戸松 遥…愛知県出身。2007年に声優デビュー後、数多くの注目作に出演。長井監督の前作「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」でも、ヒロインの一人安城鳴子役を好演した。
島崎信長…宮城県出身。2009年に声優デビュー後、着実に経験を重ね、今作で初めてメインキャストの座を射止めた。2012年の飛躍が期待されている若手男性声優の一人。
(島崎の「崎」は正しくは山へんに立奇)

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昨年9月に公式サイトがプレオープン。その後、キャストやスタッフが順次発表されていく度に、アニメファンの間で期待が高まっていった話題作「あの夏で待ってる」。1月に放送がスタートした後も、その期待を裏切らないクオリティーで、毎話毎話、切なさや笑いを提供してくれています。その作品の魅力の秘密を探るため、高校3年の留学生だけど、実は宇宙人の貴月イチカを演じる戸松遥さんと、イチカに憧れる普通の高校1年生・霧島海人を演じる島崎信長さんに、お話を伺ってきました。オーディションでのエピソードなども振り返っていく「なつまち」主演コンビ対談。まずは前編です。

●「毎週、普通にオンエアが楽しみ」

――「あの夏で待ってる」、非常に好評ですね。お二人は、完成した映像を見た時、どんな感想を持たれましたか?
島崎 台本を読んでる時も、みんなで収録してる時も、すごく楽しかったし、これは面白いだろうなと思っていたんです。でも、実際に完成した映像を見たら、もっと面白い。キャラの表情や動きがすごくって。特に、1話の(谷川)柑菜ちゃんなんて、海人が何かをする度に、ハラハラしたり、ニコニコしたり。これは可愛いわ、みたいな(笑)。BGMも青春な感じで、すごく良いし。メインキャストとして関わらせて頂いてるのに、一視聴者として、めっちゃ楽しんでます。
戸松 私も、アフレコが始まる前から、このスタッフさんで、面白くならないわけがないって思っていて。
島崎 ないですよね。
戸松 だから、すごく楽しみにさせて頂いてました。オリジナル作品なので、先の展開も全然分からないですし。アフレコが始まってからも、来週はどうなるんだろう、こうなるのかなって想像しながら役を作ってきた感じなので。視聴者の方にも、私たちと同じ気持ちで楽しんで頂けたらな良いなと思っていました。BGMや効果音もすべて付いた映像を見ると、アフレコの時に感じた情報量とは全然違って、初めて気付くこともたくさんありますし。私も毎週、普通にオンエアを楽しみにしています(笑)。
――お二人とも、最後は普通のファンの感想みたいですね(笑)。
島崎 はい。そういう気持ちで、間違いないです。

●「海人とは運命の出会いでした」

――キャスティングはオーディションを経て決まったそうですが。それぞれのキャラクターの第一印象と、オーディションの時に意識したことなどを教えて下さい。
戸松 イチカは、これまであまりやったことがない役柄で。自分の中で、どう作ろうかなという部分もあったんです。でも、やったことがないからこそ、思い切り振り切ってやれるかなという気持ちもあって。ビジュアルや設定を見て、自分が思うイチカを自由にイメージしてやってみました。なので、決まった時はすごく嬉しくて。アフレコが始まってからも、彼女と一緒に成長できたらなと思いながら、毎回声を当てさせてもらってます。
――あまりやったことがない役柄というのは、先輩だったり、お姉さんぽい雰囲気だったりする部分ですか?
戸松 そうですね。あと、特に最初の方は宇宙人と地球人の価値観の違いなどで戸惑ったりもしてるので。本人は普通に喋ってるけど、周りから見たら、ちょっとずれてるっていう。そういう雰囲気を自然に出したいなという意識もありました。
――島崎さんは、どうでしたか?
島崎 海人君って、見た目が可愛くて背も小さいし、いつもの僕だったら、可愛らしく作っていきそうなキャラクターなんです。でもなぜか、このオーディションの時は、あんまり作ったりしないで、自然にやろうって思いがあって。本当に、設定を見て感じたイメージのままやったら、オーディションはすごくあっさりと終わったんですよ。
――これはダメだなという感じで終わった?
島崎 いえ。何となく、悪い意味で早く終わったのでは無いな、とは感じていたのですが、まさか受かるとは思いませんでした。今考えたら、僕がわりとリラックスして自然に出したものが、海人君に合っていたのかなって。長井(龍雪)監督もインタビューで、「僕の中では第一印象から決めてました」みたいなことを仰って下さっていて。
戸松 第一印象から!(笑)。
――「ねるとん紅鯨団」の告白みたいですね。
島崎 「ねるとん」ぽいけど、そういう意味じゃなくて(笑)。
戸松 長井監督の一目惚れ?(笑)
島崎 でも、図々しく言えば、海人とは運命の出会いみたいな。本当に嬉しい出会いだったと思います。


