総資産は数億円とみられる(C)日刊ゲンダイ

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 第二電電(現KDDI)を共同創業した千本倖生氏(83)が贈与した法人株を巡り、同氏の子供4人が東京国税局などの税務調査を受け、2024年に計約7億5000万円の申告漏れを指摘されていたことが9日、明らかになった。

 4人は千本氏の長女、長男、次男、次女で、いずれも処分を不服として国税不服審判所に審査請求したが、25年4月に棄却された。「贈与税を算出した際、法人株の価値を決める所有不動産の評価額が著しく低いと判断されたようだ」(金融関係者)という。無申告加算税などを含む追徴税額は計約1億7000万円に上る。

 贈与の経緯は次のようなものだ。千本氏は13年から17年に東京都内に法人3社を設立した。3社は銀行の融資を受けるなどし、新宿区、港区、中央区のマンションを1棟ずつ、計3棟を総額約40億円で購入した。その後、17年から20年に、千本氏は3社の株を4人に贈与した。

 ただ、「贈与の際、4人は3社の主要資産であるマンション3棟について、路線価や固定資産税評価額をもとに計約8億円と評価。銀行からの借入金を差し引き、贈与税をいずれも0円と算出した」(同)という。

 相続税や贈与税に関する国税庁の基本通達では、土地や建物は原則、公示地価の8割が目安の路線価などに基づいて価格を評価される。ただ、取得から3年経過する前に贈与する場合は、取得価格で評価するとの定めがある。

 今回の3棟はいずれも評価額が低くなりやすい3年経過後まもない時期に法人株が贈与されていたことなどから、国税当局は評価額を「著しく不適当」と判断したようだ。

 その場合は国税当局が再評価するという同通達の例外規定を適用し、周辺相場などから3棟で計約34億円と算出し直したというわけだ。

 千本氏は日本電信電話公社(現NTT)出身で、1984年に41歳の若さで、稲盛和夫氏らとともに第二電電を創業。

 90年代後半には、インターネットが急速に普及し始めたことからADSLの回線卸を業とするイー・アクセスを創業(99年)。04年には当時の最速記録となる創業5年での東証1部上場を達成した。

 05年には、新規参入の携帯電話会社イー・モバイルを創業。12年10月、株式交換によりイー・アクセスはソフトバンクと合併を発表した。15年からは再生エネルギーのレノバ会長に就いている。また、17年9月に公益財団法人千本財団を設立、代表理事を務める。

 今年6月23日の日産自動車の株主総会では、日産株を27万株保有する投資家として登場。「日産の時価総額はトヨタの40分の1。日産を経営するCEOとしては不適切だ」と議長を務めるイバン・エスピノーサ社長兼CEOに詰め寄る一幕もあった。

 千本氏の総資産は数百億円とみられている。今回の生前贈与はその一端にすぎないだろう。

 国税庁は、26年度の税制改正大綱では、賃貸用不動産を購入から5年以内に相続・贈与する場合、原則として市場価格で評価することを盛り込んだ。また、非上場企業株の相続・贈与についても国税庁が今春に有識者会議を設置し、評価のあり方を議論している。

「超がつく資産家の千本氏から追徴することで、過度な節税、課税逃れにブレーキをかける国税の意図を感じる」(メガバンク幹部)という。千本氏はスケープゴートに仕立て上げられた格好だ。

(森岡英樹/経済ジャーナリスト)