役所広司&真田広之ら鶴橋組が集結!命をかける主人公を心配する大竹しのぶも魅力的な作品「刑事たちの夏」
久間十義の同名小説を映像化し、1999年日本民間放送連盟賞テレビドラマ部門最優秀賞、第37回ギャラクシー賞テレビ部門大賞などに輝いたドラマ「刑事たちの夏」(読売テレビ)が11月20(水)に日本映画専門チャンネルで放送される。演出を手がけたのは、人間の内面を見つめた数々の作品を世に送り出し、映像の魔術師と呼ばれた稀代の演出家・鶴橋康夫だ。
官邸をも巻き込むリゾート開発の不正融資事件の真相を命がけで追求する一人の刑事を描く本作。物語は大蔵省審議官の白鳥が宿泊していたホテルの窓から墜落死したところから始まる。
現場のホテルでは遺書の一部とも取れる書き損じが発見されており、捜査本部が開かれた新宿淀橋署では事故、自殺、他殺の3つの線での捜査が決定された。そんな中、警視庁捜査一課の主任・松浦洋右(役所広司)は、事件の重要人物として捜査線上に浮上していた茶髪の女との接触に成功。いち早く他殺を示唆する状況証拠を手に入れた。
ところが、大蔵省の白鳥の机の引き出しから遺書が発見されたことで事態は急転。自殺と断定し、捜査の打ち切りが決定した。しかし、手に入れた状況証拠から他殺を確信していた松浦は捜査本部の方針に違和感を覚えて反発。旧知の東京地検検事・古沢美由紀(大竹しのぶ)から4年前に発覚した北海道のリゾート計画における汚職事件に白鳥が関わっていたことを聞いた松浦は、事件の真相解明に向けて動き出すというのがあらすじだ。
■名優たちの熱演で骨太の作品へ昇華
登場人物の心理描写が丁寧に表現されているところは、映像を心理的な遠近法でとらえると称された鶴橋らしい本作では、豪華出演陣が見せる演技に注目だ。
正義感に燃え、事件の真相解明に向けて奔走する松浦だが、真相解明のために決断をせまられる場面が連続する。そこで揺れ動く松浦の心情を役所は持ち前の演技力で一つ一つ紡いでいくことで、松浦というキャラクター性を強く印象付けている。
松浦の理解者の一人である古沢。検事の立場を超えて松浦の身の安全を心配する姿からは旧知の仲以上の心情をうかがえる。これを言葉ではなく表情や仕草で表現して見る者に訴えかけるところはさすが大竹しのぶといえる。
この二人と比べれば出演シーンは多くないものの、存在を発揮しているのが首相秘書官・黒川和樹を演じる真田広之だ。敵か味方かわからないミステリアスな黒川をニヒルに演じきり、事件の裏に潜むさらなる巨悪の存在を暗にほのめかしている。
他にも山本未来(現・山本未來)や阿藤海(阿藤快)、古尾谷雅人らが演じるキャラクターが、それぞれの立ち位置で見せる松浦との人間模様も必見だ。刑事ドラマの枠を超えたサスペンス劇の結末を、名優たちの熱演に注目しながら楽しんでほしい。
文=安藤康之
放送情報【スカパー!】
刑事たちの夏
放送日時:11月20日(水)21:40〜ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります