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今から88年前、知られている限り最後のタスマニアタイガーが死亡し、種は絶滅に至りました。

このほどある研究チームが、タスマニアタイガーの最古の祖先にあたる、獲物の骨と歯を食べられるほどタフな下顎骨を備える有袋類を発見したと発表しています。

タスマニアタイガーとは

タスマニアタイガー(またの名をフクロオオカミ、サイラシンとも)は、名の由来になっている背中の黒い縞模様が特徴的で、見た目は犬に似た生物です。

口を非常に大きく開けることができ、有袋類や小さな齧歯動物を食べていました。しかし、タスマニア政府が家畜類への脅威とみなして懸賞金をかけた後、生息地の消失や乱獲といった要因によって絶滅へと追い込まれた歴史があります。

後期漸新世に生息していた祖先

古生物学の学術誌「Journal of Vertebrate Paleontology」に掲載された同チームの論文は、約2400万年前の後期漸新世にオーストラリアに生息していた、フクロオオカミの祖先である数種類の有袋類について説明しています。

絶滅したフクロオオカミは最大の肉食性有袋類でしたが、今回の論文で取り上げられている大昔の祖先は、現代のフクロオオカミよりも小柄だったそう。

学術出版社テイラー&フランシス(Taylor & Francis)のリリースの中で、ニュー・サウス・ウェールズ大学(UNSW)の研究者で論文の筆頭著者ティモシー・チャーチル氏は、以下のように述べています。

「この2500万年のもの間、オーストラリアは肉食爬虫類に支配されていたという認識は、新たな発見があるたびに今回の新種のフクロオオカミ科のような肉食有袋類の化石記録が増え、徐々になくなりつつあります」

化石から発見された3つの新種

新たに命名された有袋類の祖先3種は、Badjcinus timfaulkneri、Nimbacinus peterbridgei、Ngamalacinus nigelmarveni。彼らはオーストラリアでも最も豊かな化石哺乳類の堆積層を有するリバーズリー世界遺産地域で発見されました。オーストラリア博物館によると、フクロオオカミは遅くとも2000年前にはオーストラリア本土から消えたそう。

Badjcinus timfaulkneriは現在までにわかっている最古のフクロオオカミで、体重は7〜11kg と3種の中で一番大きかったとのこと。獲物の骨や歯を食べられるほど非常に強靭なアゴを備えていました。Nimbacinus peterbridgeiは、他の2種と比べフクロオオカミの近縁種であるように思われ、チームは88年前に絶滅したフクロオオカミのおそらく最古の直接的な祖先だろうという結論に達しています。

「これらのフクロオオカミ科は非常に異なる歯の適応を見せており、この時代には独特な肉食のニッチがいくつもあったことを示唆しています。

こういった系統は、近代のフクロオオカミにつながる1種を除いて、800万年ほど前にすべて絶滅したのです」

と、論文の共著者でUNSWの古生物学者マイケル・アーチャー氏は、同じリリースの中で語っていました。

フクロオオカミの復活を目指す動き

知られている限り、最後のフクロオオカミは1936年に動物園で死にましたが、絶滅したのはもっと近年である可能性が高いと言う研究者もいます。

フクロオオカミが今話題になっているのは、バイオサイエンス企業がその代理種を復活させると主張しているから。代理種とはフクロオオカミと同じ環境的ニッチを取ることができる、その遺伝情報に基づく動物のことです。

“脱絶滅”と呼ばれているこの技術は、正に「言うは易く行うは難し」ではあるものの、昨年あるチームがフクロオオカミからのRNA抽出に成功、これは絶滅した種からの初めてRNA抽出でもありました。

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Source: Journal of Vertebrate Paleontology, Taylor & Francis, Queensland National Parks, Australian Museum