●新ネット世代(デジタルネイティブ)のネット力が世界を変えていく
iPhoneのアプリ市場を支える開発者と購入ユーザーは、これまでとどこが違うのだろう。
iPhoneのアプリケーションは、稚拙なアプリケーションから驚くほど高いクオリティの作品まで様々な作品がある。こうした品質の差を橋本氏は、個人としてのプロとアマの開発者の混在が生み出しているという。

橋本氏は「iPhoneアプリの市場には、これまでアイディアはあるけど会社では出せない・製品化できないといった制約を受けていたプロの技術者が個人として作った作品をリリースできるという利点があります。個人といってもプロが作っているわけですから、非常にクオリティの高い作品が現れたりするわけです。iPhoneのアプリ作家には起業しようと思っている人もかなり多いのです。
また個人レベルで自分がやりたいことをビジネス化できるわけですから、経費も安く抑えられるので販売価格も安くできるわけです。それがiPhoneアプリケーションの安さにもなっています。ただ弊害としてアプリの価格が安くなりすぎたこともあり、最近では価格を是正しようという動きもおきています。100円アプリとかはやめようよって。」

「プロが制作する作品がある反面、iPhoneのアプリには試しで作ってみたり、息抜きで作ってみたり、そういう楽しみ方があります。そこが短時間で多くの開発者とアプリケーションを集め、市場規模を大きくできた理由であり、参加する多くの人の楽しさでもあります。だから安いアプリがまったくなくなるということは今後もないと思います。」と、初心者の制作した作品も多いことが市場規模を支えているという。

橋本氏は、アプリケーションの購入者にもこれまでとは異なる変化が現れていると指摘する。
「iPhoneアプリの購入で特徴的なのは、検索して欲しいものを探すスタイルが増えたことです。これまでのように店で並んでいるもの、そこにあるモノしか買わないというのではなく、欲しいものは検索して探して購入する。こうしたインターネット世代の増加も市場が変化してきている要因だと思っています。ショップのおすすめを買うのではなく、自分が欲しいものを探して買うというネット力が市場を変え始めているのだと思います。」

■インターネット時代のプロモーション
ネットとリアル世界のプロモーションの違いとは、どこにあるのだろうか
取締役中島敦氏


中島氏は、iPhoneでのプロモーションの特徴を「これまでのポータルサイトなどに大々的に掲載するといったことより、ブログやSNSにリンクや紹介をするなどして口コミで広がることが原動力になることが多い」という。
iPhoneのアプリケーションのようなものはネットを辿って購入するというケースが多いため、ネットの中でプロモーションをしかけていくのが効果的だと語る。

橋本氏は、「iPhoneのアプリのターゲットは日本国内だけではなく、全世界のユーザーなので日本だけの媒体を利用することは、これまでと違い有効な手法ではないのです。世界に売り込むには、TwitterやSNS、ブログなど、世界につながるサービスとブロガーなどにリーチしていかないといけない。プレスリリースの大量投下といった手法はもはや通用しないのです。手間をかけた人海戦術なども時には必要だったりします。」

プレスリリースがまったく不要かというと、そうではなく、情報を広めるプロセスにおいて、プレスリリースを大量配布するという手法がネットの世界で効果を生み出さなくなっているということなのだ。ターゲットに訴求するための工夫や対象者へのアクションに手間をかけなければインターネット世代には届かなくなっているのだ。


●何が新世代(デジタルネイティブ)に届くのか
では、どのような手法がユーザーに届くのだろうか。

橋本氏は、「Twitterは予想以上に効果あります。日本では今ひとつといった感はありますが世界向けには強いです。さらに今ですと、リアルタイムなメーリングリスト的な使い方もできますよね。Twitterはメルマガの新しい形と考えてみてもおもしろいですよね。」

たしかにメルマガは1日1回しかユーザーにアプローチできないわかだが、Twitterであれば1日何回も伝えたいことをピンポイントで届けられる。

中島氏は、「マスの力や大金を使ったプロモーションと違って、嘘やハイプ(誇大宣伝)が通用しない。本当におもしろいコンテンツでないとバズ(口コミ)では広がらないし、ちゃんとまじめにコンテンツを作らないと通用しない時代。」と、ただ口コミに便るだけではダメだとも指摘する。橋本氏も「嘘はすぐバレますし、ネットでたたかれる原因となり、逆効果となる。」という。

「レイティング(評価)もありますので、App Storeでレイティングが低いアプリには辛辣な意見が多く書かれています。我々もそうした評価にならないようにユーザーの声には敏感になっています。」と中島氏はいう。

インターネットは、ユーザーの声の伝達が早く、評価も厳しい世界である。また、ネット世代はネットの声に信頼を置く傾向が強いため、ネットでの評価やユーザーの意見には敏感である必要があるのだ。
※バズ マーケティング
バズ語源は、蜂がぶんぶんと飛ぶ音という意味。ターゲティングを明確にした口コミ手法での宣伝方法。


次回は、アプリケーション開発やプロモーション制作の担当者にも同席していただき、開発や制作の苦労・ノウハウについて伺った模様を紹介する。

CONIT


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