加藤ありさ被告(左)と座談会に参加した被害者たち

写真拡大

 マッチングアプリを介して知り合った複数の男性に「ガンになった母親の入院費用が必要」などと嘘をつき、多額の金銭を騙し取った罪で裁判にかけられている元女子大生・加藤ありさ被告(22)。「デイリー新潮」はこれまで2回、被害者2人による対談記事を配信してきたが、今回は1人新たな参加者を迎え3人によるウェブ座談会をお伝えする。初登場となるCさんこそが警察にとって「第1の被害者」となった人物だった。初めて明かされる“元女子大生頂き女子”がお縄になるまでの転落劇とは――。(前後編の前編)

 ***

【加藤被告の容姿3変化】あまりに違いすぎる「学生証」「プロフィール写真」「実物」。「詐欺LINE」には“あなたしかいない”で始まり最後は“借りたっけ?”

・座談会参加者
Aさん 40代前半。東海地方在住。年収550万円、預貯金500万円。彼女いない歴3年。マッチングアプリPで加藤被告と知り合い、2023年6月9日に初デート。被害金額は73万円。
Bさん 30代後半。東海地方在住。年収500万円、預貯金200万円。彼女いない歴10年。マッチングアプリPで加藤被告と知り合い、2023年7月26日に初デート。被害金額は15万円。
Cさん(初参加) 40代。マッチングアプリを介して加藤被告と知り合い、2024年3月26日に初デート。被害金額は15万円。

加藤ありさ被告(左)と座談会に参加した被害者たち

Cさん「デイリー新潮の記事を読んで裁判を傍聴しようと思った」

Aさん こちらが今回初めてご参加されるCさんです。

記者 初めまして、今日はお忙しいところありがとうございます。よろしくお願いします。

Cさん こちらこそよろしくお願いします。“頂き女子”による犯罪が世相を賑やかしていますが、私の被害体験が少しでも世の役に立てばという思いで参加させていただきました。

記者 AさんたちはどうやってCさんと知り合ったのですか。

Aさん 初公判に引き続き、私たち(AさんBさん)は8月21日に名古屋地裁で開かれた第2回公判を2人で傍聴しました。Cさんはその裁判を傍聴していて、終了後、廊下で「被害者の方ですか」と話しかけてきたのです。それから私たちは裁判所の外に出て、1時間くらいお互いが受けた被害について打ち明け合いました。

Cさん  今日(10月16日)も第3回公判を3人で傍聴してきたところです。私は加藤と示談が成立しているので、守秘義務がある示談内容についてはお話しできませんが、詐欺の概要についてはお話しできます。

記者 それではまずCさんにお話を聞いていこうと思います。どうして加藤被告の裁判を傍聴しようと思ったのですか。

Cさん 私は7月の初公判後に配信された「デイリー新潮」の記事を見るまで、加藤の裁判が始まっていることを知りませんでした。記事を読んで大変びっくりしました。AさんBさんが加藤に騙されていく生々しいLINEのやり取りが書かれていて、私みたいな被害者が他にもいたことを初めてリアルに知ったのです。記事を読んで加藤が法廷でどんな様子でいるのか気になり出しました。記事末尾に次回公判日が書かれていたので、AさんやBさんともぜひ話してみたいとも考え、行くことにしました。

Bさん 私たち2人が「最前列に陣取って並んで傍聴している」と記事に書いてあったのを見て、被害者に違いないと思って声をかけられたそうです。

「コメダ」で最初に会った直後、「15万円の借金返済」を相談された

記者 法廷で加藤被告を見てどう思いましたか。

Cさん 衝撃的な体験でした。裁判を傍聴すること自体、人生初めての経験です。つい数カ月前まで私とデートしていた女の子が手錠や腰縄をつけられて法廷に入ってくる姿を見て、ただただ怖いと思いました。

記者 加藤被告から何を感じとりましたか?

Cさん そこはわからなかったですね。前回も今回も裁判は10分足らずで終わりました。加藤の肉声が聞けたのは2、3回程度。しかも、裁判長から聞かれて「はい」と短く答えるだけの内容でした。

Aさん この裁判はまだ捜査が続いている事情で、被害人数が確定していないのです。前回は235万円の被害を受けた30代男性、今回は130万円の被害を受けた60代の事件の起訴状が読み上げられましたが、次回、さらに2人くらい加わる可能性があるという話が今日ありました。被告人質問までにはまだ時間がかかりそうです。

記者 Cさんの被害はどういったものだったのですか?

Cさん 私はAさんBさん同様、真剣に結婚を考えている相手を探している中で、今年3月マッチングアプリを通して加藤と知り合いました。アプリ内でメッセージのやり取りを数日間した後、3月22日に名古屋市内のコメダ珈琲で初めて会った。1時間くらいでしたがとても気立てのいい子だと思いました。帰りにドーナツ菓子をお土産にくれたのも好印象でした。

記者 それからはAさんBさんのケース同様、彼女はLINEを使って仕掛けてきたのですね。

Cさん はい。すぐに「ストーカー被害にあっていて、引っ越しにかかった費用15万円を借金して困っている」という相談をLINEで受けました。ネイリストの仕事をしているが、借金返済が追いつかなくてチャットレディの仕事もしなければならないと。根掘り葉掘り「どこの警察相談したのか」などと聞いたのですが、警察署がある場所も正確に言えるなどとてもリアリティのある話だったので、話を信じ、助けてあげたいと思ってしまったのです。そして、数日後また名古屋市内の別のコメダ珈琲店で会って、15万円を貸しました。その際、借用書も取りましたが「一ノ瀬ありさ」という偽名を使っていました。

30万円の“おかわり”を申し込まれ「詐欺だ」と気づいた

記者 加藤被告はコメダ珈琲ばかり使うのですね。AさんBさんの時もそうでした。

Cさん それからまた他愛のないLINEのやり取りが続きましたが、4月2日に初めてちゃんとしたデートをしました。名古屋市内の公園での花見です。彼女は愛犬を連れてきました。シートを敷いてトランプしたり、屋台を回ったりして4〜5時間楽しく過ごしましたよ。

Aさん こういうのは私たちの時にはなかったことです。私たちが被害に遭ったのはCさんが被害に遭う10カ月くらい前のことで、おそらく加藤が詐欺を始めて間もなかった頃。だから扱いが雑だったんです。

Bさん 私もデートなんかなかった。いつもコメダで1時間お茶して終わりでしたからね。

Cさん 初デートを終えた直後のことでした。今度は「母親がガンになって、先進医療を受けなければならなくて30万円の借金がある」とまた無心してきたのです。15万円貸してあげた直後だったので、これは絶対におかしい、詐欺だと勘づいた。それで地元の警察署に行ったのです。警察の方からは「間違いなく詐欺です。騙されたふりをしてやり取りを続けて証拠を集めてください」とアドバイスを受けた。花見デートから3日後くらいのことです。

記者 よくすぐに気づいて行動されましたね。

Cさん 正直、私はそこまで彼女にのめり込んでいなかったから冷静に判断できたのです。

 後編では、Cさんの機転の利いた行動から加藤被告が逮捕されるまでの話の続きや、これまでの対談企画を読んだ読者からAさんBさんに向けられた批判コメントについての3人の「反論」を伝える。

デイリー新潮編集部