ハーバード大学の学生であるAnhPhu Nguyen氏とCaine Ardayfio氏が、スマートグラスと顔認証技術を使って道行く人の氏名や電話番号、住所などといった個人情報を開示していくデモンストレーションを公開しました。

I-XRAY - Google ドキュメント

https://docs.google.com/document/d/1iWCqmaOUKhKjcKSktIwC3NNANoFP7vPsRvcbOIup_BA/

College students used Meta’s smart glasses to dox people in real time - The Verge

https://www.theverge.com/2024/10/2/24260262/ray-ban-meta-smart-glasses-doxxing-privacy

Nguyen氏とArdayfio氏は、「I-XRAY」と呼ばれる技術を作成しました。これはMetaのスマートグラスであるRay-Ban MetaのInstagramへのライブ動画配信機能を利用しています。I-XRAYはRay-Ban Metaのライブ配信を顔認証システムで識別し、同一人物と紐づけられているインターネット上の情報を表示します。これによりライブ配信に顔が映り込んだ人の氏名・住所・電話番号などの個人情報が表示されるようになっているわけです。

実際にI-XRAYがどんな風に動作するのかは以下の動画を見れば一発でわかります。





使用するスマートグラスはRay-Ban Meta。



道行く人とすれ違う際に、AIで顔認証を行います。



その後、同一人物の個人情報をインターネット上から抽出。



この情報が正しいか否かを、Nguyen氏とArdayfio氏の同級生や親戚で検証したところ、かなり正確に個人情報を特定することに成功したそうです。



さらに、I-XRAYを使って公共交通機関ですれ違った見ず知らずの人の個人情報をチェックし、この情報が正確かどうかを本人に確認してもらうというデモも行われました。



動画ではI-XRAYで表示された情報をベースに、見ず知らずの人と知り合いのふりをしてコミュニケーションをとる様子も映し出されています。



I-XRAYで利用している顔認証システムはPimEyesです。I-XRAYで使用されているテクノロジーは既存の誰でも利用できるものばかりである点も、特筆すべきであるとテクノロジーメディアのThe Vergeは指摘しています。

Nguyen氏とArdayfio氏は「このツールを作った目的は悪用することではありません。そのため、I-XRAYを公開するつもりはありません」と述べました。Nguyen氏とArdayfio氏は既存の技術を組み合わせるだけで簡単にこのようなことが実現できるという認識を高めるためにI-XRAYを発表したと説明しています。なお、I-XRAYのユニークな点はAIによってすべての動作を自動化しているという点です。

プライバシーはスマートグラスにとって常に大きな懸念事項でした。スマートグラスの先駆けとしてGoogleがリリースしたGoogle Glassは、公共の場で同意なしに視界が録画されることに対する世間の反発もあって失敗しています。しかし、スマートフォンやTikTok、Vログなどの普及により多くの人がカメラを向けられることに慣れてきたのも事実です。そして、Ray-Ban Metaのような最先端のスマートグラスはカメラが搭載されているとは思えないような見た目となっています。



通常のメガネとスマートグラスの見た目が近づくことは「スマートグラスの普及にとっては重要ですが、人々はカメラが向けられていることに気付きにくくなります」とThe Vergeは指摘。また、Ray-Ban Metaには動画撮影時に自動的にオンになるプライバシーライトが搭載されていますが、これは明るい屋外では点灯していることに気付きにくく、特に混雑した公共の場では気付かれないことが多いとThe Vergeは指摘しています。

なお、MetaはRay-Ban Metaのプライバシーポリシーにおいて、ユーザーがデバイスを乱用しないよう警告しています。Metaはユーザーに対して「他人の好みを尊重」し、動画やライブ配信、写真撮影時にははっきりとジェスチャーしたり音声コントロールを使用したりすることを推奨しています。

The Vergeは「I-XRAYはスマートグラスがいかに悪用される可能性があるかを示す厳しい警告ですが、人々が自分自身を守るために取ることができるいくつかのステップがあります。Nguyen氏とArdafiyo氏は論文の中で、オプトアウトできる逆顔検索と人物検索のデータベースをリストしています。それでも、オンラインでの存在を完全に削除することはほぼ不可能であることを覚えておいてください。できるのは、自分の情報をより入手しにくくすることだけです」と記しています。