市川團十郎の「襲名」日本映画初快挙 ベネチア映画祭「Cinema&Arts Award」最優秀作品賞
第83回ベネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門に正式出品された、歌舞伎俳優の市川團十郎(48)のドキュメンタリー映画「襲名」(今月25日公開)が、同映画祭の公式独立賞である「Cinema & Arts Award」最優秀作品賞を受賞した。同賞の最優秀作品賞受賞は、日本映画として初の快挙。
受賞に際し、三池崇史監督は「快挙。團十郎の快挙です。映画を通じて古典歌舞伎の美しさ、そして『襲名』の厳しさを世界に向けて発信できて幸せです。ありがとう、ヴェネツィア国際映画祭」と喜びのコメントを寄せた。
「襲名」は三池監督にとって初のドキュメンタリー作品。團十郎と新之助の親子同時襲名披露公演の舞台裏と、コロナ禍での2年半の襲名延期をへた歴史的イベントに迫る一作となっている。
以下は発表された受賞理由。
ナレーションによって導かれる本作は、現在と伝統が交錯する地点から歌舞伎をひもといていくドキュメンタリーである。物語の中心となるのは、市川家の歴史。大衆性と洗練を併せ持つ、この古くからの芸術形式を今に生かし続けている、歌舞伎界を代表する名門のひとつである。
映画の核となるのは、壮麗な「襲名」の儀式だ。そこでは新たな團十郎の誕生が告げられる。十一代目市川海老蔵が十三代目市川團十郎白猿を襲名し、同時に、息子の勸玄は市川新之助八代目を襲名する。
日本において社会的な意味をも帯びるこの儀式を通じて、監督は現代の歌舞伎の姿を正確かつ細やかに描き出している。
三池監督は、洗練され、極めて緻密なカメラワークによって、映画を二つの次元から展開していく。
一方には、市川家の日常、公の場への出演、そして家族の私生活の時間がある。もう一方には、洗練された構図と長回しを通じて、今なお日本社会の中に息づく、更新され続ける演劇的儀式を忠実かつ丹念に捉えた世界がある。
三池監督は、一人の人間としての存在、舞台上の人物としての存在、そしてその社会的役割の関係性を注意深く分析している。
そこから浮かび上がるのは、技芸を受け継いでいくことの価値、伝統と革新のせめぎ合い、そして父から子へと受け継がれる継承についての考察である。
終盤では、舞台上のパフォーマンスによって生命を与えられる「総合芸術」としての歌舞伎の魅力が、その圧倒的な力をもって立ち現れる。
極端なまでに様式化された発声、身振りの規範、顔や眼差しを変貌させる化粧の鮮烈な表現主義、そして俳優と観客との直接的な関係。その美しさは、まさに一枚の絵画のようだ。
