女性への最大のプレゼントは「憎い人間を殺してあげること」…山口組の元顧問弁護士(78)が目撃した、4代目組長の“とんでもない口説きテクニック”

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日本最大の暴力団・山口組の顧問弁護士ってどんな人? 早稲田卒のエリート弁護士が“危険すぎる依頼”を引き受けた理由と仕事のリアル《顧問料は月5万円》〉から続く

 日本最大の暴力団・山口組の顧問弁護士という特異な仕事を25年続けた山之内幸夫氏は、組の最高幹部らと会う機会も多かった。暴力団の幹部とはいったいどんな人々なのか――4代目山口組組長が女性を口説く驚愕の文句や、バブル時代の異様な“遊び方”などを明かす。(全3回の2回目/続きを読む)

【貴重写真】あぐらをかいて取材を受ける竹中正久山口組4代目組長と幹部たち

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山之内幸夫氏 ©深野未季/文藝春秋

ーー3代目山口組時代の小田秀組の顧問弁護士から、山之内さんは山口組本家の顧問にも就任されたんですよね。

山之内 山口組全体の顧問になったきっかけは(後に5代目山口組ナンバー2の若頭に就任する)宅見勝さんでした。宅見組傘下の組員の刑事弁護を引き受けていたらウワサが親分に伝わったようです。山口組と傘下の山健組や宅見組らが松田組と対立した「大阪戦争」では、和歌山で宅見組組員が相手方の組員を殺害した事件の刑事弁護を依頼されました。

ーー殺人事件の実行犯は逮捕されましたが、たしかに宅見組長は逮捕されていません。

山之内 実行犯と事件の見届け人が逮捕され、この見届け人が宅見さんの名前を供述していました。しかし結局、宅見さんの殺人への関与は認定されませんでした。そのことに恩義を感じてくれて、4代目山口組の顧問も依頼されたんです。

宅見勝の刑事弁護がきっかけで山口組顧問弁護士に就任

ーー山口組本家の顧問料は、やはり通常よりも高額なのですか?

山之内 いや、暴力団からたくさんお金をもらうのは僕が嫌だったので、10万円にしました。個別の事件の弁護でも相応にもらいますので。顧問料自体はそれでよいと思っていました。私がむしろ少なくしてくれとお願いしたほうです。

ーー小田秀組や山口組本家からの支払いは、違法収益が原資になっていると思われますが、そのことについて葛藤はありませんでしたか?

山之内 それは全然ありませんでした。顧問を引き受けてお金儲けしようという意欲がなかったので、金額も関心がなく、それが違法収益から来てるのではないかと思いを致すこともありませんでした。

ーーそれでも、ヤクザの顧問弁護士になることに対して世間の視線は冷たかったのでは?

山之内 当然、そうですわね。「ヤクザの顧問弁護士になってくれますか」と言われたら、普通は「嫌です」となるでしょうね。組織の運営を助けて悪知恵を授けている、と中傷を受けたこともあります。

「離婚しても私たちを苦しめるのか」と前妻に言われ…

ーー顧問弁護士を引き受ける時は迷われましたか?

山之内 もちろん、1カ月ぐらい悩みました。元妻には「暴力団の顧問弁護士を引き受けるなんてどういう了見だ」とすごく怒られましたね。

ーー離婚はしていましたが、お子さんも2人いたんですよね。

山之内 それもあって無茶苦茶言われましたね。離婚しても私たちを苦しめるのか、と。

ーー顧問弁護士になってヤクザの世界に入り込んでしまっている恐怖はありませんでしたか?

山之内 迂闊にもあまり意識していませんでした。本当は意識しなければならないのでしょうね。依頼される仕事を1つ1つやっているうちに評判になり、依頼者もどんどん組の偉い人にランクアップしていきましたね。

「お前、誰を殺したいのや」とホステスに...山口組4代目組長の“衝撃の口説き文句”

ーー山口組最高幹部とは一体どういう人たちなのでしょう。

山之内 4代目山口組組長の竹中正久さんには、何回か神戸のクラブに飲みに連れていってもらいました。機嫌がよくなるとホステスの女の子を抱き寄せて誘惑するんですが、普通はプレゼントとして「お前、指輪を買うたろうか」とか、「バッグを買うたろうか」とかですよね。当時は羽振りが良かったの「おう、マンションを買うたろう」というのもまだ分かります。でもあの人は違うのですよ。

ーーどのように違うのでしょう。

山之内 竹中さんは女の子に対して「お前、誰を殺したいのや」「殺したいヤツ、言うてみい。誰でも殺したるぞ」と聞くんです。そんなのね、口説き文句になるのですかね? 彼にしてみれば、憎い人間を殺してあげるのは最大のプレゼントのつもりだったのでしょう。でも、女の子は返事のしようがないという表情でした。

「男の仕事で命が懸かるのはヤクザだけですわ」宅見勝が語った本心

ーー感覚が乖離しすぎていますね……。宅見さんはいかがですか。

山之内 宅見さんの大阪のご自宅にはよく行っていました。会話の中で、「なぜ、この仕事をしているのですか」と聞いたことがあるんですが、「先生、男の仕事で命が懸かるのはヤクザだけですわ。ワシはそれが面白い」と言っていました。実際に宅見さんは、命を取るか取られるかのところまで押していくタイプで、裁判で無期懲役になりそうなことも何度もありました。その後、5代目山口組内部の対立で本当に殺されてしまいましたが。

あの時代のヤクザは「おカネを持っている人」という印象だった

ーー5代目体制が発足した1989年はバブル景気のピークの時代。宅見さんは地上げを資金源にして億単位のカネを動かしていたことは業界ではよく知られていました。

山之内 あの時代は、ヤクザというと「おカネを持っている人」という印象がありました。資金源は、バブルで滅茶苦茶に値上がりしていた不動産が多いです。その地上げを担ったヤクザ社会に大きなおカネが流れてきました。宅見さんは「経済ヤクザ」と言われ、宅見組の周りには地上げ業者がたくさんいましたから、カネを湯水のように使うのが習慣でした。

飲み代に月500万円…バブルに浮かれたヤクザたちの“豪遊ぶり”

ーー当時の豪遊ぶりはどんなものだったのでしょう。

山之内 宅見組の幹部に飲みに連れていかれるのは大阪のミナミが多かったです。月に1人500万円くらいは普通に使っていて、服も全身ブランドもの。車はリンカーンのコンチネンタルで、指輪や時計も何億もする高級なものでした。クラブで女の子に見せびらかして、話題もブランドの話ばかりでした。ただ大きなカネを手に入れてはいても、貯蓄して将来に備えている人はあまりいなかったですね。クラブで散財するばかりでしたね。

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 山之内氏は国内最大の暴力団組織の顧問弁護士を務めてきたが、弁護士資格を失う事態となる。ただ、近年はかつての経験を生かしたYouTuberとして活動している。#3ではその実態について語る。

〈山口組の元顧問弁護士(78)が弁護士資格を失ってYouTuberになった“驚きの理由”とは「暴力団に入る人の特徴は…」〉へ続く

(尾島 正洋)