随所に激しい攻防が繰り広げられたW杯決勝。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 救いようのない展開に見える試合には、フェラン・トーレスのように雑音や批判に動じない粘り強いフットボール選手が必要となる。先発でも控えでもなく、その間を行き来し、常に裏への抜け出しを狙っている彼は、ゴール前でミスと成功を交互に繰り返すスナイパーとして、まさにワールドカップのタイトルが懸かった日に決定的な仕事をした。2010年のイニエスタと同じく、16年後にフェランが得点を記録し、スペインはニ度目の世界王者に輝いた。

 スペインの勝利を疑う者はおらず、アルゼンチンもまた敗北を認めざるを得なかった。スペインはこれまで以上に質の高いフットボールを披露し、途切れることのないエネルギーと熱狂的なサポーターに支えられて、忍耐力と競争力を武器にここまで勝ち上がってきたアルゼンチンを静かに追い詰め、ついに屈服させた。

 その圧倒的な優勢の前に、メッシの存在感は試合終了間際までほぼ皆無だった。ロドリに牽引されたスペインが攻勢を強める中、メッシもヤマルも試合の展開から孤立していた。

 延長戦に及んだ理由は、攻撃の厚みの割にスペインが決定力を欠いた点にある。選手交代のカードが切られるたびにスペインの優位性は増し、逆にアルゼンチンは負傷者の発生やエンソ・フェルナンデスの退場によって劣勢へと追い込まれた。その厳しい極限状態において、チームの抵抗力を維持させたのはGKディブ・マルティネスの存在であった。

 その絶対守護神の老練さと主審の判定によりアルゼンチンは命拾いをしたが、後半に途中出場し、巧みなゲームメイクを見せたペドリも加わり、試合は引き続きスペインのペースで進んだ。デ・ラ・フエンテ監督の交代策はこの日も冴え渡った。そのひとりのフェランは、パリ・サンジェルマンのルイス・エンリケ監督が獲得に関心を示し、去就が取り沙汰されている中で、決勝ゴールを決めてヒーローになった。
 
  アルゼンチンは絶望的な状況に強く、耐えることこそが勝利だと信じてピッチに立っていた。ヤマルがGKと1対1になった決定機を外すなか、メッシはボールに触れずとも視線だけで展開をコントロールしようと試み、バイタルエリアで受ける頻度がいくらか増えると一時的にチームを押し上げた。

 しかし、スペインのコレクティブなプレスがメッシを遮断し、ロドリの支配とオルモのライン間でボールを受ける動きが再び試合の主導権をスペインへと傾けさせた。アルゼンチンにとっては前半終了間際のリサンドロ・マルティネスの負傷退場も少なくない痛手となった。

 スカローニ監督は後半頭からパレデスを投入してメッシを活かす術を見出そうと試みたが、交代策を活かしたのはスペインだった。

 流れるような連携を見せながら決定力を欠いていたデ・ラ・フエンテが出した回答はフェランの投入であり、彼の一撃が土壇場で勝負を決定づけた。デ・ラ・フエンテとともにアンダーカテゴリーで代表でのキャリアをスタートさせた面々が軸となったチームが、無力感に包まれたメッシとアルゼンチンを退け、ニューヨークで再び世界の頂点に立った。

取材・文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

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