●「信長さまが来るぞー!」

――戸松さんと島崎さんが初めて会ったのは、「なつまち」第1話のアフレコですか?
島崎 いえ、その前に。他の作品だけどタイトルって、言って良いのかな? 戸松さんがレギュラーで出られていた某旅館のアニメに、僕が生徒Aとかで出させて頂いたことがあって。
戸松 その時に会ってはいたんですけど。
島崎 そんなに話はしてないですよね。
戸松 そうだね。挨拶をしたくらいな感じでした。
――では、「なつまち」の現場で、再会したということですね。
戸松 私は、島崎さんの「信長」という名前をずっと覚えてて。
島崎 そうなんですよねー。僕の名前は(笑)。
戸松 初めてお会いした作品の時、香盤表(出演者リスト)を見て周りの人と、「の、信長だ! 信長さまが来るぞー」と盛り上がって(笑)。
――愛知県出身の戸松さん、大興奮(笑)。
島崎 それが、こんな普通のあんちゃんで、すみません(笑)。
戸松 だから、「なつまち」でご一緒させて頂くと聞いて、「あの時の!」って。
島崎 名前効果すげえなあ(笑)。
戸松 「なつまち」の現場でも、最初は名前の由来の話をよくしてたよね。
――どんな由来があるんですか?
島崎 曾お婆ちゃんがプレゼントとして、命名師さんに依頼してつけてもらった名前で。その命名師さんの名前がよく分かんない名前だったりとか。そんな小ネタを話してました。
戸松 3話くらいまでは、毎回、誰かに説明してましたね(笑)。
――島崎さんは、戸松さんにどのような印象を持たれましたか?
島崎 芸歴的には先輩ですし、いろんな作品で名前を拝見する方だし。僕としては、最初、緊張して接してしまうというか。どんな人なんだろうって感じでいたんですけど。話してみたら、すごく気さくで話しやすい方で。僕は、こういうメインの役が初めてということもあって、色々と相談したり、ご迷惑をかけたりすることもあるんですが。
戸松 いえいえ、全然。
島崎 すごくありがたいし。本当に、話しやすくて良い方だなって。
戸松 ありがとうございま〜す。話しやすく良い方で〜す(笑)。
――では、褒められて照れている戸松さんは、島崎さんに対して、どのような印象を?
戸松 島崎さんは、すごくしっかり自分のプランを組み立てて来るんですよ。自分のキャラだけじゃなく、他のキャラクターの流れとかも、すごく読み込んでいて。スタジオでも、空いてる時に練習してますよね。
島崎 しちゃうんですよねー。
戸松 私にも「このシーンなんですけど、こういうプランを作ってきたんですけど、どうでしょう?」みたいに、すごく投げかけてくれて。打ち合わせというほどでも無いけど、彼の作ってきたプランを聞いたりして。予習をすごくされる、勉強熱心な方だなとすごく思ってます。
島崎 いえいえ。本当は、そのプランが現場で「違うよ」ってなった時、ガラッとぶちこわせるのが、大切なんですけどね……。

●「思わず、ポロッと出ちゃったんです」

――第1話のアフレコには、どのような気持ちで臨まれたのですか? 島崎さんは、初主演ということで、緊張などもあったのでは?
島崎 この作品の中で、全体的に一番喋っていて、流れを作っているのは海人だと思っていて。そういう役をやる人間が、座長っていうか、みんなを引っ張っていくみたいなことを良く言いますよね。でも、僕は、そんな風にみんなを引っ張っていくとか、やっても無理なので(笑)。そういう変な意気込みはせずに、自分にできることをきちんとやりたいなという気持ちで臨みました。だけど、アフレコ前からスタッフさんの熱意をすごく感じていたので、それに応えたいという意気込みもあって。テストの後、「よし、まずは力を抜こうか」と言われるところから始まった第1話でした(笑)。
――戸松さんは、第1話のアフレコには、どのような気持ちで?
戸松 私はアフレコ日の前に、他の作品のお仕事で長井監督とお会いする機会があって。お話しした時に、「「なつまち」は、ちょっと大人っぽく作って来てね」って、ポロッと言われたんですね。それを聞いて「ええーーー!?」と思って(笑)。それからずっと、どのくらい大人で作っていったら良いんだろうって考え続けました。でも、精神的な部分で大人にするのか、表面的な部分でするのかが全然分からなくて。結局、「1話の台本を頂いてから考えよう」と。私も、あんまりかっちりと役を作ってしまうと、現場で柔軟に対応できなくなってしまうんですね。だから、もうちょっと(準備を)やりたいなってくらいで、止めておくタイプなんです。でも、「なつまち」はいろいろと挑戦させて頂く部分が多いと思っていて。第1話の時は、どう役を作っていこうか、自分の中ではかなり考えた方です。
島崎 僕と戸松さんって、(自然な時の)声の年齢感的にはあまり変わらないと思うんですね。でも、イチカが海人よりも2年先輩な分、戸松さんが、お芝居で先輩な部分を出してくれていて。そのお芝居が、本当にちょっとだけ先輩だ〜という感じで。あと、特に1話のイチカって、ずっと「私、地球人に見えてるかしら」って不安に思ってたじゃないですか。
戸松 うん。
島崎 そのお芝居って、すっごい難しいと思って。でも、聞いていて「先輩だな」とか「ごまかそうとしてるな」とか、すごく感じたし。さすが戸松さんだって(笑)。
戸松 ありがとうございます。一度、3話くらいの時に、島崎さんから「このシーンのイチカ、すごい良かったです!」って褒められたことがあって(笑)。
――スタジオでですか?
戸松 はい。いきなり言われたことが(笑)。
島崎 思わず、ポロって出ちゃったんです。
――スタジオにファンが紛れ込んでますね(笑)。
戸松 おお……どうした、いきなりと思って。
島崎 僕は、毎回いろんなシーンで、キャストの皆さんに対して、「あ〜良いなー」「このお芝居も良いなー」って思ってますよ。内心では(笑)。「なつまち」って、キャラクターがみんな魅力的で。毎話毎話見せ場があるから、一話進むごとに好感度がうなぎ登りなんですよね。あの時だけ、たまたまポロッと、口からこぼれたんです。
(丸本大輔)

(後編に続く)