ロンドンオリンピック体操日本代表応援ブック『体操ニッポン!』(日本文化出版社)
内村航平エピソードの他にも、田中理恵・和仁・佑典の「田中3きょうだい物語」、こだわりのマイプロテクター大公開!といったマニアックな企画、体操ニッポン!栄光の歴史年表、イラストで解説される注目技、など、まだまだ続く体操競技の観戦のお供にオススメです。

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出来過ぎ? いやいや、実力通り&期待通りです。
内村航平選手が体操男子総合で、日本人28年ぶりの個人総合金メダル! 誰よりもこだわってきた美しい体操で文句なしの結果を成し遂げました。今大会、予選でも団体でもらしくないミスが目立ち、苦しい戦いを続けてきただけにハラハラさせられましたが、終わってみれば圧倒的な強さでした。
この後もまだ種目別での演技が続きますが、ひとまずここで金メダリスト・内村航平の人となりをチェックしていきましょう!


【昭和最後のビックスター・内村航平】
内村選手の誕生日は昭和64年1月3日。わずか7日間しかない昭和64年生まれです。昭和から平成へと年号が移り変わる境目に生を受けたことから、「平成という世の中をまっすぐわたっていけるように」という想いを込めて「航平」という名前になったそうです。
表彰式で「祝・航平」という旗を掲げていた母・周子さんの思いたるや、いかばかりでしょうか。


【尊敬する偉人は坂本龍馬。なぜなら……】
誕生日トリビアをもうひとつ。オリンピック体操日本代表応援ブック『体操ニッポン!』で「尊敬する人物は?」と質問され、“坂本龍馬”と答えた内村選手。そのワケは同じ1月3日生まれだから(坂本龍馬は1836年1月3日生まれ)。
誰よりも「世界」を見据えていた明治の偉人と同じ日に生まれた男が、今日「世界一」に輝いたのです。


【美しい姿勢の秘密は、柔道着の帯にアリ】
「完璧ですね。脚もまったく開かないし。完璧でしたっ!」
鉄棒の演技での内村選手への解説の言葉です。
“世界一美しい”と称される内村選手の演技。鉄棒以外でも、各種目でピタっ!と両足が一発で揃う、床に吸い付くような着地の美しさやたるや凄まじいものがあります。
ところが、今の立ち姿からは想像もできないことですが、内村選手は少年時代「O脚」に悩んでいたそうです。そのO脚を矯正できた秘密は、就寝時に両膝を柔道の帯で固定していた、というまさに陰ながらの努力です。上述した『体操ニッポン』の中で、その様子が母・周子さんの証言とともに語られているので少し長いですが引用してみましょう。

“長崎から東京に出てきた高校生のころの内村の必死な姿を、母は今も覚えている。上京した折、都内にある内村のアパートに泊まり、夜中にふと目が覚めると、布団から覗いた息子の両足に柔道の帯が巻かれていた。
「まっすぐな脚にしたい」という思いから、柔道の帯で両膝をがっちり結んだ格好で寝ていたのだ。驚いた母は「何をしているの。そんなことしたら良くないわよ」と諭したが、「言っても聞くような息子ではありませんでした」。
母によると内村選手の両親はともにO脚で、「航平の脚が自然にまっすぐになるはずがない」と言う。帯で巻いた効果でそうなったかどうかは不明だが、事実、内村の脚は美しく、立ち姿も美しい。それは日ごろから意識してつかんだ脚線美。王者には、人には見せない陰の努力があるのだ。”

金メダルへの道は、才能や練習だけではない、不断の努力の賜物であることがわかります。


【技術を磨いた「ピンクパンサー」】
美しい演技を支えた逸話をもうひとつ。2011年の世界選手権・床において審判員も判別できないほどの超高速回転技「リ・ジョンソン(後方かかえこみ2回宙返り3回ひねり)」を炸裂させた内村選手。この技に代表される、内村選手が得意とする「ひねり技」は両親が経営する体操教室のトランポリンで培われた、というのは有名な話です。体操の世界で「空中感覚」といわれる、空中にいるときに自分がどこにいるかわかっている、という能力のスゴさについては7月15日に放映されたNHKスペシャル「ミラクルボディー内村航平」(近日中に再放送必至なので、その際は要チェック!)でも明らかにされていましたが、最初は他の選手よりも飲み込みが悪かったと言われています。それを克服したのがイメージトレーニング。
内村選手は少年時代、柔らかい素材でできた「ピンクパンサー」の人形をバッグに忍ばせて常に持ち歩き、手足を曲げたり空中で回転させながら技のイメージを思い浮かべていたそうです。あまりに毎日さわっていたため、「ピンクパンサー」は黒ずんで「ブラックパンサー」になってしまったんだとか。


【大好物は「ブラックサンダー」……なのに、現在自粛中】
最後にブラックつながりでもうひとつ。内村航平選手の大好物は、“若い女性に大ヒット中!”のキャッチコピーでもおなじみのチョコレート菓子「ブラックサンダー」。この話もご存知の方は多いでしょう。北京五輪の際は、かねてから好物を公言していた内村選手の元に「ブラックサンダー」の販売会社・有楽製菓から320個が寄贈され、北京に勝負食として40個持参したと言われています(持ち込んだのは80個という説もありますが、いずれにせよ凄い量です)。
実際、この「ブラックサンダー」を競技前に食べた成果か、北京五輪では団体と個人総合で2つの銀メダルを獲得。さらには、ブラックサンダーそのものの売り上げも、前年までの40億から61億と1.5倍に、販売個数は4000万個から1億個と2倍以上に内村効果で跳ね上がりました(有楽製菓のブラックサンダーホームページで、売り上げの跳ね上がり具合を確認できます。ちゃんと「内村選手効果」と認識しているところは好感が持てます)。

ところが、社会人になり、コナミスポーツクラブに所属した内村選手には専門の栄養士がつき、体調面への考慮からブラックサンダー断ちをしてロンドンに臨んでいることが先日週刊ポストでも報じられました。
果たして、今回念願の金メダルを獲得できたのですから、大好物断ちをした甲斐があったというもの。“若い女性に大ヒット中!”のキャチコピーが内村選手のものになる日も近いでしょう。


こんな内村選手の勇姿を見逃した! もう一度見たい! という方。幸いなコトにまだまだ体操競技は続き、内村選手の出番もあります。この後の体操競技の日程を最後におさらいしておきましょう。

8月2日(木)女子個人決勝(NHK総合 24:30〜26:30)
8月5日(日)種目別決勝1:男子床/女子跳馬/あん馬(NHK総合 22:00〜24:15)
※「男子床」が内村選手、最後の登場です!
8月6日(月)種目別決勝2:男子つり輪/段違い平行棒/男子跳馬(NHK総合 22:00〜24:15)
8月7日(火)種目別決勝3:平行棒/平均台/鉄棒/女子床(日本テレビ 22:00〜24:15)

(オグマナオト)