老後を迎えた日本人のほとんどがやっている「大失敗」…退職後がこんなに退屈な「決定的な理由」

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元伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。仕事に生涯を捧げてきた名経営者も85歳を迎え、人生の佳境に差し掛かった。『老いた今だから』では、歳を重ねた今だからこそ見えてきた日々の楽しみ方が書かれている。

※本記事は丹羽宇一郎『老いた今だから』から抜粋・編集したものです。

老後の時間はいくらあっても足りない!

今年、私は八五歳を迎えました。ですが、老後に飽き、倦むということはまったくありません。それどころか、時間はいくらあっても足りないくらいです。「老後が足りない!」なんて声高に言うと、なんで丹羽さんは老後も時間が足りないほど忙しいんですか? と訊いてくる人が大勢います。

ことほどさように「定年後は毎日が日曜日だ」と思っている人は多いようです。

しかし、そもそも、日曜日が嬉しいのは、普段の仕事を離れて「ゆっくり、のんびり」を体験できるからです。仕事を完全にやめて、やりたいと思うこともなくボーッと過ごしていたら、そのうちに「毎日が日曜日」どころか、「今日は何曜日だったかな?」と曜日の感覚さえなくなり、持て余す時間の多さに辟易してしまうでしょう。

でも、安心してください。老後を過ごす人たちは心身ともに元気な人が多い。健康の維持・管理に気をつけてさえいれば、定年後の生活スタイルのスイッチを、自分自身でいかようにも切り替えられます。

継続雇用や再雇用で現職を続けるのもよし、派遣社員やフリーランスとして働きながら、若い頃に興味があったけれどできなかった勉強や趣味に挑戦するのもよし。

また、定年後は職場以外の新たなコミュニティに加わる機会も広がります。

地域の自治会活動やボランティア活動に参加して社会に貢献することもできるし、趣味や学びを介して同好の士とつながることもできる。自分の研究成果をSNSで発信することも可能でしょう。

そうなれば、「老後に時間を持て余す」なんてあり得ないと思います。

むしろ、「これじゃあ老後が何年あっても足りないぞ!」と、ワクワクするはずです。

日本では六五歳までの雇用確保の義務化が目前に迫り、そう遠くない将来には定年自体がなくなり「働けるうちはいつまでも働く時代」になることも予測されています。その意味で本書は、現役世代にとっても参考になること間違いありません。

この本で述べているのは、あくまでも私の経験や知見からとらえた現状です。人間の行動パターンにはそれぞれの個性があるので、私のやり方が合う人もいれば、そうでない人もいます。ですから、本書を読みながら興味をもったことは自分でさらに深く調べたり、今の自分の生活環境や体調などに応じて修正したりして、「自分がやるならこうしたほうがいい」ということを、あなた自身で自由自在に決め、行動に移していっていただきたいと思います。

自分中心でいい

今、老後の生きがいや終活について、メディアではいろいろと言われていますが、「皆が言っているから生きがいをもたなきゃいけない、皆がやっているから終活をしなきゃいけない」という考え方になると、生きていくのが苦しくなってしまうように思います。

もちろん自分の人生ですから、自分が納得するようにやってみる価値はあるでしょうが、「皆が」という言葉に惑わされてはいけません。

「皆とは誰のことなんです? あなたは世界中の人を調べてそう言っているんですか?」と、言い返せばいいのです。

だからといって、「自分はこう思っているから、家族や友人も皆、同じように思っているだろう」と、自分中心にものごとを考えて判断するのもよくありません。

見るもの、聞くものを自分のこととしてとらえ、関心のあることをもっと深く知るためにいろいろな情報を集め、そこからさらに考えて自分なりの見方をしていこうとするのが、本当の意味での「自分中心の考え方」です。そういう考え方をすることは、老後をよりよく生きていくためにも、非常に大事なことだと思います。

日本では歳をとることにマイナスイメージがありますが、そんなことはありません。

年齢を重ねるにつれて経験の数は増し、知識も増えていくので、的確な思考と判断ができるようになるし、人間関係の広がりや深みも増し、人格も円満に練られていきます。

世の中の変化に対応していこうという意欲や好奇心を失わず、日々の努力を続けていく限り、失うものよりも得るもののほうが圧倒的に多いはずです。

身体が欲する限り働き、読書や学びを通して知識を吸収していけば、生きがいは自然と見つかります。

さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。

ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」