(※写真はイメージです/PIXTA)

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「管理組合の役員決めが不要になる」と、投資用マンションで導入が急増している「第三者管理」。しかし、管理会社に運用を丸投げした結果、オーナーの知らないところで「工事の出来レース」や「不透明な費用値上げ」が強行され、手遅れになってしまうトラブルが相次いでいます。HABANERO代表のマンション管理コンサルタント・幅祐斗氏が、53歳サラリーマン大家の事例を通して、業界の隠語「アテミツ」の実態と「第三者管理」の構造的リスク、そして自衛のための防衛策について解説します。※個人情報保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

「役員不要で楽ですよ」甘い言葉を鵜呑みに、同意した1枚の書類

都内の大手機械メーカーに勤めるBさん(53歳)は、妻と大学生の子ども2人を養う会社員です。年収は850万円で、給与収入のほかに、老後の「私的年金」代わりにしたいと購入した、中古の投資用ワンルームマンションを1部屋所有しており、家賃収入があります。

ある日、管理会社から1枚の案内が届きました。

「管理会社が理事長業務を代行する『第三者管理』へ移行します。役員に選ばれる負担は一切ありません」

本業が忙しいBさんにとって、運用で最大の不安は「管理組合の役員(理事長など)が回ってくること」でした。「住んでもいないのに、役員を押し付けられたら困る」と思っていたのです。

「役員をしなくていいなんて楽だなあ」

Bさんは、深く考えず同意することにしました。

管理委託費100万円超の値上げ…総会資料に覚えた“違和感”

しかし、その後届いた総会資料を目にしたBさんは、違和感を覚えます。

資料には「大規模修繕工事の施工会社選定」として、以下の相見積もりが記載されていました。

・A管理会社:5,100万円

・B建設会社:5,300万円

・C工事会社:5,900万円

管理会社は「最も安い当社にて受注します」というものの、Bさんは5,000万円超の大金に「本当に妥当なのか?」と直感的に不安を抱きました。

さらに総会では、「物価高騰」を理由に管理委託費(管理会社に払う費用)の値上げ案も提出されていました。「月々〇〇円の上昇」と項目ごとに分割してあり、一見すると数字は小さく見えたものの、合計すると年間で100万円以上も跳ね上がっていたのです。

「このまま任せきりで大丈夫なのか?」と疑問を持ったBさんは、筆者のもとへ相談に訪れました。

不透明な高額工事が“素通り”…第三者管理で相次ぐ「アテミツ」

持ち込まれた資料を筆者が精査したところ、案の定、工事金額は相場より明らかに高額でした。

さらに、これまで6,000棟以上の総会資料を精査してきた筆者が、このA管理会社の傾向を調べると、驚くべき事実が判明します。同社が管理するほかのマンションでもまったく同じ相見積もりが行われ、例外なくA管理会社が工事を受注していたのです。

このカラクリを元管理会社社員の知人たちに確認すると、皆が口を揃えてこういいました。

「それは出来レースの見積もりです。業界では『アテミツ(当て見積もり)』と呼びます」

アテミツとは、自社が受注したい金額をあらかじめ設定し、それが安く見えるよう協力他社へさらに高額な見積もりを作ってもらう行為のことをいいます。管理会社自身が他の見積もり会社を選定し比較する立場にあるため、自社が負ける結果を提示するはずがありません。

昨今、マンション修繕工事の談合がニュースになりますが、第三者管理の投資用物件ではこうした構造が日常茶飯事です。

本来、居住者がいない物件においてプロが管理を担う「第三者管理」自体は、合理的な仕組みです。しかし「監視の目」がない場合、利益相反によって不透明な高額工事がそのまま通ってしまいます。

管理委託費の値上げも同様で、「年間100万円」とは書かず「月額数千円〜数万円」と小分けにすることで数字を小さく錯覚させ、相場を知らないオーナーに「物価高だし普通か」と納得させてしまうのです。

そして最も恐ろしいのは、一度「第三者管理」に変更すると、ほとんどの場合、もとの理事会方式には戻せない点です。管理会社にとってウハウハな環境を自ら手放すわけがなく、彼らから「もとに戻しましょう」と言い出す確率はほぼ0%です。

管理会社の言いなりにならない!資産を守る「3つの防衛策」

相談を受けた筆者は、管理会社に任せず組合側として独自に信頼できる外部業者から相見積もりを取得。適正相場を割り出して突きつけることで、不自然に上乗せされていた修繕費用を大幅に削減させることに成功しました。

「役員不要で楽」という甘い言葉の裏には、巨大なリスクが隠されています。管理会社の言いなりにならず、資産を守るための3つの防衛策をお伝えします。

1.安易に第三者管理へ移行させない

「役員をしなくていいから楽」というメリットだけに目を奪われてはいけません。前述のとおり、一度移行するともとの体制に戻すのは至難の業です。自分たちのチェック権限を失うリスクを考え、安易に可決させない姿勢が重要です。

2.すでに第三者管理が導入されてしまっても…諦めず、総会で自ら声を届ける

せきりにすることが管理会社の暴走を許す最大の要因です。すでに第三者管理になっている物件であっても、総会会場へ足を運び、不透明な議案や高額な工事に対して疑問の声を上げることが抑止力になります。

3.人任せにせず自ら役員に立候補し、管理の主導権を握る

最も有力な自衛策は、オーナー自身が主体性を持つことです。自ら役員に立候補して管理組合の意思決定に関わり続けることで、管理会社の言いなりを防ぎ、健全な組合運営を維持することができます。

不動産投資は買ったら終わりではなく、管理の主導権を誰が握るかが勝負です。甘い誘い文句に惑わされず、オーナー自身が賢い「監視の目」を持つことこそが、自らの資産を守り抜く防衛策といえるでしょう。

幅 祐斗

HABANERO代表

マンション管理コンサルタント

宅地建物取引士