本日放映される「紅の豚」。写真はその元になっている「飛行艇時代」。宮崎アニメは空を飛ぶ機械へのこだわりがいっぱい! 手作り感あふれる温かみがある機械と、空中でも会話できたり、吹き飛ばされず行動しつつ風に乗る宮崎アニメルールが楽しめる!

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「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」
日本一かっこいい豚、ポルコ・ロッソが空を翔るアニメ「紅の豚」が本日放送されます。
 
さて、「紅の豚」は、ダンディズムと、空を飛ぶ心地よさを突き詰めた作品。
今作に至るまでの宮崎アニメは、空を飛ぶ浮遊感に強いこだわりがあります。
おっさん+空飛ぶ機械+女の子。機械は生々しい物がベスト。
いやあ、ロマンティックじゃないですか。
しかも宮崎アニメでは、空を飛ぶとき機械は重力の呪縛から解き放たれて、宮崎アニメ独自のルールで動くんです。

ここで、「紅の豚」に至るまでの宮崎アニメの「空飛ぶ機械」を一部見てみます。
あくまでも操縦する機械で、「飛んでるトトロ」「ロボット兵」などは入れません。

サボイアS.21試作戦闘飛行艇(1992年 紅の豚)
飛行艇時代にも登場する、ポルコの乗っている真っ赤な飛行艇。
試作、とあるのはかなり無茶な構造で正式採用されなかったのをポルコが買ったから。一度スピードに乗って空を飛ぶと、空を泳いでいるかのようになるんですが、離着陸時は暴れ馬状態なのは見所の一つ。
実際にあるサボイア(イタリアの飛行機メーカー)の「S.21」は羽が二枚の複葉機で、これは架空の別物。モデルになっているのは「マッキM.33」です。
なんだかわからん!という方は、映画を見てからなぞり検索してみてください。
最大のこだわりは、胴体も翼も木製だというところ。
しかも一度壊れた時に修理するのがおばちゃんたち。宮崎アニメでは男たちの夢はいつも女性のたくましさに支えられて飛んでいるんです。
ポルコがサボイアで得意技としているのが「捻り込み」という技で、これでアドリア海のエースになった!……んですが、いかんせんこの動きが滑すぎる上に複雑なので、言葉で説明できません。アニメってすごいな!
是非カーチスとの戦いのシーンで、彼の特技を確認してください。
ちなみに序盤のサボイアと壊れたあとの後半のサボイア両方のプラモデルが出ています。
さて、どこが違うのか? 探してみてください。

カーチスR3C-0非公然水上戦闘機(1992年 紅の豚)
ポルコのライバル(だと勝手に思っている)カーチスの濃い青の飛行艇。こちらは実在するアメリカの戦闘機です。
サボイアが単葉機なのに対し複葉機。プロペラは上じゃなくて前面。ちょっと洒落ていて、整備しやすさと安全性は格段に高いです。サボイアの正反対ですね。

トンボの人力飛行機(1989年 魔女の宅急便)
「魔女の宅急便」で、少年トンボが作っている足こぎ型の人力飛行機。
なんてったってトンボが空をとぶことに憧れて飛行クラブに入っているっていう設定がいいんですよ。オトコノコだねェ!
それが元でトンボは、魔法で空を飛べるキキに声をかけることになります。
キキの、空気の塊に乗っているような浮遊感も心地いいこの映画。エンディングの人力飛行機のシーンは「人が飛ぶこと」にこだわった結晶の映像になっています。

フラップター(1986年 天空の城ラピュタ)
ドーラ一家やパズーが乗るはばたき飛行機(オーニソプター)。
4枚の羽を上下に激しく動かして飛び回る機械、という設定が宮崎アニメマジック。これ再現してみたいですが可能なんですかね?
ハチドリのような仕組みで羽ばたいて飛ぶこの乗り物、小さいので高速で飛び回ることが可能なだけでなく、空中停止や旋回も可能という、宮崎アニメ史上でも屈指の最高性能です。
オーニソプターはこの前だと「名探偵ホームズ」で、その後は「ハウルの動く城」で登場します。

タイガーモス号(1986年 天空の城ラピュタ)
パズーも驚いていますが、この船木と布でできています。
正確には飛行機ではなく、飛行船。ガス嚢を7つ搭載していて、3つまでなら壊れても飛べる海賊仕様。
動力室の中は歯車が丸見え。会話も伝声管を使っており、妙に温かみがあります。
雲の上くらいまで飛んでいくことができるこの飛行船。一番ギョッとさせられるのは通路が外にむき出しだということ。
フラップターといい吹っ飛ばされそうですが、大丈夫。空中での重力や風の流れは、宮崎アニメ独自のルールで動いています。「紅の豚」でも一度空気の波の上に乗ってしまうと、現実とは異なる別ルールになりますので注目してみてください。

ゴリアテ(1986年 天空の城ラピュタ)
ムスカや将軍が乗っている、軍隊の飛行戦艦。
巨大な物体が恐ろしい威圧感で空を飛ぶ、という描写は必見。タイガーモス号の何倍もでかいので、押し潰しかねない迫力があります。
しかし逆に小さいフラップターには翻弄されるというのもなかなかユニーク。

メーヴェ(1984年 風の谷のナウシカ)
「風使い」の乗り物としてナウシカが乗っている機体。
風にのるものとして作られた、どちらかというと凧に近い存在です。
そのため、フラップターのように旋回や停止などはできませんが、空気の中をまるで水中にいるかのようにゆっくり浮遊します。
女の子が手で持てるくらいの重さ(12kg)で、折りたたみ可能です。
こんな乗り物可能なの?と思いきや、現在メーヴェをコンセプトにした一人乗り航空機プロジェクトが実際に行われています。
OpenSky
びっくりだね……。

ガンシップ(1984年 風の谷のナウシカ)
メーヴェが風に乗るものだとしたら、風を切り裂くのがガンシップ。
飛行機の作りは非常にユーモラスな丸みを帯びていて、宮崎アニメらしいデザインなのですが、飛び方は浮遊というより突進に近いです。
ナウシカの世界ではもうガンシップを作る技術はありません。
「紅の豚」のような機関銃はなく、先頭についた砲口2つから二発撃ち出すだけの極めて単純な作り……なんですが、この二発が異常な火力を誇り、戦艦くらいなら撃ち落としてしまいます。
風を切り裂く機械は自然と共に生きられないのか、最後には破壊されてしまいます。

コルベット(1984年 風の谷のナウシカ)
ゴリアテにも通じるような巨大多目的戦艦。
羽も機体も大きく威圧感バリバリです。
雲に相手を押し付けて動きを押さえるなど、宮崎空中ルールを生かした描写も興味深い。
さらに大きな移動用飛行機に「バカガラス」という機体もあります。

他にも「名探偵ホームズ」のモリアーティ教授の乗り物、「未来少年コナン」のフライングマシンやギガントやファルコ、「ルパン三世」のラムダなど、宮崎アニメには山のように空を舞う機械は存在します。
その一つの頂点ともいえる「紅の豚」の浮遊感、楽しんでみましょう。

ところで、今回から「金曜ロードショー」ではなく「金曜ロードSHOW!」とモデルチェンジし、加藤清史郎が「シネマボーイ」なるものを務めるそうです。えええー!?
「映画を見ねぇ子役は、ただの子役だ」ってことですか。

(たまごまご)