『マンイーター』2012年4月14日より、TOHOシネマズ日劇(レイトショー)を皮切りに全国ロードショー公開。実はこの映画、原題を「ROGUE」といって、2007年に製作されていた作品なんだな。人喰い映画ファンの間ではずっと日本公開を待望されていた。それがこの度やっと日の目を見ることが出来て、誠にめでたいかぎりです。

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ここ最近、人喰い映画の秀作が続々と公開されている。そんなこと思うのって自分だけかなあ。でも、4月14日から公開される『マンイーター』という映画の人の喰われっぷりはすごいよ!

いちおう、公開までは“どんな生物”が人を喰うのかは内緒ってことになってるので書けないけど、先日行なわれた公開直前の記念イベントに出演したワイルド芸人のスギちゃんが、オーストラリア産の肉(ラクダ、ダチョウ、カンガルー、ワニ)の正体当てクイズをやったり、特別ゲストのコビトカイマンとキスしたりしてたので、カンの鋭い人……じゃなくてもだいたい想像はつくだろう。

もちろん、映画本編に登場するのは、スギちゃんが両手でつかめるような小っこいもんではない。
でっかくて、ゴツゴツで、キバキバの、ツメツメの、大口の化け物だ。でも、ムチャクチャ突拍子もない怪獣というのとも違う。映画の舞台となったオーストラリアの世界遺産ノーザンテリトリー準州のようなところに行けば、そういう生物が本当にいるんじゃないか、と思わせてくれるようなリアリティのある大きさだ。そいつが、リバークルーズに訪れた観光客たちを次から次へと血祭りにあげていく。

出演は、現地のヤンキー兄ちゃん役に『アバタ―』のサム・ワーシントン。リバークルーズの客の一人に『アリスインワンダーランド』のミア・ワシコウスカ。宣伝部のどなたが考えたのかわからないけど、予告用15秒スポットの「不思議の国のアリスも、アバターも、みんな喰ってやる! 噛ミング・スーン!」ってキャッチコピーに笑ったな。笑ってる場合じゃないけど。

この映画を監督したグレッグ・マクリーンは、『ピラニア3D』のアレクサンドル・アジャ、『ドゥームズデイ』のニール・マーシャル、『ソウ』のジェームズ・ワン、『ホステル』のイーライ・ロス、『マーダー・ライド・ショー』のロブ・ゾンビらと共にホラー映画界の新しい才能集団として「スプラットパック」と呼ばれている人物で、その手腕には並々ならぬものがある。

映画は、まずオーストラリア先住民の祈りの声から始まる。深い渓谷とその間を流れる河。人喰い映画とは思えないとても格調の高い映像で、一気にその世界に引き込まれる。
川岸では、真っ黒い水牛がのんきに水を飲んでいる。子供の頃、毎週テレビで見ていた「野生の王国」を思い出したりなんかしていると、突然、巨大な影が水中から飛び出してきて、水牛(コイツだって充分でかい)にガブリと噛み付くやいなや、そのまま水中に引きずり込んでしまう。唖然としますな。いまのは何だったのかと。

そんなショッキングな映像から始まったあと、主人公の旅行ライターが現地に到着しつつもあまり歓迎されていない様子や、クルーズの最中に地元のヤンキーがカラんできたりするなどして、観ている者の不安を少しずつ少しずつ煽っていく。この辺の盛り上げ方もうまい。
リバークルーズが無事に終わって、さあ帰還しようかというときにSOSの信号弾を目撃するところで、観客の不安はピークに達する。あとは、怪物が登場して人喰い絵巻が開帳されれば、映画はラストまでノンストップで突っ走っていく。

ふつう映画の宣伝文句っていうのは客層を広げるために、意図的に誤解させるような表現をしたり、必要以上に大袈裟だったりするものだけど、『マンイーター』の「映画を越えたパニック・アドベンチャー・ライド」っていうのは、この映画をかなり正確に表現していると思う。
テーマパークのジャングル・クルーズ的アトラクションが大好きな人なら、きっと満足できるはず。ただし、それなりにグロテスクな描写も出てくるので、うっかりお子様連れで見に行っちゃうとトラウマ必至。
(とみさわ昭仁)