【寺野典子コラム】長友佑都「危機感は募るいっぽうです」
――昨日は寝られたか?
「これかからのことを考えていたので、そこまでは寝られなかった」
――チームメイトと話したか?
「(香川)真司とは話しました。これからのぼくらが目指すべき方向や姿勢について、戦術というよりもビジョンですね」
――試合後に監督と話していたけれど。
「監督もやはり勝つためのハングリーさがないと言っていた。『負けている状態でああやって後ろでボールを回している。あの光景は世界ではやってはいけないし、そういう戦いを見せてはいけない。ミスをしてもいいから、リスクをおってでも前へ行こう。縦パスを入れて、前に進んでいく。その勇気ってのがやっぱりかけている』と、監督は言っていた。
「募るいっぽうです」
話しているうちに昨夜の屈辱を思い出すのか、最後には少し不機嫌な表情を浮かべた長友。熱い思いは当然伝わってきた。特に勝利に対するどん欲さが足りないという指摘は、シンプルだが強烈で明確なメッセージだった。報道陣が色めきたった。
「本田や長友が不在だと勝てない」と言われる日本代表。戦力的にもその二選手がいないことの影響は小さくはないが、やはりふたりに共通する勝利への執着心、強いハートが、勝利を呼び込む力になるのだろうと改めて感じた。
しかし、長友の言葉を聞いて思い出したのが、2006年W杯ドイツ大会直前の中田英寿のことだった。初戦直前、中田はチームの雰囲気の物足りなさをメディアに対して吐露した。そんな中田の想いをチームメイトがメディアを通して知ることになり、「メディアではなく、直接僕らに言ってくれればいい」となんだかチーム内がぎくしゃくしてしまったのだ。
もちろん、長友の言葉を批判と受け取めるチームメイトはいないだろう。実際、昨日の試合を「はずかしい」「情けない」と選手誰もが感じているはずだから。ここからいかにチームが変わっていけるのか? 注目したい。
関連情報(BiZ PAGE+)
フリーライター。Numberや専門誌など様々な媒体に寄稿。著書に『15歳の選択』(河出書房新社)など。