いま中国で広がる「日本人憎悪」と「治安悪化」の原因が判明…!さらに日本人が直面する低迷中国「新たな懸念」

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治安悪化と日本への憎悪のヤバすぎる関係

中国の地方政府の弱体ぶりが鮮明になっている。治安当局の予算が減少しており、それと連動するように日本への否定的な見方も広がっている。在留邦人の警戒感は高まる一方だが、その根源的な理由は中国経済の低迷に求めるしかない。

前編『習近平、もう手遅れだ…中国19億人の“ケチケチ旅行”が映し出したデフレ経済「悪夢の真相」』で紹介したとおり、国慶節の大型連休(10月1日~7日)で中国国内では19億人が移動し、コロナ禍以前以来の活況だった。

ただし、国内線の航空運賃やホテルの宿泊価格は、2割以上下落しており不況の影も色濃く映し出した。

中国経済は30年前の日本が陥ったように、消費不況に見舞われている。

中国の国内総生産(GDP)に占める個人消費の比率は40%未満で、世界平均を約20ポイントも下回る。日本がGDPに占める個人消費の比率を10ポイント上げるのに17年もかかった(9月30日付ロイター)ように、中国と世界の大きな個人消費の差は簡単には埋められない。

日本人への「憎悪」と「治安悪化」の関係

消費主導の経済に転換するためには、脆弱な社会保障制度の拡充などが不可欠だ。米モルガンスタンレーは「7兆元(約147兆円)を農民工などへの社会福祉を拡充するとともに、不動産市場の安定化のために3兆元の資金を投ずるべきだ」と主張しているが、10兆元(約210兆円)もの資金投入は、いまの中国にとって容易ではない。

財政赤字が急拡大すれば、ハードカレンシー(国際市場で他国通貨と自由に交換ができる通貨)である日本円とは異なり、人民元の価値は大きく毀損する可能性がある。

そうなれば、資金流出が加速し、中国経済は深刻なカネ不足になってしまうだろう。

根詰まりをおこした経済は、深刻な治安悪化を引き起こそうとしている。清華大学が9月30日に発表した世論調査によれば、中国人の81%が日本に対して否定的な見解を持っている。この比率は調査対象国の中で第1位だ。

深刻な不況が仇となり、中国で「社会に報復してやる」との負の感情がかつてなく高まっている。このような状況下で、治安対策がおざなりとなれば、「中国で活動する日本人の安全はもはや保障できなくなってしまうのではないか」との不安が頭をよぎる。

実際、治安維持を担う地方政府の弱体ぶりは深刻だ。

地方政府が借金した「驚きの相手」

地方政府の弱体化は、歳入の4割を占める土地使用権売却収入が激減したのが主な要因だ。8月は前年比41.8%減となり、2ヵ月連続で大幅な落ち込みとなっている。

窮地に立たされた地方政府は寺院からも借金しているようだ。「上海市は管内の寺院から100億元(約2100億円)の短期資金を借りた」との情報がネット上で流れている(9月30日付朝鮮日報)。

地方政府は猛烈なリストラを断行しており、治安維持の経費も大幅にカットしている。注目すべきは、「制服を着た暴力団」と呼ばれる「城管(城市管理行政執法局)」の廃止が各地で進んでいることだ。

彼らの暴力におびえてきた市民にとっては朗報だが、「コワモテ」の不在が引き金となり、治安の悪化がさらに深刻化する可能性は排除できないと思う。

しかし、深刻なのはそれだけではない。地方政府の機能低下は感染症対策の不備にも直結しかねない。

ふたたび警戒される「感染拡大」

中国では昨年末から今年にかけてマイコプラズマ肺炎が大流行した。9月以降、広東省を中心にデング熱の感染者が急増している。

最近の事例は報告されていないが、鳥インフルエンザ(H5N1型など)のヒトへの感染が最も多い国の1つは中国だ。

世界に悪名をとどろかせた「ゼロコロナ政策」を担ってきたのは地方政府だった。

大量のPCR検査を連日実施するなど新型コロナの蔓延を未然に防いできた。だが、金庫にカネがなくなってしまった今、鉄壁の感染症対策を期待するのは無理だ。

中国で新たなパンデミックが起きたら、日本を始め国際社会が受ける被害は新型コロナの規模をはるかに上回ってしまうのではないだろうか。

中国の地方政府の弱体化が日本に悪影響を及ぼさないことを祈るばかりだ。

さらに連載記事『中国EVの「弱点」が発覚して販売台数が激減…!国民の不満を映す「中国版お年玉」の寒すぎる事情』でも、中国経済の現状を詳しく解説しているのでぜひ、参考としてほしい。

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