かつては行列もできていたが…

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 ほんの数ヶ月前までは、雑貨店に“シール”が入荷すると、それを買い求める人が行列を作っていた。本来のターゲットである子供だけでなく大人もハマった結果、転売屋も多数出現。フリマサイトでは定価の何倍もの価格で取り引きされて社会問題になった。販売店には問い合わせの電話が相次ぎ、「シールを出せ!」などと店員が叱責されることもあったという。

 しかし、過熱したシールブームにもいよいよ陰りが見えてきたようだ。最近は、ブームを牽引した「ボンボンドロップシール」も普通に店頭に並ぶようになった。しかも、それ以外のシールに至っては在庫過多に陥り、値引き販売を行う店も相次いでいる。

 SNSではシールは完全に“オワコン”になってしまった--という意見もあるが、そう揶揄するのは転売屋だけかもしれない。店側は「これで本当に欲しい人に行き渡る」と歓迎しているようである。狂騒状態が続いたシールブームの今を取材した。【取材・文=宮原多可志】

【写真】供給過剰? 店頭で“叩き売り”にされているシールたち

シールを求めて行列ができていたが

 今年の夏ごろからSNSでは、家電量販店や雑貨店でシールがとんでもない安値で叩き売られている、という報告を目にするようになった。そこで、筆者が埼玉県内や都内の雑貨店に行ってみると、一時期は滅多に目にすることがなかったシールが当たり前のように並んでいたので驚いた。

かつては行列もできていたが…

 最近になってスーパーマーケットに普通に並ぶようになったコメと同様に、「今までは、いったいどこにあったんだろう」と首をかしげてしまうほど、シールがずらりと並んでいる。しかも割引の値札が貼られ、完全に投げ売り状態だ(この点もスーパーのコメと同じ現象が起こっている)。

 なかには、定価500円のシールが100円にまで値下げされている例も見られた。店員に話を聞いてみると、「以前は電話で毎日のように在庫の問い合わせがあったものの、それもなくなり、ブームは落ち着いたと思います」「人気キャラクターのシールも今なら買えますよ」というコメントが返ってきた。

 ある玩具店では、シールが大量かつ大幅割引で売られていた。100円、200円台のものも多く、小遣いで気軽に買える価格だが、子供たちは見向きもしなくなっていた。子供たちが熱視線を送っていたのは、映画も大ヒットしている「ちいかわ」のグッズ。昨年の今頃はシールを求めて売り場に行列ができていたと思うと、別世界に来たような感覚になってしまう。

あの人気シールも入手できる

 昨年に爆発的に巻き起こったシールブームの火付け役となったのが、ぷっくりとふくらんだ形状をした「ボンボンドロップシール」である。種類によってはフリマサイトで定価の数倍で取り引きされる事例が相次ぎ、子供たちのシール交換でも最上級の“レート”とみなされ、特別扱いされていたシールだ。

 長らく品薄状態が続いたボンボンドロップシールも増産が行われたこともあって、今では店頭に並ぶようになっている。実際、筆者も大量に入荷している店を目にしたし、なかには希少価値が高かったサンリオキャラクターなどのシールもあった。争奪戦のような事態は起こらなくなっている印象を受ける。

 しかし、シールの人気が完全にオワコン化したのかというと、決してそうではないだろう。人気自体は、陰りが見えてきたとはいえ健在と思われる。現在も上映中の「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」では、来場者特典としてボンボンドロップシールをつけたところ、ファンが殺到、瞬く間になくなってしまったほどであった。

 そうした希少価値があるシールは、まだまだフリマサイトではプレミア価格で取り引きされているものの、あらゆるシールが入手困難だった昨年と比べたら隔世の感がある。シールが“本当に欲しい”人のもとに届くようになった今の状態こそが健全であり、これまでが異常だったといえるだろう。

儲かったのは転売屋だけ

 今回の取材で話を聞いた量販店の店員は、「シールが手に入りやすく、売りやすくなったことは歓迎」と話す。というのも、シールはもともと薄利多売の商品であり、大量に販売してもそれほど利益があるわけではないからだそうである。そのため、店側がブームで得た利益は、販売点数の割には決して大きくないとされる。

 ブームで儲かったのは、店頭でシールを買い占めて定価の数倍で売りさばいた転売屋くらいだろう。その転売屋が殺到したために店側は転売対策を強いられ、行列を整理するために人員を割く羽目になった。以前は、「シールブームは早く収束してほしい」と口にする店員がいたというが、それだけ苦労が絶えなかったのだろう。

 現在、雑貨の界隈では“スクイーズ”のブームがひそかに起こっているようだが、シールほどの盛り上がりにはなっていないようだ。ブームが起こるのはいいことだろう。しかし、昨今のブームは店側にとって負担が大きく、横流しする転売屋ばかりが儲かる構図になることが多い。「頼むから、うちで売っている品物がブームにならないでほしい」という店主が少なくないというのも、頷ける話である。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部