アクビの伝染は年齢と認知機能が関与か (画像はイメージです)

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アクビをしている人を見ると、なぜかつられて自分もアクビをしてしまう。この現象は、最近では「無意識のうちに相手との共感を表す行為」などと言われるようになった。しかしアメリカの遺伝子研究所がこのほど、それを否定するような実験結果をサイエンス誌に発表した。

そもそもアクビのしくみとは、ここで眠るわけにはいかないという意識が働くことで脳が“アクビをして危機を回避しろ”との命令を出し、それにより分泌されるセロトニンやノルアドレナリンなどが頭をシャキッとさせるというもの。また生アクビは別もので、これが続くのは脳が酸素不足に陥っていることが主な原因という。

しかし誰かがアクビをした途端に、つられて自分もアクビが出てしまうという人は多い。中にはTVドラマやマンガの登場人物がアクビをすると、それがうつってしまうという人もいる。眠くない時のアクビの伝染は一体何が原因なのか。まだ解明されていない部分も多いが、相手の気持ちに寄り添おうといった心がけが未熟な乳幼児や、統合失調症あるいは自閉症のある人にアクビがほとんどうつらないことから、最近では「アクビはその空間にいる人々に対する無意識のうちの共感」などと言われるようになっていた。

こうなると、伴侶をはじめ周囲と温かく寄り添いたいという気持ちが強くなる高齢者では、アクビはより一層うつりやすくなると考えたくなる。だが答えはノーだそうだ。米ノースカロライナ州デューク大学の『Duke Centre for Human Genome Variation』で、ヒトゲノムに起こる変異を研究しているElizabeth Cirulli助教授は、このほどサイエンス誌『PLOS ONE』に「アクビの伝染は共感や感情移入によるものとは限らない」と発表した。

健康な328人に他人が次々とアクビをするビデオ映像を3分間見てもらい、共感や眠気といった反応がどれほどあるかを測る実験を行った。出てきたアクビのシーンは少なくとも222回。これを見た中年以下では平均15回ものアクビが出たのに対し、高齢者ではアクビの回数がぐんと少なく、まったく出ないという者も何人かいたという。しかし同助教授は、「アクビのうつりやすさには年齢差があるようだが、これで謎が解けたとするのは尚早」と説明。今後は、個々の認知機能の差などを含めたもっと多くの実験データを集めたいとしている。

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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)