たすけて!地方移住先で暮らす年金月24万円・80歳両親から緊急電話…51歳長女が新幹線で急行、目撃した「とんでもない光景」
定年後の「セカンドライフ」として人気を集める地方移住や田舎暮らし。豊かな自然環境や悠々自適な生活に魅力を感じる一方で、年齢を重ねるにつれて移住当初は見落とされがちなリスクに直面することも……。事例を見ていきましょう。※事例の人物名はすべて仮名です。
順風満帆だった地方移住生活
「これからは静かな田舎で、家庭菜園でもやりながらのんびり暮らしたいんだ」
15年前、当時65歳の父・トシヤさんと母・トクコさんから地方移住の計画を聞かされたとき、娘のマナミさん(当時36歳)は少し心配しつつも、二人の第二の人生を応援することにしました。
両親が移住先に選んだのは、都心から新幹線とローカル線を乗り継いで3時間ほどの自然豊かな山あいの町。広い庭つきの中古一戸建てを購入し、移住後は「野菜が美味しく育った」「空気が綺麗で毎日が楽しい」「ご近所も同世代が多くて気が合う」と、両親からの電話も弾んでいました。トシヤさん夫婦の2人合わせた年金収入は月24万円あり、悠々自適のセカンドライフを満喫しているように見えます。
マナミさんも、両親が移住するまで義実家も実家も都内だったため、自分の子どもたちの夏休みに子どもを連れて両親のもとへ遊びにいくことができ、子どもたちに自然に触れ合う機会を持たせることができたと喜びました。ときには家庭菜園で採れた大量の野菜を送ってもらい、「お父さんとお母さんは、本当に地方移住してよかったな」と思っていたのです。
15年後の緊急SOS
ところが、両親が80歳を迎えた今年、事態は急変します。ここ2年、子どもたちの高校受験と大学受験が立て続けにあり、両親の移住先へは訪れることができないでいたタイミングでのことです。平日昼間、仕事中のマナミさんのスマホにトクコさんから震える声で電話が入りました。
「マナミ、お願い……助けて! お父さんが……もうどうしていいかわからないの!」
パニックになる母をなんとか宥め、マナミさんは会社に頭を下げて新幹線に飛び乗り、両親の家へ急行。駆けつけたマナミさんが目にしたのは、衝撃の光景でした。
荒れ果てて雑草が鬱蒼と茂る庭。玄関を開けると、足の踏み場もないほど積み上がった通販のダンボールとゴミの山。そして居間には、真夏だというのにエアコンもつけず、ボロボロの布団に横たわる痩せこけた父・トシヤさんの姿がありました。
実は2年前、トシヤさんが車の運転免許を自主返納したことで生活が一変していたのです。最寄りのスーパーや病院まで車で20分かかる立地だったため、一気に買い物が困難になり、日用品や食料品を通販に頼るようになりました。しかし、徐々に認知機能が低下したトシヤさんは同じものを大量に注文して放置。さらに、屋根の雨漏りやボイラーの故障が発生したものの、修繕費を出す余裕がなくなり、壊れたまま放置されていたのです。
月24万円の年金で十分暮らせていたはずが、日用品や食料品を通販にしたことによる生活費がかさみ、自家用車の維持費や家屋の老朽化による突発的な修繕費が追い打ちをかけ、蓄えは底をついていました。近所の方も、トシヤさんたちとともに高齢化しているため、頼ることもできず、夫婦共倒れ寸前まで追い詰められていたのです。
「こんなことになるなら、都心近くに住み続けてもらえばよかった……」
衰弱した両親を前に、マナミさんは呆然と立ち尽くすしかありませんでした。
高齢期の「地方移住」に潜むリスク
国土交通省「令和5年度 高齢社会基本意識調査(高齢期の住み替えについて)」によると、高齢期における住み替え先に求める条件として、買い物や医療機関へのアクセスのよさが非常に高く重視されています。
移住当初には魅力的で解放感にあふれて見えた「静かで自然豊かな環境」も、年齢を重ねて身体機能や運転能力が低下するにつれ、買い出しや通院が困難になるという重大な「不便さ」へと変化します。移住を検討する際は、80代以降に車に乗れなくなった場合でも生活が成り立つインフラがあるかを事前に確認することが不可欠です。
また、「年金月24万円あれば地方なら余裕」という油断も落とし穴となりました。総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円となっており、平均で毎月約4.2万円の不足が生じる計算になります。
トシヤさん夫婦の場合、年金額自体は平均より高め(月24万円)であったものの、地方特有の自家用車関連費用(ガソリン代・車検・保険等)や、戸建て住宅の突発的な修繕費用が重なったことで、計画以上に貯蓄を取り崩すこととなりました。
こうした地方移住の失敗を防ぎ、老後を安全に過ごすためには、健康な「60代・70代の視点」ではなく、車に乗れなくなる「80代以降の生活導線」を逆算して移住先を選ぶ視点が欠かせません。徒歩圏内にスーパーやクリニックがあるか、コミュニティバスなどの公共交通機関が機能しているかなど、将来的な利便性を事前に確かめておく必要があります。
また、資金面においても、日々の生活費とは別に戸建て住宅の維持・修繕のための特別予算を確保しておくことが重要です。さらに、親が遠方に移住している場合、子世代は定期的な連絡を取り合うだけでなく、移住先の地域包括支援センターや民生委員といった公的支援窓口と事前につながりを持っておくことで、いざというときのリスクを大きく軽減することができます。
