ビデオ会議で感じる「Zoom疲れ」を避けるには背景画像を変更することが有効だと実験で明らかに
近年は感染症のパンデミックやリモートワークの普及により、ZoomやMicrosoft Teamsなどを利用したビデオ会議が一般的になりましたが、ビデオ会議は「videoconference fatigue(ビデオ会議疲労/Zoom疲れ)」と呼ばれる現象も引き起こしています。シンガポール・南洋理工大学の研究チームが実施した新たな研究により、ZOOM疲れを解消するための簡単な方法が明らかになりました。
https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2024.1408481/full
Experiment Reveals a Simple Trick to Avoid Zoom Fatigue : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/experiment-reveals-a-simple-trick-to-avoid-zoom-fatigue
Zoom疲れはビデオ通話ツールを用いることで発生する心身への疲労を指す言葉で、原因としては「プライベートや仕事など生活のあらゆる場面でZoomを使用していること」「ビデオ通話のわずかな遅延や視線が合わない不安にストレスがたまること」「言葉以外のコミュニケーションが減少すること」「ディスプレイに映った自分自身の顔を見続けること」「会議室へ移動する間に思考や気持ちを切り替えられないこと」などが挙げられています。
「オンライン会議疲れ」のメカニズムとその克服方法とは? - GIGAZINE
新たに南洋理工大学の研究者であるヘン・チャン氏らは、Zoom疲れに影響する可能性がある要素の1つとして、「自分の背後に映る部屋などを隠すために使われる仮想背景」について研究を行いました。
既存の研究では、ビデオ会議中のユーザーは主に話し相手を見ているのではなく、大半の時間は自分自身に焦点を当てていることが示唆されているとのこと。そのため、自分の背景として設定する仮想背景が、ビデオ通話に伴う疲労に影響する可能性があるというわけです。
チャン氏は、「背景を選択する時、人々は本質的に自分自身のための『新しいスーツ』を選んでいます。仮想背景は単なる飾りではなく、ユーザーが自分自身をどのように認識し、他者からどのように認識されるのかに影響するのです」と述べています。
研究チームはビデオ会議ツールを使用するユーザー610人を対象に、ビデオ会議中に使用する背景と疲労感の関連性を調べる実験を行いました。被験者はいずれもシンガポール在住で、週に平均3日は自宅で仕事をしており、男性が284人(46.6%)、女性が326人(53.4%)で、年齢は22〜76歳でした。
被験者にはビデオ会議の背景として「画像」「動画」「ぼかし背景」「仮想背景を使用しない」の4つが与えられ、仕事中にどの背景を選択したのかや、一般的・視覚的・社会的・モチベーション的・感情的な疲労感について回答しました。また、画像や動画の仮想背景を使用した場合は、どのような種類の背景だったのかを答えました。
実験の結果、動画をビデオ会議の背景として設定した被験者は、最も強い疲労感を覚えたことがわかりました。研究チームは、「なぜなら動画の背景は常に変化しており、ユーザーに新しい情報を提示し続け、認知リソースを消費させ、認知不可を増大させるからです」と指摘しています。
また、実際の背景をぼかしていた被験者も、より高い疲労レベルを報告しました。過去の研究では、「ぼやけた背景や灰色の背景が、否定的な感情につながる可能性がある」という結果が示されているとのことです。
画像背景を選択した人の中には、オフィスや公共スペースの画像を選択する人も多数いたそうで、これは自身のプロフェッショナリズムを表現するために選ばれたとみられます。しかし、こうした「自己表現の努力」はビデオ会議中に増幅され、疲労の増加につながる可能性があると報告されています。
最もビデオ会議の疲労度が低かったのは、「自然の風景や楽しげで奇抜な背景」を選択した人々でした。研究チームはこの理由について、「この結果は、これらの背景コンテンツが印象管理のために使われていないからかもしれません。これらの背景を使用する人は、背景が自分自身をどのように見せるのかをほとんど気にしていないか、あるいは単に実際の背景を隠す手段として使用しているのかもしれません。その結果、自分のイメージを管理することに伴うストレスがなくなり、ビデオ会議疲労の低下につながります」と述べました。
研究チームは人々に対し、仕事のビデオ会議で山や森、ビーチといった自然の仮想背景を使用することを推奨しています。チャン氏は、「これは心理的な快適さと、適切な社会的エチケットを維持することのバランスを取る選択です」と述べました。