また、永島騎手や今村騎手に限らず、伸び悩んでいる女性騎手も少なくない。有望株の一人、小林美駒騎手は先週末にケガから復帰したばかりで、同期の河原田菜々騎手は約3か月間も白星から遠ざかっている。

 古川奈穂騎手は今年の勝率が昨年比で半減。ルーキーの大江原比呂騎手は4勝を挙げているが、体重調整に苦労し、複数回の過怠金を科されている。菜七子元騎手に憧れてこの世界に入った女性騎手たちも、決して順調とはいえない状況だ。

◆女性騎手の特典“菜七子ルール”とは

 また、菜七子元騎手が残した功績の一つに、“菜七子ルール”と呼ばれる減量特典がある。女性騎手なら無条件で与えられるもので、デビュー時の4kg減から始まり、勝利数やキャリアに関係なく永久に2kg減が保証されるハンデのことである。

 かつてオーストラリアなどでも同じような減量特典の導入の動きがあったというが、女性騎手らが自ら反対し、今も男性騎手とハンデなしで戦っている。

 一方、日本では菜七子元騎手の人気が高まっていたこともあってか、2019年にこの新ルールを導入。斤量1kgは1馬身の差が生まれると言われるだけに、女性騎手にはかなり有利なルールになっていることは間違いない。

◆“菜七子ルール”が逆差別になる可能性も

 JRAではエージェント制の導入で、一部の有力騎手に有力馬の騎乗依頼が偏る傾向がある。今後、「女性だから乗せてもらっている」という穿った見方をする男性騎手が現れてもおかしくなく、“菜七子ルール”が逆差別になる可能性も否めない。

 菜七子元騎手の突然すぎる引退、菜七子ルール、そして減量失敗などの影響で女性騎手に逆風が吹き続くことになれば、再び女性騎手がJRAから姿を消す事態に直面してもおかしくないだろう。女性騎手自らが“ドミノ倒し”の危機を止められるか、今後の動向に注目したい。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。