「アイデア」No.352。豊富に、大きなサイズで並んだタイトルロゴ、ゲームフォントを眺めているだけでも面白い。

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デザイン雑誌「アイデア」最新号(2012年5月号・No.352)の特集が「ビデオ・ゲーム・グラフィック」、すごいのでご紹介します。

雑誌の特集と言っても、ちょろっとやってる、ああいうやつじゃない。ほぼA4という雑誌の大半、150ページ。いい紙にフルカラーで特殊紙を挟みながら、歴代のゲームタイトルロゴやイラスト、筐体デザインが図鑑のように並ぶ。

バンダイナムコゲームス、カプコン、セガの3社の、文字通り看板が惜しげもなく並んでゆく様子は、デザインに関わる者でなくても感動する人は多いはず。

例えばセガでは「ザクソン」「ファンタジーゾーン」といった1980年代のタイトルから、まだ発売していない「マックスアナーキー」といった最新タイトルまで、セガだけでも100近いタイトルロゴを収録。「SG-1000」「メガドライブ」「ドリームキャスト」といったゲーム機のロゴも。「鉄拳」「ストリートファイター」「バーチャファイター」などシリーズ作はそのたびのロゴの変化を追うことができる。

ナムコ「パックマン」「マッピー」「ディグダグ」など、当時の宣伝用のフライヤーやゲームセンターの機械に取り付けられていた操作方法を示すイラストカードなども掲載されているゲームも多数。

さらにデザイン誌らしいアプローチが、「ゲームフォントの世界」と題されたページ。70年代からゲーム中で広く使われていた8×8ドットのアルファベット/数字フォントの文字デザインがどのように変遷してきたかを辿る。対象タイトルは100以上。

文字なんか使い回せばいい気がするし、その上、縦横8ドットなんだから変えてもそんなに仕方ないと考える人も多いだろう。だけどゲームの歴史はそういう感じじゃなかった。

米国メーカー「アタリ」で使われていた通称「アタリフォント」に似た書体をナムコが使い始め、そこからいろいろな文字デザインが派生し、文字が中央でとぎれてるミリタリー調、文字自体が1色でなくてグラデーションしてるもの、様々並べ、どのゲームの書体をベースにしたか、どういった変更が加えられたか、などを考察していく。その様子はまるで、化石と化石を並べて進化の詳細を考えるような作業を思わせる面白さ。

幸いこれらの化石は1ドットも欠けていないので考察は相当深くまで食い込み、「『源平討魔伝』のデータに含まれている小文字のデザインは同時期作品『イシターの復活』のような筆記体的形状を持っているが、実際ゲームには使用されておらず、rの右端1ドットが次の文字sのデータ領域にズレ込んでいる。」というようなものまで。単なる間違い探しではなく、当時のゲームデータ制作過程、つまり他のゲームデータをコピーしてきて編集し、文字が1列に並んでロムに格納されるまでの息づかい、その視点が伝わってくるのがいい。

各社のデザイナーに対するインタビューも画像を交えながら展開されていて、過去だけでなく今後のことに関する部分も。図版だけでなく読み応えもある。

とにかく雑誌とは思えない資料性の高さや、眺めているだけで何か考え、思い付きそうな編集の素晴らしさ。雑誌「アイデア」の漫画特集など同様、今号も即時売り切れ間違いなしなので、いろいろお店をチェックしてみて、是非一度見てみてください!一部は出版元のウェブサイトでも見ることができます<。
(香山哲)