ただ、外部からの評価なくしてはこの業界のさらなる向上はありえません。自分たちの組織の中だけで、ジャッジの良し悪しを振り返っているだけでは何も変わりません」

■「評価されない」ことでの感覚のズレ。現場での声からわかること

――でも実際、評価されることの大切さをレフリーの皆さんが理解しているかどうか。正直、そこに僕らは疑問を感じてしまうところもあるんですが・・・・・・。

大西「レフリーはPKやオフサイドの判定に代表されるようにゲームを大きく動かせる存在。ということは同時にサッカーを見る側にとってもとても大きな存在なわけです。でも、僕も実際にレフリーの方と話をしてみると、そこに疑問を感じるところはあります。一例をあげればJ2におけるアシスタントレフリーの1試合手当ては3万円。でも『それしかもらっていない』と発言するアマチュアレフリーの方もいらっしゃるんですよね」

――僕らからしたら3万円「も」貰っている感覚。「いいなあ」と思いますね。

大西「そう思いますよね? 世間の感覚はそうですよ。一日かけて交通費宿泊費全額支給、弁当も出て3万円の仕事があったら、多くの人は飛びつきますよね。でも『それが恵まれていない』という発言をされる方がいる。
そこで僕は『なぜそんな感覚になるのか』と考えたんです。前日入りで毎日走ってとはいっても、レフリーをされているということはその職業に興味があるから、目標があるからだと思うんですよ」

――それは岡田正義さん(元国際主審・JFAスペシャルレフリー・2010年引退)が国分寺市役所に勤めていた(岡田氏は東洋大卒業後、2001年までは東京都国分寺市職員だった)当時の感覚ですよね。現在のJリーグにおいては当時と比べてインフラも安定していますから。

大西「ですから僕はそのレフリーの方には言いました。『たとえ身分はアマチュアでもお金を頂いている以上プロフェッショナルじゃないの?』と。それともう1つ。僕はスカパー!解説をしている関係上、Jリーグの監督から話を伺う機会も多いのですが、そこでは『日本のレフリーには責任感がない』ということも言われました。『俺はレフリーだ』というプライドだけはあるということも」

――でもそれは「プライド」ではなく、「傲慢、依怙地」ですよね?

大西「そうなんです。レフリーには観客にゲームを楽しませる役目も含まれているし、そのためにはしっかりした笛も吹かなくてはいけない。両チーム選手のプレー特徴も事前に頭の中に入れて、ゲームをコントロールしなくてはいけないわけです。もちろん、感情的になることなく。ところが、Jリーグのレフリーはものすごく感情的になる。円滑に試合を進めるため、コミュニケーションの一環として倒れている選手へ手を差し伸べるシーンがあってもいいのに、ほとんど手を差し伸べない。ひょっとしたら『手を差し伸べるな』といわれているのかもしれないですけど、そこは個人の判断。日本のレフリーはもっと自立しなくてはいけないです」

――そういえば、レスリー・モットラムさん(スコットランド・元JFAチーフ審判インストラクター)は、かつてJリーグの笛を吹いていたころ、いいプレーに対し親指を立てて称えるシーンもありました。ああいう部分も含めて個人の判断があってもいいですよね?

大西「どんな職業でも、自分の生活環境を改善する上では必ず個々の責任が生じてくるものです。ただ、その責任すら果たしていないレフリーがこの日本に多くいることは残念なことだと思いますね」

(後編につづく)

■著者プロフィール
寺下友徳
1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。学生・社会人時代共に暗中模索の人生を経験した末、2004年にフリーライターに。さらに2007年からは愛媛県松山市へと居を移し、「週刊サッカーダイジェスト」、「中学サッカー小僧」、「スポーツナビ」、「高校野球情報.com」、「ホームラン」、「野球小僧」など様々な媒体に四国のスポーツ情報を発信している。


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