上から降ってくるウロボロスを塔を左右に回してキャッチしよう。3名のチームが48時間で作った「ワナゲー」

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48時間でゲームを一本、作ってきましたよ! といっても僕は口を出すだけで、実際に作ったのはプログラマーなんですが......(汗

会場に応募したメンバーで即席のチームを編成し、特定のテーマに基づいて48時間以内にゲームを作る「グローバルゲームジャム(GGJ)」。国際ゲーム開発者協会(IGDA)が2009年から毎年1月末に開催している、世界的なイベントです。

2012年は1月25日から27日にかけて、世界48カ国で244会場がエントリーし、全11245人が参加。2303本のゲーム開発に取り組みました。日本でも札幌、仙台、一ツ橋、八王子、京都、大阪、福岡会場が参戦しました。

概要は昨年度のレポートを見ていただくとして、今年は僕も取材する側から、実際にゲームを作る側にジョブチェンジ! もっともゲーム造りなんて小学6年生の時に、お年玉貯金をはたいて買ったPC-6001(パピコン!)で、BASICのテニスゲームを作って以来。当時のバイブルは、ゲームセンターあらしがゲームプログラムに挑戦するマンガ「こんにちはマイコン」(すがやみつる著)だったんですが......。ま、そこは大人ですから「人間力」で勝負してきました。

初顔合わせとなったメンバーは、2年間コードを書いていない元ゲームプログラマー。絵は上手いんですが、いまひとつゲームっぽくないデザイナー志望の学生。そしてIGDA日本の代表でありながらゲーム開発経験がゼロの筆者。申し込みの時も「宣伝・広報なら一日の長があります!」と宣言しておいたほど。こんな風に、早くも香ばしさ満点の組み合わせです(公式サイトはこちら)。

ま、それでも何とかなっちゃいましたよ! 今年のテーマは自分の尾に食らいつく蛇の絵、すなわち「ウロボロス」。ここからいろいろアイディアを広げて束ねて結んで捨ててゴミ箱から拾ってやり直して、最終的に空から降ってくるウロボロスを、画面下の塔やタワーに通していく、固定画面のパズルゲームが完成しました。ゲームプログラム投稿サイト「9LEAP」にアップロードされているので、よかったら遊んでみてください。

ちなみに、最終的に決まったのは、プログラマーの鶴の一声。だって、どんなアイディアもプログラマーが実現できなければ、絵に描いた餅ですからね! そのプログラマーといえば、しきりに「申込時に、あれほどメインプログラマーは遠慮したいと言っておいたのに......」とぼやいてましたっけ。開発中もしきりに二人で「できるだけシンプルに」「なら固定画面で!」なんてアイコンタクトをしてたような気が。でもおかげで、ちゃんとゲームになりました!

もっとも、作業の7割くらいはプログラマーがコードを書いて、残りの3割くらいはデザイナーがグラフィックデータを作成していたんですが......。僕はというと、企画会議でゲームの方向性を決めて、途中でルールを肉付けして、あとはゴミを片付けたり、お菓子の買い出しに行ったり、ネットで情報収集したり、こっそり内職したり......。ぶっちゃけ「なんちゃってゲームデザイナー」をしてしまいました! ごめん! 

でもでも、ファミレスやコンビニや吉野屋で食事をおごったり、近くの銭湯まで学生を引率したりしましたよ! なんたって僕がチームの一番の年長者でしたから! ほら、チームの雰囲気を明るく保つというのも、「大人」の仕事ですよね? ハッハッハw

ちなみにゲームって、最初に幹の部分を作って、時間を見ながら枝葉を広げていくんです。本作ならクリックで塔が回転して、上から輪っかが落ちてくるまでが第1ステージ。次に輪っかが大中小となり、色分けされて、スコアがつくのが第2ステージ。そこから背景がついて、エフェクトがついて、難易度が調整されて......と見栄えが良くなるのが第3ステージ。ホントは音楽もつけたかったんですが、時間切れとなりました。

また、本作はゲームエンジンの「enchant.js」を使用しています。これは往年のファミリーベーシック的なイメージで、HTML5+JavaScriptによるゲームプログラムが書けてしまうというもの。完成したゲームはブラウザベースで端末を選ばずに遊べて、ブラウザに貼り付けることもできます。実はプログラマーも「enchant.jsで、ほとんどゲームを作ったことがないんです」とぼやきながら、JavaScriptのマニュアルを片手にキーを叩いてましたっけ。いや、それ「ガンダム」で言うところの、アムロの大気圏突入状態ですからー! 

んでもって、これだけシンプルな内容にもかかわらず、時間内に完成しなかったんですよ! 今アップされているバージョンは、その後にプログラマが週末をつぶして、形を整えたもの。GGJ終了直後「ルールがわかんないです T_T」なんてコメントもつきましたが、それもそのはず、まだ壮大にバグってましたから。すべては一人で作業を継続し、レベルを加えて、難易度の調節をして、デバッグまでした、プログラマーの執念の賜物です。

ただ、実はこれには裏話がありまして。タイムリミットまで残り1時間となった時に、プログラマーが突然「じゃあ、そろそろ新しいゲームを作ろうか!」なんて言い出したんですよ。もうね、みんなドッカーンです。いい加減披露でナチュラルハイになってましたから「そうだ!俺たちの戦いはこれからだ!」なんて口走りながらテストプレイをしていたんですが、その裏でプログラマーは独自にコードを書いていたんですね。

んでもって残り30分になった時「こんなの作ってみたんだけど......」とひとこと。そこから、ちょっと手直しをして、ウェブにアップするまで、あっという間でした。プログラマー曰く「完全な現実逃避」とのことで、その時の心境を形にしてみたんだそうです。百聞は一見にしかずで、ぜひチェックしてみてください。あと最初に謝っておきます。どうもすみません。

こんな風に、のこり1時間でバグもとらずに別のゲームを作ってしまったプログラマーに、真の「大人の責任の取り方」を教えられました。それと共に企画のできるプログラマーって最高だと、改めて思った次第です。そりゃ自分のイメージ通りにモノが作れれば、それが一番早いですよね。そのための環境も整ってきているんですから。

というわけで僕もenchant.jsを勉強しようと固く心に誓いました。来年のGGJは口だけでなく手も動かしますので、乞うご期待です!

(小野憲史)