40代独身、貯金は「80万円」です。1人なので老後も年金だけでどうにかなると思っていますが、マズいでしょうか?

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独り身で老後を生活する場合、夫婦の世帯や子どもがいる世帯と比較して世帯人数が少ないため、毎月の出費が少なくなる可能性はあります。 そのため今回のケースのように、年金だけで十分やっていけると考える人もいるかもしれません。しかし年金収入のみで十分生活できるかどうかは、生活スタイルや受給できる年金額などにより左右されるでしょう。 本記事では、単身世帯が老後の生活に必要とする金額や、必要な貯蓄について解説していきます。

65歳以上の単身無職世帯が必要なお金は「15万5495円」

総務省統計局が公表した「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」によると、「65歳以上の単身無職世帯」の収支実態は表1の通りです。
表1

項目 金額 実収入
(税込み収入) 13万4915円 消費支出
(食費・光熱水道費など) 14万3139円 非消費支出
(税金・社会保険料など) 1万2356円 実収入-消費支出+非消費支出 マイナス2万580円

出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」を基に筆者作成
消費支出と非消費支出を合わせると「15万5495円」が平均支出です。実収入から同額を差し引くと、毎月「2万580円」のマイナスが生まれています。
1年あたりでいくと24万6960円不足する計算です。仮に90歳まで生きるとすれば、65歳からの25年間で約617万円のマイナスとなります。
今回のケースでは貯金額が80万円しかありません。仮に65歳までに貯蓄が増えず、65歳以降は貯金を取り崩して不足分をカバーする場合、約3年で貯金を使い果たしてしまいます。
老後の生活に安心材料を持たせたい場合は、貯蓄額を今からコツコツ増やすことを検討するといいでしょう。あるいは資産運用に取り組んで、余裕資産を増やす必要があるかもしれません。
 

老後の収支バランスは年金額や毎月の支出により変わる

前述の収支バランスはあくまで平均的な数字です。実際は、もらえる年金額や月々の出費により状況は異なります。
もらえる年金額が多かったり、消費支出が少なかったりすれば収支が黒字になるかもしれません。逆に年金額が少ないか消費支出が多すぎる場合、赤字状態になる可能性があるでしょう。
老後の生活をシミュレーションする場合は、年金額や現在の支出状況を総合的に考えることが大切です。
 

将来もらえる年金はいくら?

厚生労働省年金局が公表した「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による令和4年の厚生年金保険(第1号)と国民年金の額は以下の通りです。


・厚生年金保険(第1号):14万4982円
・ 国民年金:5万6428円

国民年金は日本在住の20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象であり、厚生年金は会社員や公務員などが加入対象です。仮に個人事業主やフリーランス、フリーターなどとして生涯働いてきた場合、加入しているのは国民年金のみであるため、もらえる年金額は厚生年金受給者より少なくなると考えられます。
この場合、前述した不足額よりも拡大するおそれがあるでしょう。受給額に不安がある場合は、企業年金や国民年金基金、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度を利用して、年金額の上乗せを図ることを考えてもいいでしょう。
 

毎月の支出は生活実態により大きく変わる

前述の家計調査報告によると、消費支出14万5430円のうち、大きな割合を占めるのは以下の項目です。


・食料:26.2%
・交際費:12.5%
・光熱・水道:10.3%
・交通・通信:10.2%
・教養娯楽:10.1%
・住居:8.9%

これらの支出項目をどれほど節約できるかによっても、老後の収支バランスは左右されます。例えば住居が持ち家の場合、賃貸住宅よりも出費が少ないかもしれません。
また交通手段が自家用車か自転車か、家族や友人との交際頻度がどれくらいかなどによっても、支出は上下します。いずれにしても受給できる年金額を計算して、月々の生活費をおさえる工夫が大切であるといえます。
 

単身世帯が老後の年金だけで生活できるかは状況による

単身世帯が年金のみの収入源で生活できるかどうかは、年金の受給額と生活スタイルのバランスにより変わります。
受給できる金額を増やす努力をしたり、支払いをおさえる努力をしたりする場合は、収支バランスを黒字にできる可能性があります。また現役時代のうちにできるだけ貯蓄や資産運用などを行い、年金以外の収入源を確保する方法を考えてもいいでしょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)(18,19ページ)
厚生労働省年金局 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(8,19ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー