(写真左上から)ニッポン放送サッカーパーソナリティ煙山光紀アナウンサー・洗川雄司アナウンサー、ニッポン放送サッカー中継チーフディレクター木之本尚輝氏。
中継時にアナウンサーが使う資料も見せていただきました。

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part1はこちら。

<監督がこれほど変わったシーズンって今までない>

洗川 いよいよ明日10日からJ1が始まる訳ですが、注目点というと…

煙山 監督! 凄いよね、半分(9チーム)変わってますからね。

洗川 監督がこれほど変わったシーズンって今までないですよね。やり方を継続するクラブもあれば、監督交代や選手の移籍でチームがガラッと変わったクラブもあると思うんです。こういう時の予想って非常にしづらいんですけど……とりあえず変わってなさそうなクラブからいくと、柏と名古屋という去年の1位2位が監督も変わってなければ選手も大きくは変わってない。とすると、だいたい去年と同じパフォーマンスが出るかなぁと思うんですが、柏は今年ACLがあって、それをどう乗り切るかによってシーズンの戦い方が変わってくると思いますね。

煙山 ケガ人によってもだいぶ変わってくるからね。でもネルシーニョ監督はそういうケアが上手いと思うし、各ポジション、2チームとは言わないけど1.5チームくらいの戦力は出来てるから、ケガ人が出なければ僕は柏がやっぱり上に来るかなぁと。名古屋はなんていうか…… 

木之本 名古屋は最終的な武器があるから、パワープレーっていう。

煙山 わかっていても止められない(笑)。名古屋は固いチームですよね。まあそういうチームが、野球で言うと落合さん率いるドラゴンズみたいにアベレージは出すんですよね。

木之本 躍進チームみたいのは?

洗川 僕が注目してるのは仙台ですね。2年前に残留争いしてた頃ですけど、色んな記者さんから「今、面白いよ」って言われたのが仙台で、実際、手倉森監督がやってるサッカーって面白いと思ったんです。去年は「震災もあったけど頑張って4位まで上がった」みたいな評価が多かったと思うんですけど、元々ベースとしてそれくらいの力を発揮できるチーム環境があったんじゃないかと。ということは、クラブとしてやり方を継続してる部分や進化したい方向性が見えているということで、去年の4位というのも全然フロックとかそんなんじゃないって思っています。

煙山 手倉森監督は5年目だもんね。今挙げた3チームって、全部継続してるんですよ。4年目(柏)、5年目(名古屋)、5年目(仙台)かな? 手倉森監督が書いた『不動の絆』という本を読んで勉強した部分でもあるんですが、サポーターと凄くつながりを持とうとしている監督さんなんですよね。試合終わってからサポーター呼んで怒ったりすることもあれば、サポーターから会いたいって言われれば会うみたいだし。5年間継続しているっていうキーワードと、サポーターを大事にしていること、それと震災っていうのはやっぱり……全然終わってない訳ですよ、震災のことって。本にも「希望の光にならないといけない」とか「お前たちは一人一人じゃなくてチームとしての存在にならないといけない」とか書かれてあって、やっぱり使命感みたいのをいい意味で持ってるんじゃないかと思います。去年最少失点ですし、守備が固いっていうのはやっぱりデカいので、期待はありますね。


<ダークホースを浦和にするか仙台にするか>

木之本 去年J2から昇格した柏がいきなり優勝したように、J1に戻ってきたFC東京はどう?

煙山 後ろがちょっと不安ですよね、今野選手が抜けちゃったから。でもポポビッチ監督って評判がいいのでいい所までは持って行くと思うんですけど、そんなに簡単には行かないとも思っていて。それよりも浦和がわかんないですね。

洗川 浦和は、変わるんですかねぇ。プチ広島みたいになってきましたけど。

煙山 僕、雑誌の順位予想で迷ったのがダークホースを浦和にするか仙台にするかで、最後まで迷って仙台にしたんです。浦和は守備が不安なんですが、もしかしたら化ける可能性がある。元々、個の力はあるってみんな口を揃えて言う訳ですよ。そこに広島からペトロビッチ監督がやってきて広島時代のキープレイヤーもいる。だから意外と浸透が早い可能性がありますよね。

洗川 あと、ガンバ大阪と鹿島。鹿島は中盤をボックス型からダイヤモンド型に変えるっていう話がありますが。

煙山 監督交代が裏目に出る可能性が高いのがこの2チーム。もちろん、メンツを見れば強いんですけどね、ガンバには今野選手も入ったし。

洗川 西のチームで気になってるのが神戸ですね。各ポジションにキープレイヤーを大型補強しました。

煙山 野沢選手はデカイよね。あとは橋本選手か。

洗川 他にも、田代選手、高木選手、それと伊野波選手も。元々強化部長をされていた和田さんが監督になってから急にチームの雰囲気が良くなったんですよね。そこにそれなりの戦力がついてきた時にどうなるのかな? というのは気になります。開幕戦でガンバと神戸の対戦があるので、ここで何かひとつ形が見えるかもしれないですね。


<今のJリーグは優しいというか紳士的すぎるというか>

木之本 もう始まってますが、J2は?

煙山 普通に考えたら、京都だと思うんですよね。

洗川 若い人が、宮吉選手、久保裕也選手と次々出てくるというのは凄いですよね。

煙山 育成システムがいいんでしょうね。去年もキープレイヤーの工藤選手が怪我から戻ってきてからチームの調子も上がってきて。4バックという形も出来てるから、戦力的に見ても京都が上がんないとマズいだろうと。

─── J2は今年からプレーオフが始まります。楽しみ方や見方は変わりますか?

