久保建英でも、堂安律でも、上田綺世でもない…城彰二が「実力の30%しか出せていない」と厳しく評価した日本代表の“意外な選手”とは?《オランダ戦》
サッカー日本代表は15日、ワールドカップ北中米大会の1次リーグ初戦で強豪オランダと対戦。2-2の引き分けに終わった。
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元日本代表で、現在はサッカー解説者として活躍する城彰二氏は、この試合をどう見たのか。話を聞いた。

サッカー日本代表 ©JMPA
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「勝ち点3の価値に等しいぐらいの重み」オランダ戦の引き分けを評価
――W杯初戦のオランダ戦は、2-2のドローに終わりました。
城 いやぁ、まさか追いつけると思わなかった。2-1に突き放された時には、ちょっと今回は難しいかなと思ったけど、よく追いついた。初戦でオランダ相手に勝ち点1はすごく大きい。勝ち点3の価値に等しいぐらいの重みがありますね。
――試合は後半に動きましたが、オランダの圧力がすごかったですね。
城 後半は、オランダが点取りに来るだろうなっていうのは、ある程度予測出来ていたと思います。縦パスをどんどん入れて来て、それが繋がるようになった。その流れがあって、セットプレーを与えてしまった。ファンダイクには完全に高さで負けていたね。
渡辺(剛)が押されたとアピールしていたけど、少し相手を離してしまった。でも、選手たちから不安とか動揺はまったく感じられなかった。そこは経験値が増えてメンタル的に動じなくなったんだなぁと頼もしく思いました。
――その6分後の後半12分に中村敬斗選手が同点ゴールを決めました。
城 あれは、久保(建英)がよかった。右から左サイドに流れて相手DF陣をふたり引き付けて、うしろの中村に出したが、よく見えているなと思った。中村もボールをもらって、股抜きシュートで決めましたね。仕掛けにいったタイミングで、もうニアをぶち抜こうという意図があったと思います。
あのシュートは体のキレがないと打てないですし、ニアサイドに決めるのは、パンチ力がないと難しい。シュートのタイミングもちょっとズラしているので、GKは前のDFがブラインドになって見えていなかった。中村の技術の高さが出たシュートでした。このゴールが、この試合の大きなポイントのひとつになったと思います。
「日本の力は本物だな」オランダ戦で日本の強さを実感したワケ
――中村の同点弾がこの試合のポイントになったのは、どんな理由からでしょうか。
城 すぐに追いついたということで、選手は「まだ追いつける」「自分たちもやれる」というのを実感したと思うんです。その後、日本のリズムが良くなり、流れが変わった。中村の同点ゴールは日本に非常に大きなインパクトを与えたと思います。
――いい流れを掴みかけましたが、7分後の後半19分にオランダに再び決められてしまいます。
城 日本は、同点に追いついて、一息ついてしまったというか、ディフェンスラインが下がってしまった。サマービルのシュートも1人しかプレッシャーに行けていないし、逆にうしろに選手が固まってしまった。そういう隙を作ってしまうと決めてくるのが世界です。日本は、この失点で、この試合は難しくなったというのを感じたと思います。
――後半43分、再び日本が追いつきます。
城 小川(航基)のヘディングが鎌田(大地)に当たって入ったけど、これはヘディングのタイミングの取り方がうまい小川の良さが出たプレーだと思います。あのギリギリの時間帯で得点に繋がるヘディングができるのは、やっぱり独特の得点感覚がある。
実際、オランダ戦でも先日のアイスランド戦でもヘディングでゴールを取っているので。ただ、あのまま鎌田に触れずにいたらGKに取られたと思うので、2人で決めた感じですね。
このゴールは、非常に大きかった。これまでの日本だと2-1のままで終わっていたと思うけど、再度、追いついた。ほんとに強いなぁって思うし、力があるなって感じた。日本の力は本物だなって思いましたね。
「冷静に相手の意図を読んで手を打った」森保監督の采配に好印象
――日本が勝ち点1を獲得し、オランダが勝ち切れなかったのは、どういうところに要因があったと思いますか。
城 大きかったのはベンチワークでしょう。オランダは後半25分に3人入れ替えた時、守って逃げ切る方向にシフトした。逆に日本は、伊東(純也)を最初に出した後、森保さんはオランダの交代から5分後(後半30分)に3人を入れ替えた。これは、選手に1点取ってこいよというメッセージだったと思うんです。
