だいたひかるが罹患した細菌感染症「蜂窩織炎」とは 予防法・症状を医師が解説

写真拡大 (全4枚)

お笑い芸人のだいたひかるさん(49)が細菌感染症の一種である「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」に罹患したことを自身のブログで公表しました。39度と表示された体温計の画像をアップし、病院に連れて行ってもらったとのことです。

皮膚とその下の組織に細菌が感染することで炎症が起こる蜂窩織炎は、足のすねや甲、顔に起こることが多く、腫れや赤み、熱感などが出現して広がります。今回は、蜂窩織炎の症状や原因、受診科目や検査、治療や予防法などについて、医師の武井先生に解説していただきました。

≫【イラスト解説】全国で流行中の「手足口病」 症状・予防法とは

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

蜂窩織炎とは

蜂窩織炎とはどのような疾患でしょうか?

蜂窩織炎は蜂巣炎(ほうそうえん)ともいい、皮膚とその下の組織に細菌が感染することで炎症が起こる疾患です。黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌などの原因菌が皮下に入り込み、真皮深層から皮下組織・筋膜で炎症を起こします。
丹毒(たんどく)や伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん・いわゆる「とびひ」)と同様に、皮膚の細菌感染症の中でも一般的な疾患です。

蜂窩織炎の症状

蜂窩織炎はどのような症状が現れますか?

蜂窩織炎では、患部の皮膚が赤く腫れて熱感が出たり、ぶつぶつが出たりなどの症状が広がります。触ると痛むこともありますが、この痛みは細菌感染によるものと、細菌に対して免疫を攻撃することが原因と考えられます。
身体のどこにでも発生しますが、よく見られるのは顔や足のすねや甲です。発熱したり悪寒が出たり、倦怠感を伴ったりすることもよくあります。
同時に複数カ所に発生することはほとんどなく、人にうつることもありません。
治療が遅れると、リンパ節が腫れる、頭痛や発熱、悪寒や倦怠感などが現れる場合もあるため、早期の治療が求められます。

蜂窩織炎の原因

蜂窩織炎はどのような原因で患いますか?

蜂窩織炎は黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌が主な原因菌で、ほかにも原因となる細菌があります。これらの細菌が皮下に入り込み、真皮深層から皮下組織・筋膜で炎症を起こします。

黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌以外にはどのような細菌が原因になるのでしょうか?

大腸菌や嫌気性菌、インフルエンザウイルスなどが原因となることもあります。

細菌にはどのように感染しますか?

人間の皮膚は細菌などの異物が入りこまないようにガードしています。しかし、切り傷や刺し傷や引っかき傷、手術、やけど、水虫、アトピーやその他皮膚の疾患などで傷ができると、そこから細菌が侵入してしまうことがあります。
こういった細菌が皮下組織に侵入することで、細菌に感染してしまうのです。一方で先ほど解説したような傷がない場合でも、骨髄炎などがあると原因菌が皮下組織にも侵入して、蜂窩織炎になってしまうこともあります。

蜂窩織炎の受診科目

蜂窩織炎のような症状が現れたら、何科を受診すればいいでしょうか?

蜂窩織炎のような症状が現れたら、皮膚科を受診してください。特に顔や足のすねや甲などの皮膚が赤く腫れて熱感が出たり、ぶつぶつが出たり、痛みが出たりしたら、蜂窩織炎の可能性がありますので、できるだけ早く受診しましょう。
2日以内に急速に広がる恐れがあります。頭痛や発熱、悪寒や倦怠感などが現れたり、リンパ節が腫れて炎症が起きたりすることもありますので、早期に治療を開始しなければなりません。

蜂窩織炎の検査

蜂窩織炎が疑われる場合、どのような検査を受けますか?

