《想像力もない、責任も取りたくない…》意外と多い、ただ怒鳴り散らす上司に「欠けているもの」

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根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。

想像力の欠如

特権意識が強い上司ほど、自分の暴言や罵倒で部下がどれほど傷つき、つらい思いをするかに想像力を働かせることができない。いや、それどころか想像してみようとさえしない。想像力が欠如しているからこそ、感情に任せて暴言を吐き、罵倒し続けるのだろう。

もっとも、想像力の欠如を無自覚に露呈させるのは“下”に対してだけである。逆に、“上”に対しては、自分の言動がどう受け止められるか過剰ともいえるほど警戒し、不快感や反感をかき立てないよう慎重にふるまう。“上”からどう見られるかが最大の判断基準になっているからであり、そのおかげか“上”から気に入られ出世することも少なくない。

ところが、このような涙ぐましい努力が想定外の事態を招くこともある。センサーの感度を極力上げて、“上”にいい印象を与えられるように頑張っていたのに、その“上”が何らかの事情で退社したり、権力を失ったりする場合だ。そうなると、それまでの気遣いがどこにいったのかと首を傾げたくなるほど、ぞんざいな対応をするようになる。

よく聞くのは、ポストオフや定年後再雇用になった元上司に対して、一切話しかけない、場合によっては挨拶も返さない元部下がいるという話だ。元部下の豹変に悩んで落ち込み、眠れなくなった定年後再雇用の男性が私の外来を受診して、「管理職ではなくなり、何の権限もなくなった奴は無価値だと向こうは思っているから、ぞんざいに扱うのでしょうか」と尋ねたこともある。聞けば、この男性が上司として人事権を握っていた頃は、挨拶さえしなくなった元部下は非常に従順で、盛んに媚びへつらっていたそうだ。しかも、この男性の定年後その後釜に座ったという。

この元部下のように、話しても挨拶しても一文の得にもならないと思えば平気で無視する人はどこにでもいる。根底に潜んでいるのは損得勘定であり、相手の地位や役職を見て行動し、平気で態度を変える。しかも、それを恥ずかしいとも、後ろめたいとも思わない。

朝令暮改も日常茶飯事

相手によって態度を変える人は、方針もコロコロ変えることが多い。朝令暮改も日常茶飯事なのだが、これは“上”から気に入られることしか考えていないからだろう。“上”からちょっと言われただけで、それまでの方針を百八十度転換することもある。そのため、こういうタイプを上司に持つと、部下は振り回されてばかりで、本当に苦労する。

指示が行き当たりばったりで、一貫性がなく、すぐに方針が変わる一因として、自信がないこともある。おくびにも出さないが、実は「この方針で大丈夫だろうか」とびくびくしているからこそ、指示が二転三転する。朝令暮改の上司ほど「状況が変わったんだから、臨機応変に対応しないといけない」と正当化するが、そのたびに右往左往する部下のほうはたまったものではない。

方針がコロコロ変わる上司の胸中には、責任回避のためという思惑が潜んでいることもある。自分で責任を取りたくないので、少しでもうまくいかないことがあると、すぐに方針転換する。場合によっては、自分では明確な指示を出さず、「“上”がこう言っていたから、そうしよう」と自分の責任をあいまいにしたり、「それぐらいのことは、自主的にやってくれないと困るよ」と丸投げしたりすることもある。いずれにせよ、自らに降りかかる責任の回避を最優先したいからにほかならない。

辛辣な見方をすれば、自信がないからこそ、自己保身のために相手によって態度を変える“カメレオン”になるのだし、方針もコロコロ変えるのだともいえる。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。

どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体