トレーダーやアナリスト向けに作られた「Bloomberg Terminal」の歴史

by Guilhem Vellut
1982年に登場した「Bloomberg Terminal(旧Market Master)」は、金融データを表示する端末としてニッチ市場向けに記事作成時点でも親しまれています。その誕生からの歴史を、アメリカ電子電気学会の機関誌・IEEE Spectrumがまとめています。
The History of the Bloomberg Terminal - IEEE Spectrum
瞬時に変わる情報をいち早くつかむことが重要な金融市場では、古くは伝書鳩などで情報をやりとりしていました。1960年にはQuotronという企業が市場価格を表示する最初の電子画面を導入し、その後20年間にわたり、ほかの企業も金融ニュースやデータを配信する同様のサービスを展開しました。
投資銀行ソロモン・ブラザーズを解雇されたマイケル・ブルームバーグ氏は、退職金を元手にして後に情報サービス大手のBloombergになる「イノベーティブ・マーケット・システムズ(IMS)」を設立しました。このとき、他の情報サービス企業と差別化する何かが必要だとブルームバーグ氏は考えたそうです。
ジョンズ・ホプキンズ大学で電気工学の学位を取得しており、ソロモン・ブラザーズでは金融システムを構築した経験もあったというブルームバーグ氏は、最新の情報を提供するだけでなく、過去のデータに基づいて即座に分析も行えるコンピューター端末が必要だと考え、開発に注力しました。
当時、金融データの大部分は依然として電話、印刷された価格表、専門誌などを通じて流通しており、分析には人間の専門知識に導かれた直感的な判断が必要だったとのこと。当時からロイターやダウ・ジョーンズといった情報サービス大手もビジネスニュースを配信していましたが、トレーダーは依然として自分で計算や分析を行う必要があったそうです。
そこでIMSが開発したのが、「Market Master」という端末でした。これはモニターや専用キーボード、そしてIMSのプライベートネットワークに接続する通信ユニットで構成された端末で、発売時点ではアメリカ国債の価格と債券計算ツールしか提供していませんでしたが、異なる市場から情報を取得して投資計算を支援するという大きな構想の下に生まれたものでした。
キーボードはこんな感じ。見た目は一般的なキーボードですが、ファンクションキーは色分けされ、「STRATEGY(戦略)」や「RESEARCH(分析)」といった用途が割り当てられていました。ホットキーを使うことで、トレーダーは政府証券、社債、為替市場などのデータを簡単に呼び出せ、一連のキー操作によって過去およびリアルタイムのデータを表示したり、分析を実行したり、取引を発注したりできました。

また、ケーブルでキーボードと「Bloomberg Controller」という機器が接続されていて、Bloomberg Controllerにはローカルハブに接続するための専用電話回線が用意されていました。インターネットはまだ商用利用できなかったため、同社は基本的に独自の閉鎖型ネットワークを構築し、中央のコンピューターで計算の大部分を実行していました。
最初の22台のMarket Masterは1982年に、この端末の独占使用権を獲得したメリルリンチに納入されました。当時は世界中で株式市場が電子取引へ移行しつつあった時期で、債券価格の変動性が高まり、投資家は債券を正確に評価する方法を知りたがっていたということで、まさにタイミングは完璧だったそうです。
発売から5年後、IMSはBloomberg LPへとブランド名を変更し、Market MasterはBloomberg Terminalとして知られるようになりました。その後は時代のニーズに合わせ、トラックボールを追加したバージョンなども登場しています。一般向けに売られるようになったBloomberg Terminalは、本体のリース、専用プライベートネットワークへのアクセス、そして一連のサービスを含むサブスクリプション形式で展開されています。記事作成時点では、年間料金は1台当たり3万2000ドル(約500万円)を超えます。

古いBloomberg Terminalは国立アメリカ歴史博物館などに所蔵されています。以下は著名投資家のビル・グロス氏が使っていたキーボードで、ログイン情報とパスワードがテープで貼り付けられています。
