世界最高GKと名高いブッフォンが10日、セリエBの選手相手にまさかのハットトリックを喫した。セリエB第27節ブレーシャ対ユベントスの1戦はMFマッテオ・セラフィーニ(28)の3発によりブレーシャが首位ユベントスを3−1で撃破。試合後、ユベントス主将デル・ピエロは偉業を達成したセラフィーニを「マラドーナのようだった」と絶賛、翌日の現地紙は今まで無名の存在だった彼を大々的に取り上げた。

誰もが目を疑った。キックオフ直後の4分、ハーフウェイライン手前でパスを受けたセラフィーニは約20mのドリブル突破から右足を大きく振り抜いた。「ブッフォンが前に出ているのが見えた」と冷静に振り返るシュートは約35mの弧を描き、慌てて戻るブッフォンを置き去りにネットを揺らした。デル・ピエロの同点弾によりスタジアムに漂い始めた静寂を同21分、セラフィーニが突然切り裂いた。エリア内に上がったセラフィーニは右からのクロスに迷わずオーバーヘッド。「完璧なタイミング」とデル・ピエロが脱帽したオーバーヘッドはエリア内にいた7人の相手選手を一瞬麻痺させ、ネットに突き刺さった。偉業は前半ロスタイムに達成された。相手の執拗なマークにぶち切れたセラフィーニは相手DFゼビナからボールを奪うとエリア外正面約25mから右足一閃。強烈な一発が決まり、前半だけでハットトリックを成し遂げた。

「ユベントス相手の1得点は10得点の意味を持つ」と言われるイタリアで、ハットトリックを達成したセラフィーニを現地メディアも大々的に取り上げた。翌日付の現地紙には「この天才は誰だ?」「セラフィーニがユーベを止める」などの見出しが躍り、評点は「9=人生最高の試合。W杯王者のGK相手にファンタスティックな3発を」(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)、「9=ブッフォン相手に前半だけでトリプレッタ・・・」(コリエレ・デッロ・スポルト紙)と異例の高得点が付いた。

セラフィーニの3発により金星を挙げたブレーシャのコズミ監督は「もし我々の点取り屋ポッサンツィーニが出場停止処分を受けていなかったら、セラフィーニはピッチに立っていなかった。カルチョは時として思いがけないプレゼントを贈ってくれる」と相好を崩して語った。

「妻と、最近結婚したばかりの2人の友人に捧げる」3発。イタリア一のサポーター数を誇る名門ユベントスを沈めたセラフィーニ。だがこの日、試合終了を告げるホイッスルとともにスタジアム全体を覆い尽くしたのは盛大な拍手だけだった。

佐藤 貴洋