ドジャース・大谷翔平投手(30)がメジャー7年目にして初めてワールドチャンピオンに輝いた。打者に専念した今季は史上初の「50―50」(50本塁打&50盗塁)を達成するなど、歴史的な活躍。2年連続のMVP受賞も確実視されている。その足跡を、「世界一締め SHO撃1年」と題して全3回の最終回を掲載する。

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 昨年9月に受けた自身2度目の右肘手術の影響で打者専念となった今季。大谷は54本塁打、130打点でリーグ2冠に輝き、59盗塁で前人未到の「50―50」を達成した。DH専任で史上初のMVPは決定的。ワールドシリーズ(WS)も制覇し、一刀流で歴史的シーズンを送ったが、「ピッチングの日は独特の緊張感がある。恋しいといえば恋しい」と5月下旬には二刀流への思いを口にしていた。

 「投手・大谷」は3月25日(日本時間26日)に公の場では初めてキャッチボールを行った。シーズン中もリハビリの一環として2日に一度のペースで試合前に実施。8月20日(同21日)には2日連続キャッチボールを解禁し、24日(同25日)にブルペンで捕手を立たせた状態で10球を投じた。傾斜を使っての投球は1年ぶりのことだった。31日(同9月1日)には捕手を座らせ、最速92マイル(約148キロ)を計測。着実に階段を上がってきた。

 WS第2戦で左肩を亜脱臼した影響で、今後のスケジュールに狂いが生じることは間違いないが、同第1戦の試合前は約80メートルの遠投も披露していた。「来年の開幕を(二刀流で)もちろん目指してますし、(18年の)1回目の(右肘)手術に比べていいフィーリングを得ているので」。WS終了後には来年3月18、19日に東京D(カブス戦)で開幕する来季に向け、早くも想像を膨らませた。

 待ち望んでいるのは何もファンだけではない。MVPトリオのベッツも「投手・大谷」の復帰を楽しみにしている1人だ。5月にグラスノーとともに米メディア「ブリーチャー・リポート」の番組に出演した際には「(来季)彼が投げるのを本当に楽しみにしてるんだよね」と切り出した。「初めて投げる日は祝日になるよ」と言うと、グラスノーは「LAにはもう『大谷翔平の日(※)』があるのにね」と笑い飛ばした。

 大谷のリハビリを隣で見てきたヘッドアスレチックトレーナーのT・アルバート氏(45)は9月末の時点で「試合で投げることを10とした場合、7だね。70%のあたりまで来ている」と話していた。左肩の状態次第だが、すでに行っているブルペン投球を20回程度した後、実戦形式の登板などを経て試合でのマウンドに移行する。同氏は「何が起きるかは分からない」とした上で「(投手として来季)開幕に間に合うようプログラムを組んでいる」と見通しを示した。

 二刀流として復帰する25年は山本由伸投手(26)との「2本柱」でド軍の先発陣を支える。今季エースを務めたグラスノーら“ライバル”は多いが、開幕カードで大谷、山本がマウンドに上がる可能性もある。カブス・今永と投げ合い、鈴木との日本人対決も―。生まれ故郷の日本から再び全人類を魅了する。(おわり)

 ※ 米カリフォルニア州ロサンゼルス市は選手としての功績などをたたえ、5月17日(同18日)を「大谷翔平の日」と制定した。大谷は同日試合前にロサンゼルス市庁を訪れ、市議会で表彰を受けた。背番号にちなみ、大谷がドジャースで現役でいる間は「5・17」が「Shohei Ohtani Day」。制定記念日は本拠地・レッズ戦で13号2ランを放った。