不正の世界においては、損害額は、時間の経過とともに急速に拡大することが知られている。不正実行者の心理として、当初は、不正が発覚することに対する恐怖心もあり、不正実施後しばらくは、周囲の反応を確認するための冷却期間をおく傾向がある。しかし、不正の発覚を示す兆候がないことを確認すると、徐々に不正取引の実施間隔を短くし、かつ、金額も増大させていくのである。

 結果として、数年間にわたり継続的に実行された不正事件でも、被害金額の大半は不正が発覚する直前の最後の半年以内に生じたものである、というケースも少なくない。そのような場合、「なぜもっと早く発見できなかったのか?」という疑問を呈する人々も少なくはないだろう。特に、マスコミには、その傾向が強い。したがって、早期発見はリスク管理の要諦となる。今回はメールを例にとって、そのことを考えてみよう。

 宮崎の口蹄疫の件では、「あの時にちゃんと調べていれば、感染が分かったはずだ……」との非難が一部に起こっている。「2010年日本における口蹄疫の流行」と題したWEBサイトに、最初の感染疑い例が確認された2010年4月20日よりも相当以前の3月26日から、口蹄疫の疑いが生じていたことを詳細に示す「口蹄疫流行の経緯」が開示されており、もはやその事実を隠しおおせることは不可能である。どのような背景があったとしても、「最初の対応に失敗した」との非難を避けることはできないのである。

 その時点では、「大したことはない。」と思っていたことが、その後大問題に発展するケースは少なくない。現実問題として、たまたま問題の発端に遭遇した場合、少し変であると感じても、それ以上には気にもとめずに、放置してしまうことも少なくないのが実情であろう。しかし、時間の経過とともに格段に被害が増大する場合、早期発見のチャンスを見逃した結果、事後的に責任追及につながる危険性は、決して低くはない。

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