堂安(律)に代えて菅原(由勢)を入れたのは「なぜ?」と思った人が多いと思うけど、相手が下がって5バック気味になったので精度の高いクロスを早めに入れてほしいという意図があったと思います。
菅原はアイスランド戦でも高い位置から質の高いクロスを入れて、小川のゴールをアシストしていたので。伊東との連携も良かったし、このセットは今後も使えると思いますね。
――4年前の森保監督と比較して、何か違いを感じたりしましたか。
城 カードの切り方は、非常に落ち着いていましたし、相変わらず持っているなと思いました。オランダが先に切った後、すぐに対応するのかなって思ったけど、冷静に試合の流れを見て、その5分後に一気に3枚替えをした。
前回大会も交代カードで流れを変えて、ドイツやスペインに勝った。今回も伊東や菅原、小川を入れる交代が機能したのを考えると、冷静に相手の意図を読んで手を打つところ、流れを持っていくところは持っているなと思います。
「いつもの30%しか実力を出せていなかった」と感じた“意外な選手”
――この試合のマンオブザマッチは誰になりますか。
城 中村でしょう。同点ゴールは値千金だった。早い時間に追いつけたことが結果的に勝ち点1に繋がった。あのゴールがなければ2-0になっていたので、そういう意味でも非常に価値があった。
ゴール以外のプレーでも相手の脅威になっていたので、三笘(薫)の不在を感じさせない動きを見せてくれたと思います。
一方で、もうひとつだったのが鎌田(大地)です。ポジション的にあまりプレッシャーがなかったし、普段の鎌田なら間で受けて縦にいいボールを付けられたと思うけど、そういうシーンがあまりなかった。
歩いている時間も多く、今日はいつもの鎌田の30%ぐらいしか実力を出せていなかったと思います。
――途中、交代した久保選手が少し心配ですね。
城 久保は大丈夫かな……心配ですよね。相手の膝が久保の膝上に入って、相当痛そうだったし、膝の皿を持ち上げるような仕草をしていたので、ちょっと怖い。何もなければいいけど、下手すれば重度の怪我になっているんじゃないかな。
そうなると日本にとっては、非常に痛い。三笘、南野拓実と攻撃の軸となる枚数が少ないなか、さらに人がいなくなると交代カードも含めて、難しい戦いを強いられることになるので。
「中盤がどう攻撃を組み立てていくのか」チュニジア戦のポイントは?
――初戦で勝ち点1を獲得しました。グループリーグ突破の可能性は、かなり高まったという感じでしょうか。
城 グループ内、最強のオランダ相手に勝ち点1を獲れたので、グループリーグ突破はまず間違いないでしょう。これからは、1位通過なのか、2位通過なのかというところがフォーカスされてくると思います。
決勝トーナメント1回戦の相手はブラジルか、モロッコになると予想されていますが、どちらも相当に難しい試合になるでしょう。
特にモロッコは想像以上に強い。初戦は1-1の引き分けでしたが、モロッコの攻勢をブラジルがなんとか凌いだみたいな展開だった。今ならモロッコよりブラジルとの対戦の方が日本にとっては良さそうな気がします。
――次は、チュニジア戦になります。前回大会、日本代表は初戦のドイツに勝って、2戦目のコスタリカ戦に敗れています。難しい2戦目、どんな試合になるでしょうか。
城 チュニジア戦は、日本が主導権を握れる時間が多くなると思うので、引いた相手をどう崩していくのかが最大のテーマになります。仕掛ける選手、2列目の選手がどう打開していくのか、中盤がどう攻撃を組み立てていくのかがポイントになります。
オランダ戦で堂安や久保が見せたように逆サイドまで行って相手を混乱させる、あるいは長いランニングや横幅を使って崩していくとか、個の突破、連携という部分での崩しが重要になってくると思います。
――チュニジアは、初戦のスウェーデン戦に大敗しましたが、カウンターは脅威ですね。
城 チュニジアは、日本を格上と見て、試合に臨んでくると思うので、安易に攻め急いでカウンターを喰らうと失点する可能性が高い。日本は攻めながらも常にリスクマネジメントをしないといけないでしょう。とにかく前掛かりにいって相手にハメられて、カウンターでやられるのは一番避けたい。
そういう意味で、チュニジア戦で大事になってくるのが、ボランチ。鎌田が中盤で攻守の軸になるので、彼の出来がポイントになる。コンディションが上がらない場合は田中碧の出番の可能性もありますが、本来の鎌田ならチュニジアの守備網を切り裂いていけるので、期待したいですね。
取材・文=佐藤俊
(佐藤 俊,城 彰二)
