マー君がメジャー6戦すべてで続けるクオリティー・スタートって何? 今季のメジャーでは6投手、日本球界では5投手がQS率100%

先発投手を評価する指標「クオリティ・スタート」

 ヤンキース・田中将大投手の快進撃はとどまることを知らない。注目すべきはこれまでの6試合すべてで6回以上、3失点以内のピッチングを続けているということだ。

 メジャーで投手に対する評価の指針の一つにQS(クオリティー・スタート)というものがある。QSとは、先発投手が6回以上を自責点3以内に抑えること。つまり、マー君はすべての試合でQSを続けており、QS率100%をキープしていることになる。

 先発投手は勝利数だけで評価されるのではない。どれだけ試合を作れたかも重要な評価基準となる。QSはその指標の一つとされる。

 好投しても、味方打線が得点できなければ、敗戦投手になることもある。救援投手の内容によっても勝敗は左右される。逆に、大量失点を喫しても、味方打線がそれ以上得点すれば、勝つこともある。

 そのような観点から、勝利数は純粋に投手の評価を指すものにはならないとして、メジャーではQSを用いることが一般的。日本の球界でも浸透し始めてきている。ここで注意したいのは、「6回以上、自責点3以内」のため、7回以降に4失点目を喫してしまうと、QSにはならないということである。

田中は昨年もQS率が100%だった

 メジャー7年目を迎える黒田博樹らも事あるごとにクオリティー・スタートについて口にしており、渡米後の田中も意識している様子。「こっちではそういう評価をしていただける部分でクオリティー・スタートというものがあるので、それが最低限のところだと思います」と語っている。

 今季のメジャーで開幕から先発ローテーションを回っている投手の中で、QS率100%を維持しているのはわずか3選手。ナ・リーグはジョニー・クエト(レッズ)とフリオ・テヘラン(ブレーブス)。ア・リーグでは田中ただ一人だ。

 そのようにメジャーに渡ってから全試合でQSを続けているマー君だが、楽天時代の昨年はどうだったのだろうか。27試合に先発し、24勝0敗。その無敵を誇った数字は、広く認知されてはいるが、その試合すべてで6回以上、3失点以内だった。つまりQS率はなんと100%だったのである。

 勝ち星がつかなかった3試合の成績は以下の通り。

【4月16日】ソフトバンク戦(Kスタ宮城)7回3失点(自責点2)。

【5月28日】阪神戦(甲子園)6回2失点。

【6月3日】中日戦(Kスタ宮城)9回1失点。

 こう振り返ると、試合を作る数字をしっかりと残しているのが分かる。メジャーリーグに移籍後、まだ土がついてないことも素晴らしいが、QS率100%をキープできているのも、さすがとしか言いようがない。

日本のプロ野球でQS率100%を維持している投手は?

 ここで日本のプロ野球にも目を向けてみよう。開幕から好投を続けている投手がたくさんいるが、5月4日現在で、QS率100%の投手はパ・リーグで4人。セ・リーグに至っては1人だけである。

 パ・リーグは好調のオリックスに2人。開幕から5連勝で5勝0敗と勢いに乗る若き右腕、西勇輝投手と、オリックスのエース・金子千尋投手だ。金子は西より1試合多い6試合(2勝2敗)でQS率100%である。打線との兼ね合いで金子には4試合で勝ち星がついていないが、QSの指標を用いれば、一定の役割を果たしていると言える。

 また、西武からも2投手。1人は先日のロッテ戦で見事ノーヒットノーランを達成した岸孝之投手だ。6試合で3勝2敗も、すべてクオリティー・スタート。もう1人は牧田和久投手。こちらも打線の援護のない試合があり、2勝1敗の成績だが、粘り強く投げていることが分かる。

 セ・リーグで唯一のQS率100%は、広島カープのドラフト1位ルーキー、大瀬良大地投手である。5試合に登板し、3勝1敗。防御率1・89という数字も素晴らしいが、ルーキー右腕がゲームをしっかりと作っている点もカープの快進撃の一つの要因と言えるだろう。この投球を続けていけば、カープのエース街道を走っていくことになるに違いない。

 一人の偉大な投手が海を渡ると、日本球界にも素晴らしい先発投手たちが誕生する系譜がある。マー君は海を渡り、目覚ましい活躍を見せている。日本の先発投手たちにも、この5投手のように、さらなる飛躍を期待したい。