中国企業のMoonshot AIは日本時間の2026年7月17日に高性能AIモデル「Kimi K3」をリリースしました。このKimi K3について、ホワイトハウス科学技術政策局のマイケル・クラツィオス局長が「AnthropicのClaude Fableを蒸留したという情報をつかんだ」と発表しました。





Kimi K3は一部のベンチマークテストでGPT-5.6 SolやClaude Fable 5を上回るスコアを記録した高性能モデルです。すでにチャットAIサービスの「Kimi.com」やAPI経由での利用が可能となっているほか、2026年7月27日にオープンモデル化することも予告されています。

GPT-5.6 Solに匹敵する中国製AIモデル「Kimi K3」が登場、2.8兆パラメーターの超大型オープンモデル - GIGAZINE



そんなKimi K3について、クラツィオス氏は日本時間の2026年7月22日23時16分に「我々はMoonshot AIがKimi K3の開発のためにAnthropicのClaude Fableを蒸留したという情報を入手した」とXに投稿しました。「蒸留」とはAIモデルの知識を抽出して別のAIモデルに学習させる手法のことです。

ラツィオス氏によると、Moonshot AIはアメリカ製AIモデルに対する大規模な蒸留を実施するための「洗練された内部プラットフォーム」を開発しており、蒸留検知システムを回避するためにアクセスを高速切替していたとのこと。また、中国政府が課しているアメリカ製高性能AIチップの輸入禁止措置を回避するためにタイにGB300搭載サーバーを設置しているとも指摘しています。

Anthropicは以前から中国企業による蒸留攻撃の存在を公表しており、2026年2月には蒸留を実行している企業として「Moonshot AI」「DeepSeek」「MiniMax」の名前を挙げていました。

Anthropicが「中国AI企業のDeepSeek・Moonshot・MiniMaxは不正にClaudeの能力を抽出している」と非難 - GIGAZINE



Anthropicの公共政策部門を率いるサラ・ヘック氏はクラツィオス氏の投稿に反応して「不正な敵対的蒸留攻撃は知的財産の盗用であり、軍事能力およびインテリジェンス能力を支援する産業スパイ活動です。中国企業による蒸留攻撃はアメリカと同盟国にとって深刻な国家安全保障上のリスクを生み出します。我々は蒸留攻撃への対策を強化し、当局や議会と強力してアメリカのAIリーダーシップの維持に努めます」とコメントしています。





また、スコット・ベッセント財務長官は「我々はオープンソースAIモデルとそれがもたらすイノベーションを支持します。しかし、オープンソースはアメリカの知的財産に対する無法地帯ではありません。中国企業が産業規模の蒸留攻撃を実施して知的財産を盗用した場合、制裁とエンティティリスト登録の検討対象となります」と述べています。





一方で、OpenAIの戦略責任者であるディーン・ボール氏はKimi K3発表直後の2026年7月18日に「Kimi K3は素晴らしいモデルであり、蒸留やその他の要因で簡単に説明できるものではないと考えます」「中国政府の潜在的リスクを考慮しても、中国企業がKimi K3のような優れたモデルをオープンモデルとして公開し続けていることに個人的に驚いています」と述べ、Moonshot AIを擁護する立場を示しています。





また、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2026年7月14日にニュースサイト「Axios」のインタビューに応じて「中国製AIモデルは素晴らしいです」「優れたオープンモデルは活用されるべきです」「オープンモデルはAI市場の拡大に寄与します。一方で、多くのユーザーはクローズドモデルの利便性・信頼性・パフォーマンスを支持して使用料金を支払うでしょう」と語り、中国製オープンモデルのリスクに対して楽観的な姿勢を見せています。

Nvidia's Jensen Huang defends Chinese AI amid Kimi panic - YouTube

なお、AnthropicはQwenシリーズを開発するAlibabaに対しても蒸留攻撃の存在を指摘して非難しています。

AnthropicがAlibabaを「蒸留攻撃」で非難、Claudeに2880万回以上のアクセスか - GIGAZINE