」に構えるものではなく、額の前で構えて「感じ取る」もののようです。



「ブレンダンの『見かた』は独特です」とメイヤー=ミラーさんは評します。



自然の風景を切り取るボレリーニさん。メイヤー=ミラーさんは「素晴らしいイマジネーションの持ち主です」と語ります。



写真を通じて自然とふれあうボレリーニさん。モデルはメイヤー=ミラーさん。



そして、撮影した写真データに特殊な処理を行い、専用のプリンターで凹凸をつけて印刷。



指で触ることのできる「写真」のできあがりです。



波しぶきを立てる岩と、その上に立つメイヤー=ミラーさんの写真が……



触れて感じることのできる「写真」になりました。



「凹凸を通じて、自分が撮影した風景を感じ取ることができます」と語るボレリーニさん。メイヤー=ミラーさんはボレリーニさんを「彼は独自の方法で表現する、独自のアーティストです」と賛辞を送っていました。