【連載】Windows Server 2012 Essentialsで作る簡単サーバ構築術 第2回 Windows Server 2012 Essentialsの立ち上げ
「MousePro SV200ESX」が搭載するWindows Server 2012 Essentialsは、Windows Server 2012をベースにして、小規模ユーザー向けに使いやすく手直しした製品だ。素のWindows Server 2012でも同様の機能を実現できる場合が多いが、設定・運用に手間がかかることも少なくない。それを簡略化して、専任の管理者がいない、あるいはあまり詳しくない管理者しかいない状況でも扱いやすいように工夫したのがWindows Server 2012 Essentialsというわけだ。
今回は、このWindows Server 2012 Essentialsを、マウスコンピューターのサーバPC「MousePro SV200ESX」で動かしてみよう。
○最初に必要になる作業
MousePro SVにはOSなしのモデルも存在するが、試用機はWindows Server 2012 Essentialsが付属したモデルだ。別々に購入した場合には外付けの光学ドライブを使ってセットアップする必要があるが、試用機ではセットアップ済みとなっていたので、その状態から話を始める。
電源投入後の初回起動時に、必要な設定は以下の作業だ。
1. 日付・時刻の確認と(必要なら)再設定
2. [クリーンインストール]と[サーバの移行]の選択。新規導入の場合には前者を使う
3. 会社名、内部ドメイン名、サーバのコンピュータ名の指定。これらは後から変更できないので注意が必要である
4. 管理者アカウントの作成
5. 標準ユーザーアカウントの作成
6. 更新プログラムに関する設定。推奨設定では更新プログラムのインストールに加えて製品改善のための協力を行うが、更新プログラムのインストールのみを行う選択も可能
これらの操作に続いて、選択した内容に基づいてサーバを構成する。ここまでの作業で、とりあえず実働可能な状態のWindows Server 2012 Essentialsが稼働することになる。
○Windows Server 2012 Essentialsでできること
Windows Server 2012 Essentialsのポイントとなるのは、以下の機能である。
・ダッシュボード :個別に管理ツールを呼び出さなくても、ここから主な作業を実施できる
・ユーザーアカウントの管理 :最大25までのユーザーを登録して、アクセス権の設定を行える
・共有フォルダの自動作成 :当初から「会社」「ユーザー」「フォルダーリダイレクト」「ファイル履歴のバックアップ」「コンピューターバックアップ」と5種類の共有フォルダを自動作成するので、いちいち共有設定を行わなくてもすぐに使い始めることができる。通常は「会社」「ユーザー」だけで用が足りるはずで、残りの3種類はOSが持つ機能から利用する。
・バックアップと復元 :サーバ自体のバックアップだけでなく、クライアントPCについても自動バックアップを設定・実行可能。利用に際しては、クライアントPCの登録作業が必要
・正常性確認 :登録したクライアントPCについて、バックアップやセキュリティ関連の状況確認が可能
・リモートWebアクセス :Windows Server 2012ならDirectAccessの設定が必要になるところだが、もっと容易にリモートアクセス環境を構築できる
○共有フォルダは最初から設定済み
最初に自動作成する共有フォルダ群は、「C:\ServerFolders」以下にまとめられている。ちなみに、ユーザーアカウントを追加すると、「ユーザー」以下に当該ユーザー用のサブフォルダを自動作成するところは気が利いている。
もちろん、任意の共有フォルダを追加することもできるし、ユーザーごとのアクセス権管理も可能だ。ただ、ちゃんと知識があるユーザーが行うのであればよいが、よほどのことがなければ製品の既定の状態に任せる方が、Windows Server 2012 Essentialsらしい使い方といえるかもしれない。
○クライアントPCをWindows Server 2012 Essentialsに接続
Windows Server 2012 Essentialsが提供するクライアントPC集中管理機能を活用するには、クライアントPCをWindows Server 2012 Essentialsに接続して、コネクタアプリケーションをインストールする必要がある。そこで注意しなければならないポイントは、以下の2点である。
・コンピュータ名とIPアドレスの重複回避。後者はDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバを使えば解決できるが、前者は事前に計画を立てて、クライアントPCに付箋やラベルライターでコンピュータ名をメモする等の誤認防止措置を施したい
・日付と時刻の設定。現在のWindowsではインターネットに接続できれば自動的に日付と時刻を合わせるようになっているが、念のために確認しておきたい。日付や時刻の設定が正しくないと、サーバに接続するところで失敗する
クライアントPCをWindows Server 2012 Essentialsに接続するには、Webブラウザを起動して、コネクタアプリケーションのダウンロードとインストール、それと設定の作業を行う必要がある。
コネクタアプリケーションのダウンロードとインストールは、Webブラウザのアドレスバーで「<サーバ名>/connect」と入力して接続した後、画面の指示に従って作業を進めることで実現できる。その際にユーザーが入力しなければならないのは、以下の項目である。
・管理者アカウントのユーザー名とパスワードを入力
・コンピュータの説明を入力
・スリープ中のバックアップ動作の有無を選択。スリープから復帰してバックアップを行う選択肢と、復帰しない選択肢がある。いいかえれば、シャットダウンではなくスリープにしておかなければ自動バックアップできないということでもある。
・カスタマーエクスペリエンス向上プログラムに協力するかどうかの選択
接続作業が正常に完了すると、通知領域にスタートパッドのアイコンが加わる。それをダブルクリックするか、右クリックして[スタート パッドを開く]を選択するとスタートパッドが起動して、そこからバックアップなどの操作を指示できる仕組みだ。
なお、クライアントPCを削除する操作は、Windows Server 2012 Essentialsのダッシュボードで行える。[デバイス]画面で削除したいコンピュータを選択して、デバイスタスクの[コンピューターの削除]をクリックすればよい。その時点で、削除するコンピュータに対応するバックアップデータがサーバ上にある場合、それを残すか削除するかを指定する必要がある。
次回は、MousePro SV200ESXとWindows Server 2012 Essentialsの組み合わせにより、どういった形でデータ保全を実現できるかについて取り上げてみよう。
(井上孝司)