「上海ガニ下落」と「上海バブル崩壊」で中国経済の苦境があらわに…!いま指摘されている「習近平に権限集中」の巨大リスク

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「上海ガニ下落」と「豚肉高騰」が示すこと

中国の秋の味覚の代表と言えば上海ガニだが、その価格が下落している。今年は猛暑による養殖池の水温上昇の影響で生産量が例年より2割少ないのにもかかわらずに、である。

中国人の食卓に欠かせない豚肉が16.2%上がったことにより、耐久財など必需品以外の消費は不振だった。

飛行機の国内線の運賃の下落も続いている。9割以上の値引きをする路線もあり、高速鉄道よりもはるかに安いという異常事態となっている。

9月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.6%上がったが、上昇率は8月の0.6%から鈍化した。家計の購買力を映すとされるエネルギーと食品を除くコア指数は0.1%上昇にとどまり、2021年2月以来の低さとなっている。

実際の景況感はさらに悪い可能性が高い。

中国の第3四半期の経済成長率は前年比4.6%増と、前の四半期(4.7%増)よりも減速した。

個人消費が伸び悩んでいるのが主な要因だ。中国の消費者の財布のヒモは相変わらず硬いのだ。

「上海バブル」は一瞬で崩壊…

中国政府はこのところ景気対策を相次いで打ち出しているが、経済が回復する兆しは一向に見えてこない。

中国政府は17日「優良な住宅案件を選定して銀行の融資を促す制度を4兆元(約84兆円)に拡充する」と発表した。拡充するのは地方政府が優良な住宅開発案件を選定し、商業銀行に融資を促す不動産融資協調制度(ホワイトリスト制度)と呼ばれるものだ。

未完成の住宅を購入者に引き渡すようにするため、中国政府が今年1月に創設した。9月末時点での融資実績は約1兆4000億元に達していると言われている。

だが、この発表は市場の期待にはほど遠いものだった。4800万戸に上る販売済みの未完成住宅を購入者に引き渡すには、中央政府から約3兆元規模の直接資金が必要だとみなされているからだ(10月17日付ブルームバーグ)。

失望した投資家の投げ売りにより、中国の株式市場も調整局面に入ってしまった。中国人民銀行(中央銀行)が9月下旬に金融緩和を実施したことにより、上海市場の株価は一時、20%以上急騰したが、中央政府の財政出動の可能性が遠のいたせいで早くも「ミニバブル」が弾けてしまった形だ。

中国共産党への重大な指摘

仮に中央政府が財政出動に乗り出したとしても、問題の全面解決にはならないだろう。

中国経済を苦しめている不動産バブルや過剰債務、過剰生産能力の問題は2008年のリーマンショック後の大型景気刺激策の「つけ」であることから、従来型の景気刺激策ではプラスよりもマイナスの効果が大きいからだ。

中国も30年前の日本と同様、インフラの過剰が深刻化しており、膨れ上がった地方政府の債務削減の方が、優先順位が高くなっている。

中国経済も投資主導から消費主導への構造転換が待ったなしの状況となっているが、かつての日本以上にその達成は困難だと思う。

「中国共産党には政策の潜在的な弱点を検証する『レッドチーム』が必要だ」との指摘が出ている(10月15日付Forbes JAPAN)が、習近平国家主席に権限が集中している状況下で、習氏が後ろ向きだとされる消費刺激策が今後拡充されるとは思えない。

そんな巨大なリスクを抱え、かつての輝きを失い「沈みゆく中国」の様相を呈し始めている中、最も割を食っているのは若者だ。

つづく後編記事『「あいつらは寄生虫だ」…!習近平の「いけにえ」にされた若者が「特権エリート」へ投げかける「ヤバすぎる言葉」』では、いま中国の若者たちにひろがる不穏な空気について考えていこう。

「あいつらは寄生虫だ」…!習近平の「いけにえ」にされた若者が「特権エリート」へ投げかける「ヤバすぎる言葉」