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散歩中のトイプードルを別の飼い犬にかみ殺されたとして、飼い主が相手の飼い主に損害賠償を求めた裁判で、神戸地裁姫路支部が8月18日に、相手の飼い主に約35万5千円の支払いを命じたことが報じられました。

報道によると、原告は2023年5月、姫路市内をトイプードルと散歩していたところ、中型犬がハーネスをすり抜けて飛びかかって噛みつき、トイプードルは翌日に死亡したそうです。

原告は、慰謝料や治療など332万円を求めていましたが、判決で認められたのは約1割ということになります。ネット上では「低すぎる」などの声がありますが、どうしてこうした判決になったのでしょうか。簡単に解説します。

●犬は法律上「物」と扱われる

法律上、犬は「物」(民法85条)として扱われます。物が壊されたときの賠償は、原則としてその「時価」です。

ここでの「時価」とは、買った時の金額ではありません。

犬の場合、事故が起きた直前の段階で「同じ種類・同じ年齢・同等の状態のペット市場で買い直すとしたらいくらになるか」という金額を指します。

飼い主としては腹立たしいことですが、年数が経った犬は法的には価値が減少した扱い(いわば「中古」の扱い)になるため、買った時の金額すら支払ってもらえないことになります。

慰謝料は認められ、額も上がってきた

一般に、物が壊された場合の損害賠償では、慰謝料は請求できないのが原則です。通常は、物の時価を賠償すれば、持ち主の精神的な苦痛も埋め合わされたとみるからです。

しかし、ペットについては、裁判所は、この結論をとっていません。家族同然に飼われていた場合には、例外として飼い主自身の慰謝料を認めてきました(民法710条)。

また、普通の「物」は、中古になると価値が下がっていきますが、ペットについてはそう考えない裁判例もあります。

たとえば、18歳の猫が放し飼いの犬にかみ殺された事案では、「高齢で死期が近い」という理由での減額の主張は認められませんでした。飼い主の苦痛はむしろ飼育期間に比例して増える、という理由です(大阪地裁平成21年(2009年)2月12日判決)。

さらに、以前に比べれば、金額そのものも上がっているといえます。古い裁判例では、シェパードに飼い猫をかみ殺された事案で、飼い主の夫婦がそれぞれ1万円、合わせて2万円(東京地裁昭和36年(1961年)2月1日判決)という金額のものがあります。

いまは1人あたり10万~20万円台の例が多くなっているようです。

2024年3月には、動物病院で愛犬を失った医療過誤事案で、獣医師側に対する慰謝料として名古屋高裁が「1人50万円を下らない」として夫婦計100万円を認めたと報じられています。

ただ、それでも人間の死傷の場合等と比べれば安いことには変わりありません。「飼育動物の死傷に関する慰謝料については、一般に、人間の死傷と同等の金額を認めることはできない」と述べた裁判例もあります(横浜地裁平成18年(2006年)6月15日判決)。

●「安すぎる」という声は多い

今回認められた慰謝料は30万円だったそうですが、これは相場からすれば、高い方といえます。 とはいえ、「安すぎる」という声は多いでしょう。

人が亡くなった場合、損害賠償額には、働いていれば得られるはずだった収入と、命そのものへの慰謝料も含まれます。家庭で飼われている犬には、どちらもなく、残るのは治療費と火葬の費用、そして飼い主に対する慰謝料です。

個人的には、今後も、ペットに関する請求では損害賠償の金額が上がっていくのではないかと思いますが、桁が変わるほどの上昇というのは難しそうです。

小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士