市民生活に溶け込んでいるか否か。平日の社会に融合しているか否か。今日的なスタジアムである条件はこれだ。

新スタジアムは、土地代の安い郊外に建てられる傾向がある。2002年W杯用に建てられた日本のスタジアムはたいていコレ。試合日以外、ひとりぼっちにされている。愛着度の低い、寂しいコンクリートの塊と化している。

市民性の低いスタジアムとはこのこと。おらが街のスタジアムと胸を張って言いにくい。それを避けるためには、その都市の開発計画とリンクしている必要がある。完成したときはひとりぼっちでも、数年経ったら辺りはすっかり街の形を成していたとは、アムステルダムアレーナの例だが、再開発によって、スタジアム周りが、映画館やショッピングセンターなどを併設する街の総合コミュニティに変身した例は少なくない。

スタジアムの内部施設を民間に貸し出していたり、内部施設に結婚式場があったり(ゲルゼンキルヘン・ヴェルティンスアレーナ)、老人ホームがあったり(バーゼル・セントヤコブスパーク)、スタジアム自らが複合施設であるところもある。川口能活選手がかつて所属したノアシュラン(デンマーク)のスタジアムは、スタンドの最上階がそのまま4つ星ホテルになっていた。

ガンバ大阪の新スタジアムも、再開発される商業施設と連携する可能性もあると聞くが、例えば、スタジアムの内部施設に、ショッピングモールを組み込むぐらいの大胆さが欲しいものだ。日本のスポーツ施設の常識を覆すような、市民性かつ娯楽性に富んだスタジアムを建設して欲しい。従来の体育施設然とした、国体のために作られたようなスタジアムはもう見たくないし、サッカーは大衆化していかない。

日本でスタジアム界隈の環境が最も優れているのは他でもない国立競技場だ。周囲を取り囲む神宮外苑は、東京を代表するスポットで、なおかつアクセスがいい、抜群に。世界的にも類を見ない利便性に優れたスタジアム。世界ナンバーワンというべきかもしれない。横浜国際(日産スタジアム)と、埼玉スタジアムに勝っている点でもあるが、そのことを自覚している日本人はけっして多くない。僕がそんな話をすれば、へーそうなの? と多くの人が納得しない顔をする。

もちろん、サッカー場として見れば問題は多い。老朽化も目立つが、それを差し引いても、僕は日本で最も魅力的なスタジアムだと思う。そして建て替えの話はこちらにもある。スタジアムそのものがモダンになれば鬼に金棒。アクセスの魅力、周辺の魅力と相まり、魅力は増幅する。東京を代表するスポットになる。それこそ、五輪招致の大きなセールスポイントにもなる。超都市型五輪と銘打つことができる。

スタジアムには可能性が溢れている。新スタジアムは斬新な発想を注入できるまさに可能性の塊だ。スタジアムの概念を覆すようなスタジアム。僕が見たいのはコレだ。たとえ名勝負が見られなくても、満足できる場所。快適性、娯楽性を堪能できる場所。ガンバ大阪の新スタジアムは、そうであって欲しいものだ。