「老後2000万問題」は過去の話?物価高騰で最低でも「4000万」必要って本当ですか?
老後2000万円と4000万円の根拠とは?
老後2000万円問題は、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループによる「高齢社会における資産形成・管理」の試算結果が根拠となっています。老後のおもな収入源は年金ですが、不足分は金融資産を取り崩さなければなりません。
同報告書では、毎月約5万円が不足する場合に20年で約1300万円、30年で約2000万円の取り崩しが必要と試算しています。この数値が、「老後2000万円問題」の根拠です。
なぜ不足金額は2倍になった?
年金だけでは4000万円が不足する根拠は、物価上昇率を考慮したものです。仮に、物価が年3.5%ずつ上昇するとしましょう。現在価値における2000万円を複利計算すると、1年後には2070万円になり、10年後には約2821万円、20年後には約3980万円となります。これが、老後4000万円問題の根拠です。
いきなり4000万円不足するわけではない
4000万円という金額に、衝撃を受ける方も少なくないでしょう。しかし、年3.5%の物価上昇が継続するとは考えにくいです。
総務省統計局の発表によると、2023年の消費者物価指数(総合指数)は前年度比で3.2%の上昇を示しました。過去10年間の前年度比は-0.2~2.7%で推移しており、物価が下がる年もあります。
次に、2023年時点の貨幣価値を40年前(1983年)の消費者物価指数で割った価値を見てみましょう。
106.6(2023年)÷81.0(1983年)=約1.3
貨幣価値は、40年前の1.3倍であることが分かります。40年経過しても1.3倍しか価値が変わらないので、数十年後の不足金額が現在の2000万円からいきなり倍増する可能性は低いと判断できるでしょう。
年金が占める老後年収の割合の考え方
老後の不足金額が4000万円になることは可能性が低いとはいえ、今から備えるに越したことはありません。そこで、年金で老後生活費をどこまでまかなうのかを考える必要があります。
仮に、老後の生活費を月25万円(うち20万円・8割を年金受給)と設定します。会社員(厚生年金加入者)が年240万円を年金受給するときの、令和6年度の内訳は次のとおりです。
国民年金:81万6000円(満額)
厚生年金:158万4000円(国民年金の差額分)
差額分を厚生年金で得るための年収は、以下のとおりです。
老齢厚生年金の年額(158万4000円)=標準報酬月額×0.005481×480
標準報酬月額=158万4000円÷0.005481÷480=約60万2000円
この金額が適用される31等級の報酬月額は、60万5000円以上63万5000円未満です。年収に換算すると726~762万円が年金を月20万円受給できる基準となります。
NISAやiDeCoを活用する
このケースでは5万円(2割)が年金ではまかなえないので、ほかの方法で収入を確保しなければなりません。預貯金で備えるほかに、NISAやiDeCoで税の優遇を受けながら効率的に資産形成する方法もあります。
20~30代の若い世代は、結婚や子どもの教育費などまとまったお金が必要になるライフイベントが控えています。そのため、NISAのようにある程度流動性のある貯蓄方法が適しているでしょう。
一方で、iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せない仕組みのため、老後の生活資金を確実に貯めたい方におすすめです。
まとめ
月あたりの老後生活費を25万円とする場合、8割相当の20万円を年金で確保することが一つの目安となるでしょう。実際にかかる生活費や受け取れる年金額は人により異なりますが、不足分を月5万円に抑えられれば別途2000万円を確保することで老後生活費が充足することになります。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
日本年金機構 報酬比例部分の乗率
日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
金融庁 NISA特設ウェブサイト NISAを知る
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCo(イデコ)の特徴
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー