原発問題のテーブルには、左翼も右翼もノンポリも同席して議論しよう!

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かつて、反原発・脱原発運動といえば、おもに左翼と呼ばれる人たちによっておこなわれるものであった。長年、政権の座についていた自民党と右翼との距離が近かった。よって、体制が推進する原発を右翼は批判しにくく、逆に左翼は原発を批判すること自体が反体制を象徴する活動のひとつとなっていたように思う。

そもそも、原発問題に左翼も右翼もない。今回の福島第一原発の事故とその後の経緯を見れば、多くの人はそう思うのではないか。原発事故が起きる。放射能が拡散する。近隣地域には人が住めなくなり、産業が衰退する。仕事がなくなる。風評被害が発生する。メルトダウンした原発の処理は困難をきわめる。

原発事故が起きて、いいことなんてひとつもないのである。しかし、私たちはそんな原発の建設を容認し、そこで作られる電気を消費してきた。どうしてそうなったのだろう。事故が起きたら収拾がつかないことになるような発電所が、なぜ54基も日本にあるのだろう。いま私たちができることは、そういった歴史や経緯を見つめ直すこと。そして、同じまちがいを繰り返さないために、これからどうすればいいのか徹底的に話し合うことである。

その話し合いの席には、誰がいてもいい。左翼も右翼もノンポリも同席し、原発の今後について議論する。いまは「労働運動」も「革命」も「反米愛国」も「日の丸」も、とりあえず脇に置いておこう。「原発をどうするのか」という共通のテーマが、思想やイデオロギーの対立を越えたかたちでおこなわれる。もし原発問題がある程度の収束を見せたら、ふたたび「革命」を叫び、「日の丸」を掲げ、罵倒し合い、批判しあってもいいじゃないか。

そんなことを夢想する筆者は、今回の原発事故がきっかけとなり、原発問題に限定した左翼と右翼の大同団結みたいなこともあるんじゃないか、と少し期待していた。しかし、そうはなっていないようだ。結局、左翼の人たちは自分の身内でかためて行動し、右翼の人たちは反原発・脱原発に消極的であるように思っていた。

そんななか、9月18日に船橋で「右から考える脱原発集会&デモ」がおこなわれた。主催したのは、統一戦線義勇軍議長の針谷大輔さん。一水会最高顧問の鈴木邦男さんも参加したこの集会&デモは、いわば右翼が主導するものだといえる。とはいえ、「子どもたちの命と麗しき山河を守れ!」という合い言葉からは、極端な思想も過激なイデオロギーも感じない。その集会&デモの様子は、「週刊SPA!」の10月4日号の「右翼だって脱原発!という記事にくわしく報告されているので、興味のある方は読んでいただければと思う。

針谷さんといえば、6月11日に「素人の乱」らの主催でおこなわれた「新宿 原発やめろデモ」への参加が決まっていたのに、某団体の反発が原因でいきなり参加が中止になった一件をご存じの方も多いであろう。その針谷さんが、いま「緊急時にイデオロギーは関係ない」「せっかく脱原発に右も左もない」(「週刊SPA!」同号、24ページ)と発言している。筆者は、この発言を支持したい。



たしかに右翼にも、島田紳助さんの引退劇であきらかになった圧力団体みたいな人たちもいる。だが、針谷さんや鈴木さんのような、原発問題に関しては思想を越えて歩み寄る姿勢を見せている人たちもいる。そういう右翼の人たちとは、「特攻服だ、街宣車だ」と毛嫌いしたりレッテルを貼ることなく、左翼の人たちも付き合ってみてはどうか。繰り返すが、原発問題に右も左もないのだから。
(谷川 茂)