流れの中から点が決まらない現状について問われた遠藤は、淡々とそう語った。もちろん、チームとしての戦い方は浸透しているのだろう。しかし、日本を分析し、日本のサッカーをさせないよう対処してくる相手を破るには、コンセプト外のプレーなのかもしれない。それも一人で打開しようとしても海外の強豪相手には自滅するだろう。集団で、何かを仕掛ける意識が必要だ。

 それは指揮官の指示を待ちでは生まれない。選手個々の勇気と創造性、変えようとする意欲が必要だ。たとえ、選手同士がぶつかり合っても、自己主張し合う、そういう空気が個の力を育てるはずだ。チームコンセプト頼りにまとまりのいい仲良しグループでは、個性は育たないのではないだろうか?

「今日の試合での課題は、球際での強さ、あと一歩の寄せだったり、そういうことも今日はすごく感じた。アイディアをもちろん出してく、ゴール前ではアイディアは大事になる。でも一番は球際の強さというのを感じた。特別向こうが強かったわけじゃないし、世界へ行けば普通だと思う。目の前の敵は全員負けないというか、『ぶった押す』という気持ちでやれば怖いものはないと思う」

 岡田ジャパンでは不動のボランチとなった遠藤。4年前は控えメンバーとして、悔しい思いをした。ジーコジャパン内で激しいポジション争いや選手同士のぶつかり合いも経験している。選手間の衝突がドイツでの惨敗に繋がったという思いを持っているかもしれない。しかし、世界舞台で戦うために欠かせない“気持ち”を育むため必要なことは彼も理解しているはずだ。惨敗し「自信を失っちゃいけない」と語った韓国戦後よりも中国戦後の遠藤の言葉のほうが彼の危機感を表していた。

「型にはまったプレーが多かった。意外性のあるプレーをしないと、相手を崩すことができない。言われたことを言われた通りにやるという日本人の悪いくせが出た。足元、足元、サイドを崩して、というのは理想だろうけど、相手に研究されればバレることだから。どういう形であれ、ゴールするというのをしっかり考えないと。型にはまるのではなく、遊び心みたいなものを入れないと。まずはトライしないと始まらない」

 ワールドカップまで4カ月。本番まで残された試合は5試合(予定)。ぐずぐずしている時間はない。

文=寺野典子