煙山 そうですね。やっぱり、やった方がいいですよね。生きるか死ぬかっていうのは試合の質っていう意味でも全然違ってくるので。昔、福岡と川崎のJ1参入決定戦で本が一冊できた(幻冬舎刊『魂の叫び-J2戦記』)っていうのが示しているように、ボクシングの新人王戦でも、W杯の決勝でも、やっぱりタイトル戦ってどんな試合でも面白いんですよ。

木之本 何かを賭けて戦う。っていうね。

煙山 入れ替え戦って凄く残酷じゃないですか。でも、負けたとしても得るモノは大きいと思うし、サポーターも傷を負うかもしれないけど、そこで成長できるのもあると思うので、日本の場合は特に必要なのかなと。見る側が単純に面白いっていうのも含めて。最近インパクトが少ないじゃないですか、Jリーグ。まあそれは今、Jリーグに限らず日本のあらゆるスポーツがそうなんですけど。野球にしても好きな人は凄く好きでスタジアムにも行くけど、一般的な広がりが今ひとつという。中にいるとわからなくなりますけどね。

洗川 それはありますね。

煙山 Jリーグの優勝争い真っ只中でも普通に知人から「煙山さん、今忙しいんですか?」って言われたりする訳ですよ。「あぁ、やってたんですか?」みたいに一般の広がりが薄れてるんです。そういう層に投げかける意味でも、入れ替え戦みたいなインパクトのある施策でどんどん攻めた方がいいと思うんですよね。ニッポン放送のサッカーコメンテーターでもあるスポーツライターの金子達仁さんが「優勝争いしてる時に、プレッシャーかける意味で他会場の結果を流せばいいんだ」ってよく言っていて、それって日本人のメンタルとしては、下品だったり卑怯だったり相手に失礼だって思われがちなんですけど、それでいいと思うんですよね。

木之本 それも含めてサッカーだと。

煙山 そう。やっぱり世界で戦う場合は逆境に次ぐ逆境な訳ですよ。だから、アウェイチームの裁量で優勝争いしてるチームにプレッシャーかけたっていい! その方がスアジアムのノリは全然変わるし、選手に恐怖感を与えられて、結果的に選手はそれで成長するし。そういう部分を僕はもっと攻撃的にやるべきだと思いますね。今のJリーグは優しいというか紳士的すぎるというか。ラフプレーしろってことじゃないんですがそういう演出はもっとやってもいいんじゃないかと思っていて、放送でも最近はその辺にも踏み込んで言うようにしています。たまに言い過ぎちゃったなって思うときもありますけど(笑)。でも、Jリーグがやれることはもっといっぱいあるんじゃないかと思って。せっかくいい試合してるし、いい監督もいっぱいいるし、面白いリーグだと思うんですよね。世界的に見てもあれだけ強いチームと弱いチームの差がないリーグって珍しいですから。ある意味今、戦国で。

洗川 そうですよね。ビッグクラブが生まれそうな雰囲気で、でも実は連覇も難しいリーグになってる。

煙山 Jリーグって、10チームぐらい優勝わかんないぞっていう所からスタートして、ホントに最後の最後までわからない。海外のリーグって、レアルやバルサみたいに優勝できるのは2チームぐらいっていうリーグがほとんどなので、逆に日本はその辺が面白い所だと思うんですよ。将来的にはやっぱりビッグクラブがあって、そこを倒すっていう構図が盛り上がるとは思うんですけど、今はどこのサポーターでも楽しめるっていう良さがあるなって。その面白さをもっともっと、今それほど好きじゃない人にもアピールしてスタジアムに来てもらうようにした方が、せっかくいいことをやってるんだから、もうちょっと攻めた方がいいのかなって気はします。


<震災からちょうど1年 被災地・仙台での開幕戦>

洗川 さて、開幕戦です。ニッポン放送では仙台vs.鹿島戦を放送します。ユアテックスタジアム仙台で3月10日14時キックオフ! 私がピッチレポートを担当して、サッカーパーソナリティが煙山アナウンサーです。あとサッカーコメンテーターは先ほど話題にも出た金子逹仁さんです。

木之本 「がんばろうニッポン!復興へのキックオフ!Jリーグ開幕戦 ベガルタ仙台対鹿島アントラーズ」と題して、13:55からON AIRします。Jリーグは特別な20周年で、ニッポン放送もその間、現在に至る「Jリーグラジオ」までずっとサッカー中継を続けてきた歴史があります。かつ、今回は震災からちょうど1年というタイミングで被災地・仙台でやるということで、スタッフも全部仙台に行って中継します。今日は中継でアナウンサーが使う資料も用紙したんですよ(※写真参照)。

煙山 洗川アナウンサーと僕とでも全然違います。みんなバラバラなんですよ。カードタイプにして貼る人も前はいたんですけどね。

─── フォーメーションがビッチリと……控え選手まで。凄い書き込みの量ですね。これを見ながら実況を?

煙山 まあ、実際試合中はほとんど見ないですけどね。見てるとたいがいシュートが入っちゃうんで(笑)

洗川 見ないですねー。書きながら憶える感じですよね。

煙山 頭を整理するためにやってる感じですね。スカパー!とかでやってる人にしてみたらこんなの作ってどうすんの?って言われますけどね(笑)

(オグマナオト)
part3へ続く