基本的には病状や病歴の問診、患部の視診で診断されます。ただ、症状が重い場合は血液検査で白血球数を見たり、炎症反応の数値であるCRPを見たりします。
また、原因菌を特定するために培養検査を行うこともありますが、膿がない場合が多いため培養で細菌を検出することは困難です。
血液を用いた培養検査やグラム染色などの検査が行われることもありますが、原因菌の大半は黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌であるため、めったに行われません。

似た症状の疾患はありますか?

似た症状の疾患には、壊死性筋膜炎があります。皮下組織などで壊死を起こす感染症であり、死亡率が高いためとても危険です。蜂窩織炎のような症状が現れた場合、万が一壊死性筋膜炎という可能性もあるので、できるだけ早く医師の診察を受けることが重要です。

蜂窩織炎の治療

蜂窩織炎の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?

蜂窩織炎の治療は抗菌薬の服用が基本です。原因菌の大半は黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌であるため、どちらにも有効なジクロキサシリンやセファレキシンなどの抗菌薬が一般的に使われます。
抗菌薬によって、通常は数日で症状は治まっていきますが、いったん悪化することもあります。薬は必ず医師に処方されたものを使いましょう。抗菌薬の治療は10日以上の継続が必要です。
また、腫れや不快感を抑えるために冷たく濡らしたドレッシング剤や氷などを患部にあてがったり、下肢が感染した場合は患部を高い位置に固定したりします。
治療の遅れなどによって、頭痛や発熱、悪寒や倦怠感などの症状が出ている場合には、抗生剤の静脈内注射や点滴が行われることもあります。また、膿瘍ができた場合は切開手術で膿を取り出さなければなりません。

蜂窩織炎の合併症など、ほかに気をつけた方がいいことはありますか?

合併症として皮膚の壊死性感染症や、細菌が血流中へ拡大する菌血症などを起こすことがまれにあります。
また、同じ場所に何度も蜂窩織炎を発症すると、リンパ管が損傷してリンパ浮腫や慢性リンパ管閉塞になってしまうこともあるので注意が必要です。蜂窩織炎は再発しやすいので、しっかり予防しなければなりません。

蜂窩織炎の予防

蜂窩織炎を予防するために、大事なことを教えてください。

蜂窩織炎を予防するには以下の点が重要です。

皮膚を清潔にすること

傷ができたら速やかに洗浄と治療を行うこと

手洗いうがいで細菌を持ち込まないこと

健康的な生活で免疫力を保つこと

また、切り傷、刺し傷、引っかき傷ができたらすぐに消毒をしましょう。水虫やアトピーなど皮膚疾患ができたら、速やかに医療機関を受診して治療を行ってください。皮膚を健康に保つことが、蜂窩織炎の予防につながります。
さらに健康的な食生活や適度な運動、規則正しい生活によって免疫力を高めることも重要です。

編集部まとめ

蜂窩織炎は蜂巣炎(ほうそうえん)ともいい、皮膚とその下の組織に細菌が感染することで炎症が起こる疾患です。
黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌が主な原因菌です。これらの細菌が、切り傷や刺し傷や引っかき傷、手術、やけど、水虫、アトピーやその他皮膚の疾患などでできた傷から皮下に入り込み、真皮深層から皮下組織・筋膜で炎症を起こします。
患部の皮膚が赤く腫れて熱感が出たり、ぶつぶつが出たりなどの症状が広がります。身体のどこにでも発生しますが、よく見られるのは顔や足のすねや甲です。治療が遅れると、リンパ節が腫れたり、頭痛や発熱、悪寒や倦怠感などが現れる場合もあります。
また、合併症として皮膚の壊死性感染症や、細菌が血流中へ拡大する菌血症などを起こすこともあります。さらに、同じ場所に何度も蜂窩織炎を発症すると、リンパ管が損傷してリンパ浮腫や慢性リンパ管閉塞になってしまうこともあるので注意が必要です。
抗菌薬を飲み始めれば、数日のうちに症状が治まっていくことが多いので、できるだけ早期に受診しましょう。

※この記事はMedical DOCにて【「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」とは?症状・原因・治療についても解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。