セメドと競り合う三笘。(C)Getty Images

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 ブライトンのファビアン・ヒュルツェラー監督は10月26日に行なわれたプレミアリーグ第9節のウルバーハンプトン戦後、次のように述べている。

「プロフェッショナリズムが足りなかった」

 実際には、選手たちのプロ意識が欠けていると糾弾しているわけではない。試合終了間際の連続失点により勝てた試合を引き分けに持ち込まれたこと、つまり“詰めの甘さ”を指摘しているのである。

 その1週間前。シーガルズ(ブライトンの愛称)は敵地でニューカッスルを1−0で下している。厳しい戦いを制して勝点3を奪った際、指揮官は「今日は完ぺきではなかったが、結果を残した点が重要」と話した。

「ただすべての面で改善できると思う。結果は良かったが、パフォーマンスは及第点。しかしピッチ上の選手たちはともに苦しみながら、素晴らしい仕事をした」と振り返り、ある意味、真逆の言葉で選手たちをねぎらっていた。
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 同試合に途中出場した三笘薫もまた、「前半守りきって、やっぱりあの先制点も大きかったですし。最後は引きましたけど、守りきったのはよかったと思います。この試合を勝ち切ったのは大きい」と、嬉々とした表情でチームの好パフォーマンスを評価した。

 翻ってウルブス(ウルバーハンプトンの愛称)戦後、背番号22の口から出たのも、ヒュルツェラー監督と同様の言葉だった。

「終盤のプレーは見れば妥当な結果というか、甘さが出たと思います。けど、繰り返してるんで、これは良くないこと。(同じく2−2で引き分けた)ノッティンガム・フォレスト戦もそうですし、同じような形で繰り返しているんで、身につけないといけないっていうか...。最後の試合の終わり方っていうのは、チーム全員で若さも出てると思いますし、統一感もなかったかなと思います。集中力も足りなかったと思いますね」

 あまり抑揚を見せない三笘らしいサバサバとした語り口だったが、目の前にあった勝点3がするりと抜けていったことに対するフラストレーションを募らせているのは明らかだった。
 
 この日の三笘は1点リードしていた後半終了間際の89分までプレーし、フリオ・エンシソと交代してお役御免となった。おそらくこの際には、そのわずか1分前に失点を許して1点差に近づかれたものの、勝ちゲームをフイにするとは考えてもいなかっただろう。

 後半途中までのブライトンは、最下位に沈むウルブスを容赦なく攻め立て続けていたからだ。85分に追加点を奪って2−0としたわけだが、そのスコアライン以上にブライトン優勢の時間が長く感じられた。

 特にチームが攻撃的に振る舞い続けた前半は、三笘にもシュートチャンスが3度にわたり訪れている。まずは22分。中央に入り込んでドリブルで持ち込み、ペナルティエリア外から右足でゴールを狙うがDFにブロックされた。

 32分にはボックス内のこぼれ球に反応し、敵GKのジョゼ・サより一足先に追いついたものの、素早く飛び出してきたサに阻まれてしまう。さらにその1分後。今度は左サイドから持ち込んで角度のないところからの左足でのシュートを放つも、再びDFにブロックされてコーナーキックとなっている。
 
 これらの場面について、三笘は「なかなかいい形で、自分の中でもいい形で打ててないのはあるんで、ちょっともっといい形で自分で作りきればよかった。ああいう形になってしまうってのもまだまだかなと思いますけどね」と自身の決定力不足を反省していた。

 ほかにも、いつもどおり左サイドから再三チャンスメイクを試みる場面が見られたものの、その危険度は低かった。対峙したポルトガル代表DFネウソン・セメドが、過去に日本代表のエースに“チンチンにされた”経験を生かして、以前よりもタイトに張り付いていたこともあるが、直近のトッテナムとニューカッスル両試合で見せた躍動感には欠けていた。

「(セメド選手は)もともと素晴らしい選手だと思いますし、前回はチームとしてもより良い形で増やして攻略できたところはありました。今回は彼のスピードも攻撃的なところで出してしまったのもありますし、自分も1対1のとこで勝ち切れないところがあった。まあまあ妥当な結果だと思いますけど」
 
 悔しい言葉ばかりが目立ったが、落ち込んでいる暇はない。「試合はすぐに来るんで、逆に切り替えられるかなと思って」と本人が言うとおり、30日にはリーグカップが控え、本拠地のアメックススタジアムでリーグ戦で首位争いを繰り広げているリバプールを迎え撃つ。
 
「カップ戦も、相手は強豪ですし勝たないといけない。次の試合で勝てればよりリーグ戦にも繋がるかと思います」
 
 チームの主力を担う三笘は、おそらくこの試合はベンチからのスタートとなるはずだ。一方、直後の11月2日のリーグ戦、すなわち週末の敵地アンフィールドで再戦では、いつもどおりの先発起用が確実視される。

「(アルネ・スロット新監督の下でリバプールは)より戦術的になっていると思いますし、つなぐチームになっている。もちろんカウンターもありますけど、つなぐところもあると思う。楽しみですけど、 やっぱホームで勝たないといけないですし、ここで勝てばよりカップ戦でも勢いつくと思う。大事な一戦かなと思います」

 難敵との連戦となる今後4日間。三笘とブライトンはどのような形で今週を終えるのか。奮起に期待したい。

取材・文●松澤浩三